4話
魔道具。魔術陣と魔力自動供給装置、それから、往日の人が魔術を否定した人文明と呼ばれる頃の技術、それらを駆使して作った道具の総称である。それはいわば人の技術の結晶、少々値は張るが、複雑なことをこなす。
それの店に行けば如何に魔術が実際に使われるかを展覧会のように見ることができるという寸法だ。きっといい刺激になるだろう。
しばし歩くと、ルディが立ち止まった。目的地についたようだ。
ここが魔術具の店か。濃い色付きガラスを外装に用いていて、朧げに店内が見えているようだ。ガラスを使う斯様な外装の建物は初めて見るが、なかなかに完成されている。幾度もアイデアを練ったに違いない。
店内に入ると、アンティークな空間が広がっていた。懐かしさを感じさせるが、厳かな様子だ。
ふとリーヴィア嬢の話を思い出す。
『内装っていうのはつまりその場所の雰囲気で、お客の心境に大きく影響するのよ。例えば、居心地が良い気がする、誠実そうで信用できる、怪しいので逆に掘り出し物を探せそう、とかね。』
これだけ考えられていそうな内装だ、おそらくこの内装もまた売上に貢献しているのであろう。
程なくして、店の奥から一人の青年が出てきた。
「いらっしゃいませ、本日は何をお探しに?…っと、失礼いたしました、貴族様でしたか。このような辺鄙な場所に、どのようなご用事でしょうか。」
「魔術具を見たい。寧ろ、魔道具屋に魔道具以外の何を求めると思う。」
するとあからさまに嫌そうな顔をした。
「はあ、申し訳ありませんが、平民の生活に役立てるものばかりで貴族の方が面白いと思うようなものはありませんよ?」
すると、ルディがこう言った。
「私たちは研究院の者ですので、魔術具を買い叩きに来た訳じゃないですよ!安心してください。ただ、いろんな魔術具を見たくて」
なるほどな。平民向けの生活魔術具を貴族に娯楽として買われることを憂いていたのか。
とすれば、「研究院の者」と聞いた時に顔が引き攣ったのは何故か。いや、或いは俺が見紛っただけかもしれない。現に快く案内してくれた。
「そうでしたか!いや、早とちりしてしまってすみません。魔術具はこれから平民の生活の基盤となり、生命線となるべき物なんです。
ですから、そう言った平民の生活のためになる理由でしたら、歓迎します。さあ、魔術具はこちらです。」
******
「これ、私も初めて見ました!これは何に使う魔術具ですか?」
「ああ、それはバターロールを整形する魔術具です。作った人の趣味のようなもので、普通は役には立ちませんが、非常に精巧なんですよ」
「これはなんだ、店主」
「それは服の皺伸ばしです。火を使わなくても高温になるので安全なんですよ」
魔術具店、予想以上に刺激的だ。寧ろアイデアが氾濫していると言っても良い。当初の目的は達成したと言えるだろう。もう用事は終わったのだ、帰途に就くのも良いのだが…
ただ、一つ気になることがある。
「この魔術具を試してみても良いか?」
「あの、そちらは商品ではありませんので、申し訳ないですが…」
「こちらは良いだろうか?」
「あ、いえ、メンテナンス中ですので今は…」
「私は研究員の者だが、代わりに見させてもらっても構わないか?」
「ああ、確かにそうですね!でも、今はお客さんですので申し訳ないです。それに、工房の仕事を勝手に減らすことにもなるので…」
魔術具を試用させてもらえないのだ。勿論現実的に試用が可能な物しか言っていないが…
魔術具の試用に不都合がある?
理由の見当が、付いてしまう。
杞憂であるかもしれない。確認して問題がなさそうであれば、帰ろうと思う。
店員の目を盗んで魔術具に魔力を注ぐ。
やっぱりか。
読んでいただいてありがとうございます。
さて、書き溜めた文がついに底をつきましたので、更新ペースがゆったりになります。なんとか週1ぐらいで更新できたら良いな、と思っています。
名前の表記の揺れを修正いたしました。




