3話
研究所に入るなり変な光景ばかり見て気が動転してしまいましたが、少し落ち着いてきました。魔術の天才たちですから、そう言うこともあるのでしょう。皆さんが焦っていないと言うことは、大丈夫と言うことです。そう言うことなのです。
ふと見回してみると、この中央研究室には棚がたくさんあります。あちらは研究資料で、こちらは歴史書でしょうか…
第三研究院の特徴でもある暖かな木の温もりを感じますが、この部屋は、さらに荘厳さも感じます。散りばめられた細かい装飾のせいでしょうか。
そのように見回していると、空のような青色の目をした、胸元のポケットに大きめのレンズを差した、いかにも学者様、という見た目の人がこちらにやってきました。眠そうなご様子です。
「あなたがジェマ・ルーディスさんか。私は中央研究室長兼第三研究院長のガーイウス・アイミーリウス・カェルレウスといいます。さて、これから重要な話をします。どこに配属になるか。心の準備ができたら言ってください。」
配属先ももちろん気になるんですが…すごく聞いたことのあるお名前です、これはもしかしてご本人様!?
「ちなみに、カェルレウスってもしかして、あの…」
「どの、かはわからないけれど、魔術陣を考案したのは僕ですよ」
「やっぱり!」
カェルレウスといえば、現代魔術史の教科書に名前が乗っているほどのすごい人です。彼は一人で魔術陣を作り上げましたからね!魔術陣のおかげで、平民も魔術を使えるようになってきたんですよね!陣を使えば、魔力さえ扱えたら、知識がなくても、訓練をしなくても、適性がなくても魔術が使えますから!
そう思うと、魔術陣って、生活魔術の起源とも言えるのかもしれませんね。第三研究院長をしているのも納得です。
この目の前の人が、そんなにすごい人だったなんて…心の中とはいえ、「眠そうな人」なんて失礼だったかも…。
ところで、配属を聞く心の準備なんてできる気がしないのですが。ずっと黙ってたらずっと待ってくれるのかな…。しばらく黙ってましょう。
「もういいかな。では。君の所属は中央研究室です。」
「まだ心の準備が!…え?もう一回言っていただいても?」
「中央研究室です。ここだよ。」
聞き間違えではなさそうです。じゃあ、きっと手違いか人違いでは…
「あなたは3月17日付けで魔術研究局員になったジェマ・ルーディスだよね?」
うう…確実に私ですね。どうして、どうして私が中央研究室に…。
「あなたがここの配属になった理由は主に二つ。一つ目は大人の事情。第三研究院は誰にでも開かれていることをアピールしなきゃならない。だから、全体の管理をする機関でもある中央研究室にも、平民や女性がいるべきなんです。その点、君はどちらも満たしている。
だけど、もう一つの、一番大きい理由は単純明快だ。君が優秀だからですよ。おそらく君自身が思っているよりも、君自身のポテンシャルは高い。」
なるほど…後半は賛同できないけどなんとなくわかったような…。ところで、私の心の中読んでますか?ちょうどいいタイミングで返答が来るんだけど…
「あなたは考えてることが顔に出やすいからね」
またいいタイミングで…やっぱり心を読んでるんですね。そうに違いない。顔に出やすいなんて、そんなはずがありません。




