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EVOLVE〜エヴォルブ〜 Season7 ― 家族システムのアップデート ―  作者: 柊梟環
EVOLVE〜エヴォルブ〜 Season7 ― 家族システムのアップデート ―
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第5章 寄り添うという治療 ― 院長・凪陽一 ―

父との再会。

そして、母の言葉を今も胸に抱く人との対話。

医局を出ると、窓の外には午後の光が差し込んでいた。


海翔(かいと)が先に歩き、(なぎ)がそのあとを追う。

(しゅう)(たまき)は少し後ろから、その背中を静かに見守っていた。


廊下の突き当たり。

金属のプレートに「院長室」と刻まれた扉の前で、(なぎ)は立ち止まる。


深呼吸をひとつしてから、ノックをした。


「――入れ。」


静かな声だった。

懐かしく、けれど今は少し距離を感じる父の声。


扉を開けると、

柔らかな陽射しがカーテンの隙間から差し込んでいた。


机の上には整然と並んだカルテと数冊の医学誌。


そしてその向こうに、白衣の上から淡いグレーのカーディガンを羽織った男性が座っていた。


「……久しぶりです、父さん。」


「ああ。……よく来たな。」


短い言葉のあと、しばらく沈黙が流れる。

時計の秒針の音だけが、部屋の静けさを刻んでいた。


「アークシステムズ。

 陽翔(はると)、君が関わっている会社だったな。」


「はい。正式にシステム改善を担当します。」


「そうか。」


そう言うと、父は椅子から立ち上がり、

窓辺に置かれた小さな観葉植物の葉を指先で撫でた。


「――人は、治すだけじゃ救えない。

 癒やすには、“そばにいる”ことが必要だ。」


それは、かつて母がよく口にしていた言葉と同じ響きだった。


「……母さんの言葉ですね。」


「ああ。

 あの人がいなくなっても、

 この病院の根っこはあの言葉に支えられている。」


(しゅう)が静かに頷いた。


「すばらしい言葉です。

 僕たちが目指している設計理念にも近いと思います。」


陽一(よういち)は振り返り、(しゅう)をまっすぐに見た。


「なるほど。……いいチームにいるな、陽翔(はると)。」


「はい。僕は、ここでようやく自分の居場所を見つけました。」


陽一(よういち)は微笑んだ。


「それでいい。

 医者にならなかったことを、

 私は一度も“間違い”だと思ったことはない。

 おまえは人の心の動きを見てきた。

 それは医療と同じくらい尊いことだ。」


(なぎ)は小さく息を飲んだ。

それは、ずっと心の奥で聞きたかった言葉だった。


「……先生、

 凪くんが作るシステムって、“人を傷つけない設計”なんです。

 きっとお母さまの想いが、ずっと息づいているんですね。」


「そうか。……美鈴(みすず)の想いが、ちゃんと届いていたんだな。」


「父さん、

 母さんの言葉、僕の中でもまだ生きてます。

 “完璧じゃなくていい、支え合えばいい”って。

 だから僕は、心を支える仕組みを作りたいんです。」


陽一(よういち)は一歩近づき、(なぎ)の肩にそっと手を置いた。


陽翔(はると)

 おまえがやろうとしていることは、医療の未来だよ。

 人が人を想う限り、その心は治療になる。」


(なぎ)は小さく頷き、目を伏せた。

胸の奥で何かが溶けていくような温かさを感じる。


「……院長。

 このプロジェクト、必ず成功させます。」


「頼む。

 そして――兄たちを導いてやってくれ。

 あの子たちは、優しさを置き忘れてしまっているだけだ。」


外の光が少し強くなり、

カーテンの隙間から風がひとすじ流れ込む。


その風は、まるで美鈴の微笑みのようにやさしかった。

“完璧でなくていい、支え合うことが大事。”

父の言葉が、凪くんの心のエンジンを再起動させる。

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