2話 明日に備えよう!
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朝礼が終わったあと、いつも通り訓練や任務などを終えた俺達は今日の分の給料を貰うため、窓口に並んでいた。
「早く順番にならねぇかなぁ。昨日に引き続き今日も勝てそうな気がする!」
「私も早く酒場に行きたいんだけど〜…。」
「俺も早く鍛えに行きたいです!!」
「俺が代わりに受けとっておくから、2人とも行ってきたら?」
「それ絶対返ってこないでしょ〜。」
「賭けに使う気ですね!!」
「いや、借金の返済。」
「「余計に悪い!」」
「次!そこの騒いでるヤツら早く来い!!」
「あ、やべ!呼ばれた!!」
「ったく、呼んだらすぐに来い。ほら、これがお前らの今日の分だ。」
「ありがとよ!!ん?少なくね?」
「あぁさっきお前らのとこの小隊長さんが来てよ、減額だって言ってたぞ。」
「えぇ〜!!またぁ!?」
「元から少ないのにさらに減らすなんて酷いです!」
「理由も貰ってるぞ。カラムは遅刻と隊内の風紀を乱した分、セラは訓練所破壊の分、ボルクが扉の破壊分らしいぞ。」
「……ネチネチ覚えやがって!!」
「ちゃんと直したんだからいいじゃん〜!!」
「ちゃんと嵌め直しましたよ!」
「はいはい、まぁいつもの事だろ。いい加減真面目に働け。」
「「「そんなぁ…」」」
俺たちは文句を言いながらも金を受け取り、食堂で飯を食い解散する。
俺は賭場へ行くが、多分セラとボルクもそれぞれの馴染みの場所へと行くんだろう。
――――――――――
酒と煙草と汗の匂いが立ち込める、薄暗いロウソクの光で照らされた机、その前に俺は居た。
奥には顔馴染みとなった胴元のおっさんが座っており、サイコロを3つ構え小さく呟いた。
「さぁ次だ。テメェらハイかローか選びな。」
「さっきまで3回連続ハイだった…ここはローで!」
「ワイはローにしか賭けへんで!!」
「ほほほ、若いのぉ…しかしここはローじゃの。」
周りにいるおっさんやじいさんが次々に賭けていく。
全員がローに賭けたようだ。
ここは勝負に出るか…。
俺は掛け金として机に出していた銀貨を1枚掴み、上に弾いた。
表ならハイと決め、コインの行方を目で追う。
手の甲でキャッチし、開いて見ると表が出ていた。
「……ハイに全部だ!!」
「よし、これで全員賭けたな。行くぞ!!」
胴元のおっさんは掛け声と共にサイコロを3つ同時に机へと投げる。
サイコロが転がり、止まった。
「3と5と6!!合計14でハイだ!」
「よっしゃああああああ!!!」
「クソぉぉぉおおおお!」
「4連続…有り得るのか……」
「有り得ん、有り得んぞ……」
「珍しくカラムの一人勝ちだな。これが勝ち金だ。」
今夜も調子良く勝て最高の気分だ。
この調子で今夜も勝ち逃げさせてもらうぜ!
「さて、次だ。ハイアンドロー?」
「次は絶対ローが来る!ローに銀貨2枚を賭ける!!」
「ここはカラムに乗ろう!ローに!!」
「ワシも!」
「俺も!」
「ワイも!」
「よし、全員賭けたな?」
再び胴元のおっさんがサイコロを投げる。
机に音を立てて落ちたサイコロは回り、止まったそこには――
「6と6と6。ゾロ目だから親の勝ちで倍付けだな。」
「そんなのありかよおおお!!!」
「カラム!!!てめぇえええ!」
「今夜はツイてないのぉ…。」
「最悪だ…また母ちゃんに殺される…」
こうして勝ち負けを繰り返し、俺の夜は今日も更けていく。
――――――――――
給料を受け取った私は全速力で酒場まで走った。
この村で酒場は2軒あるが、1軒は高級将校専用で私たちは使えない。
絶対いいお酒があるだろうからいつか行ってみたい。
そんなことを考えながら走っていると、いつもの酒場に辿り着いた。
スイングドアを推し開けながら叫ぶ。
「マスター!いつもの〜!!」
「…はいよ。」
「あ、セラ来た。」
「やっぱ可愛いなぁ…」
「お前騙されるなよ。あれは人の形をした樽だ。」
いつも通り酒場では色々な人が色々なことを話しており賑やかだ。
この空間が私は好きだ。
カウンターに座り周囲を見ているとマスターが私のお酒を出してくれた。
「ほらよ、いつものエールだ。」
「ありがと〜!!仕事終わりにはこれだね〜!!!」
私はエールを一気に飲み干す。
これだけで銅貨5枚、給料のうち1割だ。
高すぎる。
「ねぇマスターもっと安くならないの〜?けどその前におかわり!!」
「…はぁ、セラお前さんも一応軍人だろうが。この酒場も賭場も娼館も全部軍の直営なのは知ってるだろうに。勝手に値引きなんかしたら俺が殺される。」
「だからこそ!!」
「容赦ねぇな!ほらよ、おかわり。」
「ありがと〜!」
おかわりは大切にちびりちびりと飲んでいると隣に初めて見る男が座った。
「美しいお嬢さん。もし良ろしければ今夜いかがでしょう?」
「いいよ〜分かった!ワイン?エール?」
「……祝杯ということですかな?では、ワインで。」
「分かった〜マスター樽で持ってきて〜!!」
「おう!!」
「え、た、樽?」
「え、飲み比べなら樽ぐらいいるでしょ〜?」
「そうですね…。え?飲み比べ?」
マスターが樽を私達の間に置き、それぞれにジョッキと支払い同意書が手渡される。
おじさんが不思議そうな顔をしながらサインを書き込んでいた。
「よし、両者ともにしっかり書いたな。じゃあギブアップか気を失ったら負けだ。始め。」
「ワインだ〜!!やっぱ瓶より樽だね〜!」
「何故飲み比べが始まったんでしょうか…?」
「良いぞセラー!」
「まだセラに挑む奴がいたとはな…。」
「誰なんだあのハゲたおっさん!?」
「名前はえーっと…ヴァルグラード。ブハハ、おい、英雄王様だ!絶対偽名だろ!!」
「アイツは昨日ウチの女房口説いてた変態じゃないか!やっちまってくれセラ!!」
周りの客たちも私たちを囲み、騒ぎながら飲んでいる。
みんな楽しそうに笑い合い、殴り合い、吐き合っていた。
「おじさ〜ん!もっと飲も〜!!」
「もう……うっぷ…ギブ……」
「はーい、勝者はセラ〜。解散解散〜。」
樽が半分ほど空いたタイミングで、相手の男が床に倒れる。
どうやら私の勝ちのようだ。
「じゃあ負けた人の奢りだから!ありがとね〜!」
「……え…聞いて……ない……」
「やった〜!今夜も飲むぞ〜!!」
こうして飲めや騒げやの賑わいの中、私の夜は今日も更けていく。
――――――――――
俺は給料を受け取った後、走り出した。
村の外、少し行ったところにあるいい岩場。
俺は英雄になるべく、いつもそこでトレーニングを積んでいる。
「うおおおおおおおおおおおお!!!!!」
「なんじゃ!?」
「敵襲か!?」
「あぁ、またあの筋肉か…。」
「なんで毎日叫びながら走ってんだよ。うるせぇな。」
走っていると道端に老爺がしゃがんでいるのが目に入った。
「大丈夫ですか!?どうされましたか!!」
「あぁ腰が痛い。動けんのぉ。お、そこの若いのちょっと連れて行ってはくれんかの?」
「分かりましたー!!いいですよーー!!!さぁ乗ってください!!」
「痛てて…よし、それではまずは村のい…」
「じゃあ走りますから掴まっててくださいねー!!」
「おい!?どこへ行く!!止まれ!!!」
「おかげでいいトレーニングになりそうです!!」
「なぁ、村長また何か嫌がらせしようとしてなかったか?」
「多分前にもやってた、訓練明けの軍人をひたすら走らせるやつだな。」
「……あの筋肉ってどこまででも走れそうだよな。」
「やっぱり悪いことはするもんじゃねぇな。」
いい重さを感じながら心地よく走っていると、今度は井戸があった。
「ちょっと喉乾きましたね!!水飲みますか!」
「やっと止まるのか…。止まったら言いたいことが山ほどあるわ。」
「あれ?汲み桶もロープもない??」
「よし、止まったな…。おい、筋肉!言いたいことがあああああああ!?」
「あ、やっぱり井戸の底に落ちていました!!」
「馬鹿者!!井戸に飛び降りるやつがあるか!!」
「あの……」
「え、ロープが無いと汲めませんよ!!」
「普通は新しいの買うんじゃ!!」
「なるほど…勉強になりますね。」
「すいません…」
「とにかくここからはよ出るぞ!!」
「分かりました!!」
「いい加減気づけ!!!」
「わぁ!!ビックリしました!なんでこんな所に住んでるんですか!?」
「住んでねぇよ!!酔っ払って落ちたんだ!」
「セラさんみたいですね!」
「止めてくれ…その名前を出さないでくれ……」
「で、どうされました?」
「俺も出してくれ。頼む。」
「良いですよー!じゃおじいさんと同じようにしっかり掴まってて下さい!!」
「お、おう?」
「お主も大変なやつに乗ってしまったのぉ…。」
「え?嘘だろ!?井戸をのぼっ!?」
「いや〜出れてよかった!!」
「ありがとう、助かった。じゃあそろそろ離して …」
「よーしじゃまだまだ走るぞー!!!」
「なぜしっかり掴んだまま?離して!」
「良い重さですよー!!」
「降ろせぇー!このバカ筋肉ー!!」
こうして背中から降りることができず、走り続ける男の背中でワシらの夜は更けていった。




