第三話 目標設定
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ウィル視点
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俺は暗い部屋の中、天井を見つめて溜息をついた。
オギャー。(……魔法を見るのは諦めるしかないか。)
横では母親が穏やかな寝息を立てている。
寝る前に、まずは現状を整理してシマの状況を把握しねえと。
オギャ。(一つ、俺は前世で死に、この異世界に転生した。)
オギャ。(一つ、この世界の言葉はまだサッパリわからねえ。)
オギャ。(一つ、この世界には物理法則を無視する魔法が存在する。)
指を折る代わりに手足をバタつかせ、俺は決意を固めた。
そのためには、まず力が必要だ。
言葉を覚えるには手本が起きている時じゃなきゃ無理だが、魔法の練習なら今この瞬間でもできる。
オギャア。(……よかったぜ、組織の第10席の野郎が勧めてきたライトノベルを暇つぶしに読んどいて。
あいつのオタク知識が役立つ日が来るとはな)
〖まずは体内の魔力を感じること〗――本の中じゃ定番のセリフだ。
俺はそっと目を閉じ、意識を内側……自分の肉体へと向けていった。
前世、死線を潜り抜けるために研ぎ澄ませた集中力。
それを今、この小さな体に注ぎ込む。
(……なっ!?)
体内の確認を始めた俺を襲ったのは…
凄まじい絶望だった。
(な、なんだ、この体は……ッ!
俺が血の滲むような思いで作り上げた、鋼の六つに割れた腹筋はどこへ行った!?
弾丸を弾きそうだった大腿筋は!?
鬼を宿した俺の背筋はどうなったんだよ!!)
わかってはいた。赤ん坊なのだから当たり前だ。
だが、魂に刻まれた【脳筋】が、このぷにぷにの幼児体形を認めることを拒絶していた。
(……仕方ねえ。
筋肉がねえなら、せめて魔力だ。魔力さえあれば……!)
俺は必死に意識を切り替え、腹の底に溜まった“熱”を探した。
熱い。猛烈に熱い塊が、下腹部に凝縮されているのを感じる。
(これか……? 体が熱い。何かが外に溢れ出しそうだ。
これだ、これが魔力ってやつか!
練り上げて、一気に放出する……ッ!)
俺は全身に力を込め、その“熱”を一点に集中させた。
――ブリッ。
オギャー! オギャー! オギャー!!(クソッタレえぇぇぇ!!)
『■⇒▽》▲★▼▽!!』
突然の絶叫に、母親が飛び起きる。
……そう。俺は放出したのだ。魔力ではなく、赤ん坊としての「不可避な排泄物」を。
(……ふっ。人として、何か大切なものを少しずつ捨てている気がするぜ)
おしめを替えられ、再び静まり返った暗闇の中で俺は自嘲気味に呟いた。
魔力ではなく、ただの快便だったとは。
ヤクザの右腕として名を馳せた男の末路がこれか。
(進まねえ……このままじゃ一歩も進まねえ。目標を再設定だ。
一、魔法を習得する。二、言語を覚える。そして三、プライバシーを死守する。
……あんな情けねえ音を、これ以上誰にも聞かせるわけにゃいかねえ。“ケツの締まりがねえ奴は、口も締まりがねえ”。
それが裏社会の鉄則だ)
力みすぎれば、出る。
今後、魔法の練習をする時は、肛門の力を抜きつつ意識を集中させるという、高度な技術が必要になるらしい。
……異世界、ハードすぎんだろ。
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???視点
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『ここは、どこだ……?』
???は、混乱した様子で周囲を見渡した。
深い森の中だ。
月明かりすら届かないその場所で、暗闇に無数の赤い眼が灯る。
グルゥ……グアゥッ!
牙を剥き出しにした狼の集団。
この森の浅そうの生態系の頂点に君臨する魔物が、???を取り囲む。
『な、なんだ……? 俺を、狙っているのか……?』
???は怯えたような声を上げた。
狼たちが一斉に飛びかかる。
『う、うわああああ! た、助けてくれぇぇ――!』
……翌日。
巡回中の兵士が、スレイヤー領の領主ブレイブの元へ、青ざめた顔で報告に訪れた。
『男爵閣下! 大森林ネムの浅層にて、魔狼の群れの死体を発見しました!
数は十数頭……すべて、ここ最近村々を襲っていた浅層の主です』
ブレイブが眉をひそめる。
『……群れが全滅だと? 凄腕の冒険者でも通ったのか』
『いえ、それが……。狼たちは斬られたのでも、魔法でもありません。
……まるで、食い千切られたような跡が残っていました』
その報告に、スレイヤー家に激震が走った。
浅層とはいえ森の主を“食う”何かが、すぐ近くまで来ている。
~~~~~~~~~~~~後書き~~~~~~~~~~~~
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最近は物騒ですね。
現実でも京都の小学生が失踪してしまったり…少しでも早く無事に見つかることを願っています。
僕も下の兄弟を持つ身として、注意してみておこうと思います。
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