第十六話:旅の前、今の心
「「ごちそうさま」」
遅めの夕飯も食べ終わり、後は寝るだけ、というところ。
「レネード、ちょっといいかい?」
イアンが不意に話しかけてきた。
「?まあ、構わないが」
「ちょっと、旅路について説明しておこうと思って。早めに確認するに越したことはないから」
確かにそこは気にすべきだ。
「それはそうだな。どんな道筋なんだ?」
「簡単に説明すると、森を頑張って抜けて、毒の村を攻略して、鉄の街を通って、機械都市の検問を突破して、炎の国と氷の世界を乗り越えたら、魔王城に着くんだよ」
「なんだか大変そうだな……」
イアンが簡単にと言っていた説明だけでも、相当長い道のりになることは分かった。
「まあ、攻略方法は旅に出る前の日にでも話すよ。さ、明日からその装備を使いこなす特訓だから、早く寝ようか」
「ああ、そうだな」
〜一週間後〜
今日が最後の特訓の日だった。使い方を完璧に把握したわけではないが、それでも幾分かはましになったと思う。基本的なことは前と変わらない。狙って射つ。前と違うのは、接近戦を自ら仕掛けていることだ。『浮遊』による自由自在の攻撃方向、自らの身体で弓矢を隠し、直前まで軌道を読めなくする。『自由弓』による自身と弓矢の挟み撃ちや、下からの射撃など、普通ではあり得ない攻撃方法を編み出していた。
(まあそれら全てがイアンには通用しなかったが……あの箱もやはり効かなかったな。流石は勇者といったところか。だがそれを加味してもこの装備はとてつもない。本来接近にすこぶる弱いとされる弓使いの性質を無いものにしてしまっている。これならアイツにも余裕で勝てるんじゃ……いや、そうはならないな。きっとアイツも強くなってる。あの馬鹿みたいに速い脚はオレにとって天敵だったからな)
今ごろどこで何してんだか、と夕焼けに飾られた森を眺める。アイツが走り去ったこの森の向こうには、いったい何があるのか。明日が、それを知る一歩を踏み出すときだ。
「レネード、どうしたんだい?」
「……別に、どうもしてない」
「またまた〜俺知ってるんだから。レネードって時々考え込んでるよね、表情で丸わかりだよ」
「…そんなに顔に出ているのか?」
「結構わかりやすいよ。何かが足りないって、どこにあるんだーっ、みたいな、寂しそーにしてる顔だよ」
「……そうか。まあ、確かにオレには探し物がある。それがお前の旅に着いていこうと思った理由の一つでもある、な」
「? どうかしたの?」
「いや、勇者パーティの一員なのに、私欲のためについていくのは、良くないのではないかと、思ってな」
「なーんだ、そんなことかぁ。そんなの別にいいでしょ」
「いいのか?」
そんなことで片付けられるとは思っていなかったから、反射的に聞き返した。
「人間なにかしら欲はあるし、事情がある。たとえそれが勇者パーティの一員だとしても。目的が違うとしても、それまでの道のりが一緒ならそれでいいんだ。ほら、旅は道連れって言うし」
「……そういうものか」
イアンの言葉はいつも妙な説得力がある。オレがチョロいのかもしれないが、オレはその言葉に納得した。
「うん、そうだよ。じゃあ改めて勇者パーティが歩くルートを説明しようかな。メモも後で渡すね」
「む……お前の光速移動で省略できないのか?」
てっきりオレはイアンがサクッと目的地まで飛んで行くのかと思っていたが、そうではないらしい。
「旅はそんなふうに効率を求めたりはしないんだよ。君が読んでいた勇者の絵本だって、色んな冒険を乗り越えて魔王の下に辿り着いたん?旅をして、色んな人に出会って、苦楽を分かち合う仲間と勇者の物語が、この世界には必要なのさ」
「世界……」
その規模の大きさに、オレはまだ実感が湧かなかった。途端に不安が押し寄せる。世界の歴史の1頁にオレがいること、オレの存在が勇者の地位を脅かすかもしれないこと、正しくあらねばならないという重責。勇者の周りにいるだけで、それが常にのしかかる。オレは耐えられるのだろうか。
「まあ、不安だよね」
「なっ、」
またイアンに察せられてしまった。顔に出やすいのは本当に良くない。思わず自分の顔面に手を当てるが、それを見たイアンは笑って言う。
「あ、顔で分かったわけじゃないよ?勇者の心得みたいなのが代々伝わっててさ、その中にあるんだよね。この旅は世界に知れ渡るだけの、『おれたちの物語だ』って」
「オレたちの……」
それは当然とも言えるし、傲慢とも言える。ただ、勇者の仲間であるならば、そういう心持ちがきっと必要なのだろう。
「そう、だから勇者パーティらしく〜とか気にしなくていいよ。旅をしていても、思うままにいればいい」
「……楽観的だな」
(オレの思うままに……か)
思い出す。イアンと出会い、勇者パーティに誘われたあの日のことを。そのときにはもう自分は簡単に人を殺せていて、それが続く日々は退屈になって、それが遂に終わる、そう思ったら身体が動いていた。
(なんだ。オレはとっくに、自分勝手に、思うままに動いてたじゃないか)
「勇者なんてこれくらいの心構えの方がいいよ……ちょっとは安心した?」
「まあ、ぐだぐだ悩む必要がないことは分かった」
あの時オレは思うままに動いていた。ならそれが延長されただけだと思えばいい。
「良かった。さて、それじゃあ旅路の経路案内、始まり始まり〜」
「……できるだけ簡潔に頼む」
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勇者パーティの旅マップ!
・最終目的地は魔王城!行き着くまでにチェックポイントを通るよ!チェックポイントは基本的に地続きになってるよ!
・チェックポイントは、『特薬の村:ドラッグ』→『黒鉄の国:アイアン』→『機械都市:カラクリ』→『炎上の国:ライズ』→『氷獄の城下街:フリーズ』→『魔王城:ナインズ』の順番だよ!
・チェックポイントの共通クエストとして魔物や魔者の鎮静化があるよ!それだけじゃなく、そこにいる人たちの困りごとも解決しよう!
・新メンバーの勧誘もするよ!出会う人とは仲良く!もちろん魔族のみんなにも
・チェックポイントの毎に攻略法を話すからサクサク覚えてね!
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「とまあこんな感じ」
どうせ長い説明だろうと身構えていたが、拍子抜けになるほど早く終わってしまった。
「……もう終わりか?案外短かったな」
「現地着いてから教える情報があるからね。1回説明してもう1回、なんて面倒なことはしないさ」
イアンの言い分はもっともだと納得しつつ、目先のことの攻略はどうするんだと聴いてみる。
「そういえば森はどうやって抜けるんだ?飛んで行くのか?」
「いいや。飛んだらまずハチの巣になって即お陀仏だろうね」
「となると森をなんとか抜けるしかないわけだな」
まあ大人サイズのやつが空を飛んでいたら目立つのは当然か。
「そういうこと。おそらく一ヶ月はかかるだろうね、この森を抜けるには」
「そんなになのか?」
ここからダンジョンへの道でさえ一週間もあれば着いたというのに。森と家は近い。だが今この瞬間、はるか遠い世界の話にされてしまったように感じた。
「魔王が、魔族たちが暴れているときに、不用意にこっち側の人間が襲われないよう、向こう側に矛先が飛んでいかないように作った壁みたいなものだから」
(魔王自ら作ったのか。広大な自然の砦を作り上げるとは……魔王の規格外さは相当だな。イアンもそれくらいできるようになるのか?恐ろしいな。だが、今の説明を聞いていると)
「そんなにも、人間と魔族は相容れないものなのか……?」
オレは落胆した声で問う。だけどイアンはそうではない、とでも言うような顔で語る。
「いいや違うよ。種族として必要な線引きが広いだけ。動物を飼っている人がいるけど、全員がってわけでもないでしょ?他種族を自種族の領域に入れるって、中々できないものだよ。まあ、そんなもの気にすら留めない精神を持つ猛者たちの子孫は、今も向こうにいるわけだけど」
例えが微妙な気もするが、とにかく人間と魔族の仲が悪い訳ではないと分かりほっとした。
「なら、オレたちは残っている人が傷つかないように、保護もしないとってことだな」
「うーん、ちょっと違う気がする。魔族の皆を鎮静化さえできれば、その後は現地の人たちだけでどうにかなるんだよね」
イアンの軽い言いようから、現地の人たちはこういうトラブルに慣れていることがよくわかる。
「強すぎるだろ……」
そんなふうにまだ見ぬ土地にいる人々への認識が激的に変わってしまった。こうなると自分の方が心配になってきた。
「さて、話は戻して、森の抜け方なんだけど。地図の魔導具にルート作らせるとぐねった道になるから、方角だけ確認してあとはまっすぐ突き抜けようと思う」
(計画性もなんもねえなこいつ)
そう思ったものの、口に出すのも野暮なので黙って聞いておく。
「何かの巣を通ったとしても追い返せばいいし、結界を張れば寝ているときに襲われることもなくなる。となると最短で進むのが一番だよ。巣とか群れは地図が教えてくれるし」
強者ゆえの余裕だろうか。群れで襲ってくることを脅威だと全くもって考えていない。イアンがいるならどうにかなるだろうとオレも思っている節がある。
(毒されたな……本当に)
「イアンは本当に楽観的だな、まあ、オレもその案でいい。森にいる時間が長いほうが面倒だと、オレも思っていたからな」
「じゃあこれで決定。明日には出発しようか。時は金なり、思い立ったが吉日!自然という恐怖を乗り越えるよ!おー!」
「お、おー……」
(イアンはこんな性格だったのか!?)
最近になってどんどんと見えてくる、イアンの人物像の増加量に困惑する。
(全く、謎の多い勇者様だ)
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勇者パーティの旅マップ!
・最終目的地は魔王城!行き着くまでにチェックポイントを通るよ!チェックポイントは基本的に地続きになってるよ!
・チェックポイントは、『特薬の村:ドラッグ』→『黒鉄の国:アイアン』→『機械都市:カラクリ』→『炎上の国:ライズ』→『氷獄の城下街:フリーズ』→『魔王城:ナインズ』の順番だよ!
・チェックポイントの共通クエストとして魔物や魔者の鎮静化があるよ!それだけじゃなく、そこにいる人たちの困りごとも解決しよう!
・新メンバーの勧誘もするよ!出会う人とは仲良く!もちろん魔族のみんなにも
・チェックポイントの毎に攻略法を話すからサクサク覚えてね!
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