9話
結局、心がスッキリしないまま今日の仕事が終わってしまいました。
「ルーディスさん、今日も一緒にどうかしら?」
「いえ、今日は用事があって、いけません。」
「そう?でも沈んだ顔をしているわよ?そういう時こそお茶を楽しまなきゃ。もし用事まで時間があれば、少しだけでも、どう?」
「ありがとうございます。じゃあ、予定まで、少しだけ。甘えちゃいますね。」
本当に、リーヴィアさんには敵いませんね。
「それで、何があったの?話したら心が軽くなることもあるのよ?」
「なんでもないことなんですよ。えっと、室長さんが、『自身の研究を始めてみないか』って言ってくれたんですけど、私には中央研究室の研究は務まらないかなって思って。」
「あら?最近いい顔をしていたから、その辺の自信はついたのかと思ってたわ?」
リーヴィアさんは少し微笑んで、続けます。
「聞いて?あなただって才能に溢れてるのよ?私も学校からの推薦書を読んだのだけど、すごいじゃない。模擬戦闘では初学生にしてグループリーダーを務めて見事表彰台、魔術理論の筆記テストでは前代未聞の2回連続満点、魔力素材での製薬では、授業中に新薬の元となる発見をする、」
「ちょっと、もうやめてください!恥ずかしいですよ!それに、模擬戦については先輩が強かっただけですし、他もたまたまで…」
「それを言うなら、私もよ?私の発明した魔術なんてほとんど思いつきだもの。専門である変身魔術なんて、本当に偶然だったわ。
私ね、思うの。世の中にいるすごい人って、きっと、すごいことを計画通りに全て成功させられる人ではなくて、すごいことを成し遂げる『偶然』を、自分の能力でたくさん引き寄せられる人なのではないかしら?
そして、あなたも私も、たくさんとはいかなくても、偶然を手繰り寄せるだけの能力がある。違うかしら?」
偶然を、手繰り寄せるだけの、力…
私も、できるかな。
この日に飲んだ紅茶は、いつもよりも味わい深くって、体の芯まで染み渡っていくような気がしました。
それにしても、
「もしかして、リーヴィアさんって年上でしたか?」
「ええ、もちろん。4歳ぐらいは上ね。急にどうしたの?」
4歳も上!?絶対年下だと思ってました。ごめんなさい。




