第1話 ”今日も元気に追放されちゃった”
「え、うそうそ、本当に、女神様のお声?」
【そうですよ~。”復讐の百合姫”の称号を貴女に授けましょう】
「まさか私に称号が!? って、復讐って何~、私復讐なんてしないよ!?」
いきなり頭の中に聞こえてきていた、ふわっふわの可愛い声。
この声の感じは……。
女神様、絶対に甘くていい匂いがする! 断言しちゃう。
【たくさん辛い目にあいましたね、若くして1,000回も追放を経験するなんて、なんて可哀そうな子】
「女神様? あのー。皆いい人だったし、追放……っていうかそれ、単に私の能力とか適性の不足とか、タイミングが悪かったとかで。追放とは全然、違うよね?」
それに1,000回って……まあ、それくらいはあった? かなぁ。
――誰もが1つは『神から与えられた才能』をもって生まれる世界。
神々が見守る、夢と希望に満ち溢れた世界。
自分に与えられた『才能』が何か。探し求めながら、人は生きる。
◇ ◇ ◇
時はほんの少し、2日だけ、遡る。それはいつもと同じ。
いつもの繰り返しから始まったの。
「すまないな、次からはもう……」
あぁ、今回もここまでか~。「いっそ、『追放だ~!』なんて、言ってくれた方が気楽かも」なんて。
「え、そ、そうかい? じゃあ……追放だ。ごめんな?」
「ふぇ!?」
気味悪がられることもある金色に輝く瞳が、きょどきょど、ぐるぐる。 あわわ、目が回ってるのが自分でもわかっちゃう!
うぅ、不覚。頭から湯気が出そうだよぉ。
「ま、ままま、まさか、声に出てました!?」
「お、おう? ああ、ばっちりな? てか、割といつもだろ?」
「う、嘘だぁ! 清楚可憐でお淑やかなこの私が、そんな!」
「それ自分で言うかねぇ。まあ可愛いのは認めるけれど。って、だから、睨むな睨むな。あ、家は嬢ちゃんがもらってくれていいからな」
なんか、リーダー、とんでもない事言ってる。
「いや、それはおかしいでしょ。ちゃんと皆さんで分けてくださいよ」
「んー、俺ら、零番中央区の大迷宮に移籍するからさ? 正直、持っててもな、維持費もかかるし。それに住むところがないと困るだろ? 別の区画に行く時には売っぱらってもらっていいからさ」
「でも、でも……」
「なに、報酬も装備も、全部嬢ちゃんは遠慮してたじゃないか。それでも全然取り分、足りてないぜ?」
そんな風に言って、見習いの私を一か月”も”面倒見てくれたベテランパーティーのエバンスさん達は、行っちゃった。
パーティーハウスとして昔、購入したっていう、小さいけれど可愛いお家を私に残して。
――冒険者。
ある日突然生まれた、巨大な中央大陸。たくさんのダンジョンがあって、神々が暮らしていたとされる神代の遺跡も発見される。新たな、世界の中心。かつては天空に浮かんでいた島が、墜落したんじゃ? って言われてる。
当時の事は神話の一節にしか残っていないけれど、この大陸が確認されるしばらく前、全世界を巨大な津波が襲った痕跡は事実、残ってる。
ひときわ夢溢れるこの中央大陸で冒険し、各国へ成果を送り届ける。それが冒険者。
「また、お役御免になっちゃった。見習いを荷物持ちで受け入れてくれる冒険者パーティー、また探さないとだよ~」
ツーサイドアップの灰銀色の髪に、翡翠色の瞳が可愛い、お人形。身長60cmくらいの1/3ドールの女の子、紗雪。大切な私の愛おしい人形少女に語り掛ける私。薄紫色の、ふわふわワンピースドレスは、私のお手製。
「ねぇ、紗雪~、私の才能って何なんだろうね。6年通った才能判定学校でもわからなかったから、ぜ~ったい、特別な才能なのよ!」
膝まで伸ばした黒い艶々の髪に、金の瞳が私のトレードマーク。
ほっそり華奢な低身長。でもお胸が大きいから、男たちの視線が吸い寄せられて、うっとうしいったらないの。
“才能を知る”神の奇跡を行使できる神官様はすごく希少。王侯貴族か、大商人、それかものすっご~い功績を挙げた人でもないと、受けられない。
だから、皆、才能判定学校でいろんなことに挑戦して、神様にもらった才能の方向性を見定めるの。ある程度自分で、こうかな? ってわかる人も多いしね。
でも、私にはさっぱり実感もない。だから、自分の『才能』が何か、探し求めながら生きてる。
「あ~なんか思い出してきちゃった」
紗雪の髪をそっと撫でて整えながら、語り掛ける私。脳内ではしっかり応えてくれてるのよ? え、寂しい一人芝居? ひどい!
この子は、人形作家だったママが、昔私のためにって作ってくれた、大切な子。
愛おしい私の人形少女。
子供の頃からお人形が好きだから、ドールハウスとか、お洋服を作れたらいいなって。芸術課の才能判定に真っ先に行ったのね。あれはひどかったな~。男性教諭がペタペタ触ってこようとするから、いつも通り、睨んでたのね? そしたら、顔を引きつらせて、魔眼か呪眼の判定課に行きなさいって、追い出されたの。
結局、芸術もダメ、生産もダメ、交渉術もダメ、戦闘もダメ、魔法もダメ。
ダメダメ尽くしで、才能が分からなかった私。
それでも、なにか”特別”があるんだって諦めきれなくて選んだ、見習い冒険者生活。
それだけじゃ生活費が稼げないから、パーティー活動がない時間は、いろんなお店で働かせてもらってるの。
思い出すのは、ダメな私が追い出されちゃった日々の記憶。
「ここで雇うのはやっぱ無理だ……いや、お前……隠せない男嫌いで男向けの接客業って……無理だろ。しかもその超美人顔で、嫌悪感たっぷりに睨んでくるから、特殊な性癖の奴が店に寄ってくるようになっちまったし。うちは健全な、男に優しいスイーツカフェなのによぅ……いやだからその顔だっての!」
うぇー、それ私のせい~? いや、ちょっとはそうかもだけど……ぶ~~、だから男って。
ここのパフェ、フルーツたっぷり、カスタードクリームいっぱいで、すっごく美味しいから天職かも♪ なんて内心、思ってたのに。
追い出されちゃった。
そうそう、あの時は特に悲しかったな~紗雪を抱っこして、ちょっと泣いちゃったもんね。
女の子だけっていう安心感が最高で、私を3か月も一緒にいさせてくれた、冒険者パーティー。
……だったんだけど。
「ナオちゃん、ごめんなさい。必ず、ちゃんと自分たちの力をものにして、戻ってくるから」
「ナオ~辛いけれど、これも皆が幸せでいるためなの……待っていてよ?」
「ナオ殿、またでござるよ」
「再会、期待」
追放されちゃった。
私みたいな足手まといがいると、パーティーの動きがぎくしゃくしちゃって危ないとか、多分そんな感じの理由が本当の所だと思う。だって……追放されちゃう少し前。
浅層で荷物持ちだった私が倒れちゃって。皆、依頼を放り出して、安全なギルドの医務室まで私を送り届けてくれて。私が意識不明になっている間に、パーティーは破竹の勢いでここ、外縁13番区の、冥府ダンジョンで階層記録を更新。冒険者ギルドの強い推薦で、中央区のダンジョンに進出。そこでさらに、古代遺物を発見して一躍有名冒険者。
大出世した記念っていって、太ももにつけるガーターベルトと一体になったポーチ型の、魔法のカバンを送ってくれたよ?
空間拡張の魔導具って、すっごく高いのに……うぅ、今度会えたらちゃんとお礼したいな。そういえば、会えない日々が寂しいって手紙が、皆からバラバラに送られてきたね。一緒に送ってくれればいいのにね?
お手紙にはね? 「現金を送っても受け取ってくれないだろうから、ポーチを送るけれど。寄進して、”才能を知る”神の奇跡を受けなさい」って、書いてくれてあったの。
魔法のカバンは、初めて使った人に所有者登録されてしまって、その人が死ぬまで他の人は使えなくなる。
正直悩んだ……悩んだよ。でもね? 彼女達の記念。きっとすごく大変な思いをして手に入れた、自分たちが使った方が絶対に良かったはずの、貴重な魔法のカバンだよ? 大切に、ずっと大切に使う。そう決めたの。
それにね! この魔法のカバンのおかげで、荷物持ちとして、冒険者パーティーに見習い参加させてもらえることが増えたんだよね。
ほとんどが数日、短いと1日で追い出されちゃうんだけど……。
って、いっけない! 早く行かなくちゃ。
できる事は何でもしなくちゃ。自分の才能を見つけないといけないからね♪
今日もがんばるぞ!
===後書き===
本日第5話まで、投稿させていただきます。




