3話
「こちらがガラス工房です!」
木造の古屋、表面が剥げ煤けた壁は、穏和な様子で歴史を感じさせる良き工房だ。
「これは、もしや貴族の方でしょうか。そのようなお方がなぜうちのようなオンボロの町工場に…?」
工房長と思しき(おぼしき)人が奥より出てきた。古屋の見た目に反して若いな。30代か?代替わりをしたのだろう。
本題に入る前に、ルディが先ほどからずっと気にしているだろうことを聞いておこう。
「何、軽い視察だ。気楽に構えたまえ。して、横にいるこの者の立場は何に思う?」
「はあ…?立場ですか?使用人の方と思いますが、違いましたかね…?」
「だ、そうだ。只道案内をしただけの平民、と言われなかっただけいいではないか。」
「使用人ですか。むう、ちょっと悔しいですね」
「所作は1日でどうにかなる問題ではないからな。今後に期待だ。」
「あの、作業に戻ってもいいですかね…?」
押しかけたのに
「ああ、素性も告げずに唐突に押し掛けて、済まなかったな。俺達は魔術第三研究院、生活魔術を研究する機関の者だ。其方で使っているという魔術の様子を見に来たと共に、新しい魔術の希求を探りに来た。作業工程を見せて貰おうか」
身分を明かすなり、かの工房長は合点がいった、というような表情で笑顔を湛えて話してくれた。研究院が平民に感謝されている証左だろう。嬉しい限りだ。
「なるほど、魔術の…!それは失礼しました。いや〜、本当にあれには助かってますよ、感謝してもし足りないぐらいで!茶も何も出せませんが、ぜひゆっくり見ていってください!作業場はあちらでして!」
暫く工程を見学した。ガラス瓶というものは息を吹き入れることで成形するらしい。魔術は大量生産と質の安定、ガラス板という新技術開発に助かっているとのことであった。しかし、新しい魔術は欲していないらしい。
去り際に、ガラス瓶作成を体験していかないか、と聞かれた。ふっ…なかなか興味深かったからな。次に来た時、時間が許すのであればそれもまた一興だろう。
その後も何軒か生活魔術を利用している店を回って話を聞いた。しかし、どうにも新生活魔術のアイデアは出てきそうにない。当然と言えば当然である、利用者が欲する物は大抵新魔術ではなく点検、改良などの事後対応であるからな。
しかし、あてもなく歩き回る方が余程効率が悪い。
「ふむ…多くの魔術が集まる場所があれば、多くの刺激を得られるのだろうが…。」
「多くの魔術…あ、魔道具屋さんはどうでしょうか!」
ああ、確かにそれが良いな。




