サーナの帰館
サーナとクレメンスは日が落ちる前に帰ってきた。
二人が近くに戻ってきていることを察知したロジーナは、アリアに声をかけた。
「サーナちゃん、そろそろ帰ってくるわよ」
「……」
アリアは視線を落としたが、ロジーナに促され、一緒に出迎えに向かった。
山の方から、飛び跳ねるようにこっちに向かって来るサーナが見えた。その後ろにはクレメンスの姿も見える。
サーナは、アリアとロジーナを見つけると、大きく手を振りながら駆け寄ってきた。
「サーナちゃん、お帰りなさい」
そう言ったロジーナにサーナは「ただいまです」と無邪気な声で答えた。
「楽しめた?」
「はい。とっても、とっても素敵なトコでした」
興奮覚めやらぬ様子のサーナは、視線をアリアに向けた。
「アリアちゃん、あっちのお山の上に、すっごくきれいなお花畑があったんですよ」
話しかけるサーナだったが、アリアは視線を落とし、軽く相づちを打つだけだった。
「そうだ」
サーナはくるりと向きを変えると、クレメンスのそばに移動し、クレメンスから何やら受け取ると、アリアの前に再び立った。
ファサッ
不意に、頭に何かが乗った感触をおぼえたアリアは、反射的に頭に手をやり、それを手に取った。
それは、色とりどりの小さな花々で編まれた花冠だった。
「きれい……」
アリアはその花冠をうっとりと眺めている。
「アリアちゃんに、お花を見せたかったんです。お揃いです」
サーナはそう言うと、自分も花冠をかぶった。
「サーナちゃん、ありがとう」
アリアは瞳を輝かせながらお礼を言った。
そんな二人の様子を眺めていたロジーナだったが、ふいに視線を感じ、そちらを見た。
クレメンスが何か言いたげな顔でこちらを見ている。
はっとしたロジーナは、
「ねぇ。私にも見せて」
と、二人に言った。
「「はい」」
アリアとサーナは、同時にロジーナに花冠を渡した。
二つの花冠を見つめたロジーナの口から、力ある言葉が紡がれる。
花冠が宙に浮いた。
アリアもサーナも、その様子を食い入るように見つめている。
ロジーナはそのまま指をゆっくりと動かしながら、魔力を練っていく。
凝縮した魔力は花冠を包み込むと、花冠に吸い込まれるようにふっと消えた。
ロジーナの左右の手の上に、花冠がパタッと落ちた。
「すごい……」
サーナはロジーナから花冠を受け取りながら呟いた。
「お師匠様?」
アリアは花冠をうけとると、尋ねるようにロジーナを見上げた。
「これでもう枯れないわよ」
二人は目を見開いてロジーナの顔を見る。
「二人とも、そのうち出来るようになるわよ」
「本当ですか?」
「しっかり訓練すればね」
アリアの問いに、ロジーナはそう答えると、ニヤリと笑った。
「「頑張りますっ!!」」
思わずハモったアリアとサーナは、お互いに顔を見合わせて、クスクスと笑った。
そんな二人の様子を眺めていたロジーナだったが、ふと視線を動かした。
しかし、そこにはもうクレメンスの姿はなかった。




