第056話 見つからない
> 【第七支部 覚知記録】
> 覚知 ── 五月四日 十五時三十八分。
> 入電 ── 携帯電話。発信地 ── 川沿い 一丁目。
> 第一声 ──「見つからない」
> 出場 ── 第七支部 全隊。
「見つからない」
尾花律子は用紙を引き寄せた。時刻を分まで書く。秒は書かない。何が見つからないのかは、まだ書かない。
「はい、鳴瀬市消防指令センターです。今おられる場所を教えてください」
「川沿い一丁目の、遊水地です。子どもが。上の子が、いなくなって」
「わかりました。お子さんは何歳ですか」
「六つです。妹と二人で、水際の方へ行って。妹だけ戻ってきて」
「妹さんは、何歳ですか」
「四つです。ここにいます」
尾花は用紙の右の欄へ、川沿い一丁目遊水地、六歳一名、水際、と書いた。三つ並ぶと、持っていくものが決まる。書いてから、四つ目の欄へ、同行者四歳、と足した。
「わかりました。今、隊が出ます。お母さんは、その場所から動かないでください」
「探さないでですか」
「探すのは、こちらでやります。動かれると、見つけた時にお母さんが分からなくなります」
「もう十分、探したんです。あの辺、隠れる所なんて無いのに」
「隠れる所が無いのに見つからない、ということですね」
「はい。そうです。見えてるはずなんです。それなのに」
尾花はその一行を、右の欄へそのまま書いた。要約しない。聞こえたとおりに書く。
「妹さんに、代わっていただけますか。少しだけです」
「はい。……ほら、お姉さんが」
「もしもし。お姉ちゃんは、どっちに行きましたか」
小さい声が返ってきた。返事は短い。四歳の子は、方角を言わない。北とも南とも言えない。言えるのは、見えているものの名前だけになる。
尾花はその四文字を、そのまま右の欄へ書いた。書いてから、括弧の中へ、四歳、と足した。四歳が言った四文字であることが、後で効く。
「みずのほう」
「わかりました。ありがとうございます。お母さんに代わってください」
尾花はそこで秒を書いた。この日、初めて秒を書いた。書いてから、回線の枠を見た。八つのうち、光っているのは一つになる。
*
十五時三十八分の三階には、六人ともいた。連休の当直で、この日は全員が同じ時刻に上がっている。待っている場所は、いつも同じになる。
豆腐は、朝に届いた分が残っていた。武藤とうふ店は七時十分に置いていく。五月は四丁になった。
三月が六丁で、四月が五丁で、五月が四丁になる。減り方に理由があるかどうかは、誰も訊いていない。
六丁目に挟んであった紙は、棚の上に残っている。二か月経った。
寺尾剛は湯を張った鍋の前にいた。張るのは早い。食べるのはいつも最後になる。
「まあ待て。連休の川は、人が多い。人が多い日は、着いてからが長い」
二文で言って、鍋の縁の欠けた場所を上へ向けた。三年、この置き方が変わっていない。
灰谷蒼汰は索を膝の上へ広げて、端から端まで指で送っていた。三年、出る前に必ず一度やる。
「四本です。水際は泥が付くので細いのは抜きます」
言いながら、三本目の中ほどで指を止めた。四月の畑で吸った泥が、まだ芯まで抜けていない。
泥は洗っても、芯の中までは落ちない。落ちないまま使うと、乾いた日に硬くなる。硬くなった索は、結び目が締まりきらない。
七尾ひかりは酸素の残りを見ていた。見てから、七つ数えた。七つ数えて、七つで戻った。数え終わってから、子ども用の面を二つ袋へ入れる。一つで足りる日の方が多い。
逢坂澪は受信席の裏で、遊水地の図を出していた。市の河川課から借りた写しで、水位ごとに浸かる範囲が色分けしてある。
連休の遊水地は、五月に一番人が入る。今日は晴れていて、風が弱い。
澪はその図を、机の左の端へ寄せた。寄せた場所には、付箋の束がある。十三枚のままになっている。
火群迅は自販機の前にいた。一番下の段を押す。理由を言ったことがない。缶を取って、指の腹で口を一度拭いてから開ける。
久遠寺修司は掲示板の前に立っていた。未着累計の欄には、一と書いてある。三月の終わりから動いていない。
覚知の音が鳴った。鳴った音の下で、寺尾が火を落として蓋をする。
戸倉が盤の前で、五機の並びを見直した。連休は、道が混む日と空く日が入れ替わる。
「今日は、ウイングを先に上げます。堤防の道が詰まっています」
「詰まっている道の記録は、まだ作れていません」
宮ヶ瀬佳代は逆から言う。出来ていることを先に言わない。戸倉は言い返さないで、並びの一番上をウイングにした。
速水が受信席で、遊水地の入口の地図を出した。出してから、駐車場の位置を指でなぞる。
「入口が三つあります。連休は、南の一つだけ開けています」
「北と東は」
「閉めてあります。人を一箇所から入れると、数が分かるからです」
「今日、何人入った」
「六百二十人です。出た人は、まだ数えていません」
入った数だけが分かって、出た数が分からない。連休の遊水地は、いつもそうなる。
出口を数えるには、人を一箇所へ集めることになる。集めると、帰る人が並ぶ。並ぶ列が道まで出る。だから数えていない。
数えていない理由は、市の紙に書いてある。書いてあることを、誰も直そうとしていない。
*
澪が遊水地の図を机へ広げた。広げてから、川沿い一丁目の水際に指を置いた。
「川沿い一丁目、遊水地の南側。六歳一名、水際の方向へ行ったまま戻っていません。同行の四歳は戻っています」
「水位は」
「今日は低いです。堰を二つとも開けているので、水際は膝より下になります」
「隠れる所は」
「ありません。葦は三月に刈ってあって、伸びているのは二十センチです」
図の上で、指が水際の線をなぞった。線はまっすぐで、遮るものが一つも無い。
「アンサー」
> ── はい。
「この時刻の、南側の見通しを」
> ── 遮るものはありません。南の入口から水際まで、二百四十メートル。見通せます。
「見通せるのに見つからない場合は」
> ── わかりません。
アンサーは、分からないことを分からないと言う。三年、そこだけは変わらない。
「六百二十人のうち、南側にいるのは」
> ── 記録がありません。数えているのは入口だけになります。
久遠寺が短く訊いた。
「見えていないのか」
「見えている範囲に、いないことになっています」
「なら」
「範囲の外を先に見ます。人が見ない場所から見ます」
澪はそこで一度、図の縁を指で押さえた。押さえたのは、線を引く前の癖になる。
「座標、出た」
*
地下二層のポールを、迅が最初に下りた。二段飛ばしで踊り場を抜けて、下りきる前に走りはじめる。アンサーは一段ずつ下りる。三年、この対比が変わらない。
「発進」
合図は整備班が出す。六人ではない。
ウイングが先に屋根の口から出た。堤防の道は、連休の車で詰まっている。上からなら、詰まった列を越えられる。
遊水地は広い。南の入口から水際まで、二百四十メートルある。刈ってある草地で、遮るものが一つも無い。
五月の草は、まだ膝までいかない。三月に刈ったところから伸びた分が、二十センチある。
立っている人の腰から上は、二百四十メートル先からでも見える。しゃがんだ人は、見えなくなる。
人は多かった。敷物を広げた家族が三十組ほどいて、その間を子どもが走り回っている。
母親は、水際から四十メートルの場所に立っていた。三十くらいで、四つの子の手を握っている。
「動いていません。ここにいます」
「お名前を」
「宮下です。上の子は、ゆいといいます。六つです」
迅は名前を聞いてから、水際の方を見た。見通せる。膝より下の水と、二十センチの草と、その向こうの堤防しか無い。
「妹さんに、もう一度訊いてもいいですか」
ひかりが四つの子の前で膝を突いた。突いてから、目の高さを合わせる。
「お姉ちゃんは、どこまで行った?」
「みずのほう」
「そこで、何してた?」
「しゃがんでた」
「しゃがんでたのは、どのくらい?」
四つの子は答えなかった。答える代わりに、自分の足元を指した。
指した先には、何も無い。草があるだけになる。
ひかりはそこで、その子の指の高さを見た。指は、地面ではなく、少し先の空を指している。
四歳の子が指すのは、目で見えている場所になる。足元を指しているのではない。自分の目の高さから、まっすぐ前を指している。
「あそこ、って言ってる」
言ったのはひかりで、指の先には草地が広がっている。二百四十メートルのうち、真ん中あたりになる。
迅がそちらへ走った。走った先は、敷物と敷物の間の、誰も座っていない場所になる。
誰も座っていないのは、そこだけだった。
草の丈が、周りより低い。踏まれた跡が円になっていて、円の真ん中に何も無い。
円の直径は、十八メートルある。三十二組の敷物が、その円を避けて並んでいた。避けたつもりの人は、一人もいない。
いい場所が空いていれば、人はそこへ入る。入らなかったということは、そこがいい場所に見えなかったことになる。
迅は円の中へ入った。入って、そこで足を止めた。
「いる」
迅の返事は短い。理由は付けなかった。
円の中には、六歳の子がしゃがんでいた。誰にも見えていない場所で、こちらを見上げている。
迅が手を出した。出した手を、子どもが掴む。掴む力が弱い。二十六分しゃがんでいた足では、立つのに時間が掛かる。
迅は引かなかった。引かずに、子どもが立つまでそのままでいた。
掴んだところで、周りの三十組が一斉にそちらを見た。今まで、誰の目にも入っていなかった。
「トリアージ」
迅が左手首の蓋を跳ね上げた。ブレスが色を出す。
> 判定 ── 黒。要救助者、内部に確認できません。
「急報 ── 出場!」
> サイレン ── 起動。〈火群 迅〉。応答、確認。
> サイレン ── 起動。〈逢坂 澪〉〈灰谷 蒼汰〉〈寺尾 剛〉〈七尾 ひかり〉。応答、確認。
五人が同時に上がった。上がった先は、草地の真ん中になる。
迅は右手を耳の高さへ上げた。掌を外へ向ける。四人が続けた。
見ている人が、この日は多い。敷物の上から、三十組が同じ方を向いている。
> 水を持ってく、火の現場 ─── サイレンレッド!
> 声を持ってく、知の現場 ─── サイレンブルー!
> 綱を持ってく、高の現場 ─── サイレンイエロー!
> 梁を持ってく、圧の現場 ─── サイレングリーン!
> 息を持ってく、生の現場 ─── サイレンピンク!
>
> 特別災害対策機構、第七支部 ──
> 呼ばれたら、鳴らして、行く!
> 急報戦隊、サイレンジャー!
声は草地を渡って、堤防に当たって戻ってきた。戻ってきた分だけ、二度聞こえる。
> ── 回線、残り 三本。
踏まれた円が、そこで広がった。広がる先に、敷物がある。
広がった円の中に入った家族が、二組いた。二組とも、外から見えなくなる。
見えなくなった場所は、何も無い草地に見える。敷物も、荷物も、人も、そこに無いことになる。
ひかりが円の縁へ寄った。
「重装 ── 換装!」
ひかりの背に、円筒が二本立った。装甲の外へ、もう一枚が被さる。
> ── 回線、残り 一本。
ひかりは円の中へ入った。入ってから、二組の傍で膝を突く。
「七尾といいます。私の手を、順に握ってください」
中の人からは、外が見えていた。見えているのに、向こうからは見えていない。
中の二組は、手を振っていた。振っている手が、外の誰にも届いていない。
届かないことに気付いてから、二組とも手を下ろした。下ろしてから、動かないでいる。
「まあ待て。俺が縁を作る。円の外へ、線を引く」
寺尾がハンマーを草地へ立てた。柱を三本、円の縁へ打ち込む。
二文で言って、寺尾は三本の頭を円の内側へ向けた。向けた分だけ、縁の位置が分かる。
柱は外からも見える。中の人が、柱を目印にして出られることになる。
目印は、外から見えることに意味がある。中からだけ見えるものは、目印にならない。
「上、任せろ。円の直径、十八メートル。索は二本で足ります」
蒼汰が索を投げた。投げた索が、円の反対側の柱へ届く。届いた索を、両端で張った。
張った索は、円の中を横切る一本の線になる。線に触れれば、方角が分かる。
澪が円の外でソナーを構えた。撃つ前に必ず人数を言う。
「十二名。円の中に七、外に五。円の芯は零。撃てる」
撃った。低い音が円を通った。通った音が、真ん中で止まる。
「芯があります。地面の下です。深さは五十センチ」
迅がギアの柄を半回転させ、そのままもう半分回した。金具が二度噛む。
「鉤!」
柄の先の鉤を、円の真ん中の草へ差し込んだ。差し込んでから、引く。
引いた先から、土が上がった。上がった土の下に、古い樋の口がある。
遊水地の下には、水を抜く樋が通っている。使われなくなった口が、草の下に残っていた。
その口が、芯になっている。四十年前まで、この樋は水を抜くために使われていた。使わなくなってから、埋め戻されずに草を被っている。
草の下にあるものは、地図に載らない。載らないものは、誰も見に行かない。
「サイレンアックス ── 急救斬ッ!」
刃が、口の縁を横から断った。断たれた口の上で、円が保てなくなる。
円が消えた。消えた場所に、二組の家族と、敷物と、荷物が現れた。
現れたのではない。初めからそこにあった。
二組の家族は、外へ出て初めて、自分たちが見えていなかったことを知った。知ってから、二人が同時に空を見た。
蒼汰は柱の索を解いて、二本とも手繰った。巻き取りへ収めてから、端を指で一度送る。
宮下ゆいは、母親の腕の中にいた。四つの妹が、その隣で母親の袖を握っている。
「息、返すよ」
ひかりが七つ数えた。七つ数えて、七つで戻った。
「ずっと呼んでたんです」
母親がそう言った。誰にも向けていない。
「名前を呼んで、何度も歩いて。それでも見つからなくて」
「呼んだ声は、届いていました」
言ったのはひかりで、それ以上は続けなかった。
六歳の子は、母親の腕の中から顔を出した。出してから、右手を耳の高さへ上げる。掌を外へ向ける。
誰も教えていない。円の中で見上げていた時、迅が同じ形をしていた。
草地の東の端に、紙を挟んだ板を持った人が立っていた。背は低い。敷物の数を数えている。
「三十二組。入ったのは六百二十名。出たのは四百八名」
誰も訊いていない。
「この街の迷子の届けは、年に千百件です。千九十七件は三十分以内に見つかります」
数字は合っている。この人は嘘を言わない。
「残る三件は、探し方の問題ではありません。見える場所にいなかっただけになります」
板の紙が、一枚めくれた。めくれた下にも、数字が並んでいる。
澪はそちらを見た。見て、それから草地の真ん中を見た。円のあった場所には、柱が三本立っている。
誰も、そこまでは言わなかった。紙を挟んだ人は、板を下ろして、堤防の階段を上がっていった。
上がっていく背中の向こうで、草地がもう一度動いた。
動いたのは、円のあった場所だけではない。遊水地の南側の草が、全部、同じ拍で伏せた。
伏せた草の下から、古い樋が上がってきた。土の中を通っていた分が、そのまま地面を割って出てくる。
出た高さが、堤防を越えて、そこで止まらない。
*
地下三層で宮ヶ瀬が盤を叩いた。
「川沿いです。遊水地は足が沈みます。堤防の天端にしか立てません」
「発進」
合図は整備班が出す。
サイレンファイヤーが堤防の天端で立った。レスキューが右へ、クレーンが左へ、メディックが右の脚へ、ウイングが背へ回る。
クレーンのアウトリガーが泥を噛んだ。四本目の遅れが、いつもの半拍から一拍になる。
その一拍の間に、残りの四機が入った。入るのが、少しだけ遅れる。
> ── 回線、残り 一本。
堤防の上から、連休の人が見上げていた。六百二十人のうち、まだ出ていない二百人あまりが、そこにいる。
草地の側からは、機体の脚しか見えない。堤防の上からは、胴が見える。同じものを、二つの高さから見ていることになる。
どちらからも、全部は見えない。全部が見える場所は、この遊水地には無い。
サイレンオーの左手は、握ったままだった。開かない。その左手を、迅は水面へ寝かせた。寝かせた腕が、草地と水を分ける仕切りになる。
仕切りの内側で、水が草地の側へ来ない。来れば、敷物の三十二組が濡れる。濡れるだけで済むが、済ませないのがこの隊になる。
樋が、腕の外側から回り込もうとした。回り込む先には、堤防の階段がある。人が上がっている途中になる。
右腕が動いた。開く方の掌が、樋の腹を横から掴む。掴んだ場所で、古い土が落ちる。
落ちた土の下から、繋ぎ目が出てきた。四十年前に埋めた樋の、継いだ場所になる。
「サイレンオー ── 全消斬ッ!」
押し出した掌が、繋ぎ目を横から抜いた。抜けた先で、樋が形を保てなくなる。
土に戻った樋が、遊水地の草地へ落ちた。落ちた場所は、敷物の並びを外れている。
落ちた音が、堤防の上まで届いた。届いた音の後で、階段の人が全員、そこで止まった。
止まってから、拍手が起きた。起きたのは、階段の下からになる。下からの拍手は、上まで届くのに一拍遅れる。
遅れて届いた拍手を、堤防の上の人が受けて、そこでもう一度叩いた。
*
地下二層で、戸倉がクレーンのアウトリガーを見ていた。四本目の足に、泥が固まって入っている。
「一拍になりました」
「半拍に戻す部品は、まだ作れていません」
宮ヶ瀬は工具を置いた。置いてから、それ以上は足さなかった。
速水が受信席で、遊水地の地図を畳んでいた。畳みながら、戸倉に言った。
「入口の数だけ数えても、出た数が分かりません。市には出しておきます」
「出しても、来年度だろう」
「来年度でも、出さないよりは早いです」
速水は紙を二つに分けた。市へ出す控えと、支部に残す分になる。
三階の食堂で、寺尾が湯豆腐を出した。五月の椀は、四丁ぶんになる。五つの椀に、四丁を分けた。
背負った円筒の跡が、ひかりの肩に残っていた。紐の跡で、赤くなっている。今日は一人だけになる。
尾花律子は受信席に残った。用紙を綴じて、次の一枚を出す。この日の保留は、二分四秒になる。件数は二件だった。
右の欄には、母親の言葉がそのまま入っている。見えてるはずなんです、と書いてある。
六人は、この人に礼を言わない。四歳の子の四文字を右の欄へ書いたことも、誰にも伝わっていない。
宮下ゆいは、その日のうちに家へ帰った。搬送はしていない。円の中にいたのは、二十六分になる。
二十六分の間、この子は動いていない。しゃがんだまま、母親が呼ぶ声を聞いていた。聞こえていたので、返事もしている。
返事は、誰にも届かなかった。
遊水地の草地には、柱が三本残った。市の河川課は、抜かずにそのままにしている。
三本の内側は、翌週から人が敷物を広げるようになった。円のあった場所が、一番平らだったからになる。
> 【第七支部 出場記録】
> 臨場 ── 十五時五十分。所要 ── 十二分。
> 保留 ── 二件。最長 ── 二分四秒。
> 未着 累計 ── 一。
> 損壊 ── 川沿い一丁目 遊水地 草地 一部 陥没。旧排水樋 一系統 露出。
> 堤防 階段 手すり 一部 変形。
> 救助 ── 七名。搬送 ── なし。
> 市内 入口だけ数えて出口を数えていない施設 二十二か所 ── 記録なし。
> 本件、処理 ── 完了。
> ── 入電。




