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冒険はバカから始まった  作者: さかなのおにく
1章 チュートリアル
2/29

1話 朝礼に参加しよう!

※0話~3話までまとめて投稿しています。

 訓練場の扉の前。

 俺は立ち止まり、悩んでいた。


 ……

「第3班、全員揃いました!」

「第4班、全員揃いました!」

 ……


 扉の向こうから声が聞こえてくる。

 …これは点呼、始まってるな。


 昨日、賭場で粘りすぎた。

 珍しく調子が良く、気が付いたら外で日が昇っていた。


 そして今、遅刻している。

 扉から入れば確実にバレて減給確定。

 今日の賭け金が減ってしまう。


 でも、入らなければもっと怒られる。

 このままサボると懲罰室にぶち込まれる。

 アソコにはもう行きたくない。


 仕方ない、コインに賭けるか。

 表なら行く、裏ならこのまま隊舎に帰って寝る。


 コインを出そうと懐に手を入れた時、猛スピードで近付いてくる筋肉隆々の大男と、フラフラと歩いてくるローブ姿の女が見えた。

 ……より面白い賭けを思い付いた。


 ――――――――――――


 朝、訓練所に集まった者達を眺め、いつものように号令を出す。


「整列!点呼開始!」


「第1班、全員揃いました!」

「第2班、全員揃いました!」

 ……


 声が次々と上がる。

 この部隊は貧民、孤児、罪人崩れなど落ちこぼれの寄せ集め。

 少しでも優しくするとすぐにつけ上がり、軍規が乱れる。


 だから毎朝、必ず点呼を取るように言われている。

 そして遅刻や違反をした班には罰として、班全員に訓練倍増や減給が与えられる。

 また、三人一組で班を作り連帯責任とすることで連携や仲間意識、責任感が強まるらしい。


 ……普通の兵にはとても効果的な方針だった。

 だが、あの三人だけは例外だ。


「第6班、揃いました!」

「第8班、揃いました!」


「おい、第7班はどうした。」


「報告します! 第7班、まだ来ておりません!」


「……あの馬鹿ども、またか。罰として訓練三倍だ。いつもいつも舐め――」


 バキィ!!


「なんだ今の音は!?」

「すいません!遅れました!!!」


 破壊音とともに訓練所に現れたのは、扉を片手にぶら下げた筋肉の塊、ボルクだ。

 2m近い身長、ムキムキとしか表現のできない身体、短い金髪のバカだ。


「ボルク!また扉を壊したのか!?何度言えば分かる、あの扉は引いて開けるんだ!」

「今回は引いたのに壊れました!」

「……お前は普通に生活を送れているのか?点呼の前に修理してこい!」


 ドッカァァァン!!


「今度は何だ!!」


「あ〜また魔法爆発しちゃったなぁ…あれ?みんな居るってことはもう朝礼?」


 訓練所を囲う壁の一部を爆破し、朝日を背にふらふらと立ちながら笑っている魔女セラ。

 ボサボサした白髪のロングヘア、ヨレヨレのローブ、手には酒瓶、酔ってない日を見た事がないバカだ。

 それなりに貴重な魔法使いだが、こいつは全く安定しなく使い物にならないため一般兵と同じ扱いとなっている。


「既に点呼中だ!それよりもセラ、お前また爆破したのか!?」

「ちょっと今ならいい感じに撃てそうかなぁって〜。ほらほら、小隊長殿も朝から固い顔してないで一杯どう?」

「酒を勧めるな!お前もとっとと壁を直せ!」


 この二人が第7班の“問題児”2号と3号。

 そして、最後の1号は…


「で、カラム。騒ぎに紛れて並べばバレないと思ったか?」


「あ、バレてた?この状況なら勝てると思ったんだけどなぁ。チッ、ほらよ賭け金の銅貨。」

「毎度あり!毎日悪いな〜!」

「明日全部取り返すからいいんだよ!」


「目の前で他班と賭け金をやり取りをするな!!しかも明日も遅刻する気か!!!」


 この飄々と笑う青年が、第7班の班長カラム。

 ボサボサの黒髪に無精髭、軍服の襟はいつも開いており、剣よりも賭場が似合う雰囲気をしたバカだ。


 この三人が俺の小隊に入ってそろそろ一年。

 俺の胃は、きっともう原形を留めていない。


「…はぁ。まあいい、全班訓練開始!村の外周を三周だ。……第7班は十周!」

「ちょ、いつも九周じゃん!?」

「え~今走ったら絶対出るよ〜!」

「やった!もっと走ってきていいですか小隊長!!!」


「いいから黙って走れ!!ボルク、多く走ったら罰として俺の書類仕事の手伝いをさせるからな!」


 元気よく駆け出していく背中を見送りながら、俺は深く息を吐いた。

 ……あとで補給部に胃薬の追加申請を出しておこう。

 どうせまた、明日も必要になる。

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