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16話 なぐれ


 後続も全員入り、リオネルを中心とした前後に隊列を組み直した後、ダンジョンを進んでいた。

 当然俺たちは先頭だ。

 

「あ、また三叉路だ。ここはどっちなんだ?」

「ここは左です。」

「地図あるのってなんかズルいね〜!」

「サクサク進みますね!」

「あなた方はダンジョンを何だと思われてるのですか?魔石を取りに来て迷子になる訳ないでしょう。」

「行ってない道に宝箱あるかもよ〜?」

「そちらは専門の回収班がいますので。」

 

「じゃ成果ってなんだよ?」

「当然、魔石や未知の階層の探索です。ボスを倒し奥に進むこと事で手に入れます。…丁度いいですね、来ました。」

「何が来たんですか!!」

「前から来ます。カラムさん達は構えて。セラさんは魔法を準備して下さい。」

 

「おっけ〜!ぷはぁ〜」

「え!?なんで今お酒飲んだんですか!え?」

「まぁ見とけよ。他じゃ見れねぇよ?」


 セドリックが酒瓶を凝視している間にセラは詠唱を始め、模様を描いていく。

 描いた線は僅かに青く光っており外よりも一層神秘的に見える。

 

「いや何故魔法の前に飲むんですか!!あぁもう!敵が見えました!」

「ッ?!大量の虫!?」

「迷宮の掃除屋、デッドローチです。弱いですが数が多いのでセラさ」

「いやぁあああああ!!ゴキブリぃぃぃいいい!!!」

「あ、全員伏せろ!!!ボルクはセラの前で盾構えろ!」

「だからなんで飲んだんですかー!!!」


 慌てて叫びながら俺とセドリックはボルクの後ろに入り、大きな背中を支える。

 凄まじい衝撃と閃光が俺達を襲う中、デッドローチの断末魔が響いていた。


――――――――――――――


「で?」

「いや〜だからちょっと気持ち悪くて〜…」

「だよな!あの数は焦る!!」

「流石に鳥肌が立ちました!」

「確かに私も魔法を使うように指示しましたが、あそこまで強力な魔法を使う必要があったんですか?」

「え?あれは失敗したけど火球だよ〜!」

 

「嘘を付くな、この辺境のクズめ!普通は失敗すれば何も起こらんのじゃ!」


 ちょび髭でローブを来た厳しい顔の爺さんが詰め寄ってくる。

 

「ファーロン卿、落ち着いてください。幸い死者は愚か怪我人も出てませんし。」

「ガキのお守りは黙っておれ!この辺境のクズはなにか良からぬ邪法を使おうとしたに違いないんじゃ!!」

「そんなの知らないよ〜!いつも大体爆発するし〜…。」

「いつも大体!?お前さんほんとに魔法使いか!?」

「たま〜に魔法が成功する時もあるんだよ!」

「どの魔法じゃ。」

「よく分からないんだけど、どれでも凄い眩しいよ〜!」

「結局爆発じゃろそれ!!」

「成功した感覚はあるんだけどね〜?」


 セラとちょび髭が言い争いを繰り広げ、それをセドリックが仲介しようと奮闘している。


「なぁボルク、セラが謝るかどうか賭けねぇか?」

「謝らない方に賭けます!」

「あ、汚ぇぞ!それじゃ成立しねぇだろ!!」

「カラムさんこそ!」

 

「おい、なにを無駄な時間を過ごしている。」

 

 背後から冷たい声が聞こえた。


――――――――――――


「リオネル様!申し訳ありません。準備が整い次第出立致します。」

「準備なら先程入る前に十分にしたはずだ。今すぐにだ。」

「先程の爆発で幾人か軽傷ですが怪我をした者が…。」

「貧民の攻撃程度で怪我をするとはな。そんな者など役に立たん。入口も近い、捨ておけ。」

「……お言葉ですが。前回の探索で損害を軽視し、特攻に近い探索を行いました。そのためにあの部屋への…。」

「くどい!今回は成果を得るまでは帰らん。前回と同じにはならん。」

「…分かりました。」


 横に居たボルクが飛び出していくのが視界の端で見えた。

 

「あの!俺が!俺が全員担ぎます!!だから!」

「ボルクさん!?無礼ですよ、下がってて下さい。」

「貴様は…何の用だ。貧民風情が気安く口をきくな。」

「俺に助けさせて下さい!!」

 

「訳の分からん事を。おい、セドリック。コイツも」

「偉い貴族様のお坊ちゃんは気楽で良いねー。後ろで守られながら進むだけでいいんだしな。」

「…次から次へと。貴様はなんだ?もう一度言ってみろ。」

「あぁ、何度でも言ってやりますよ。アイツらはお前を守るために怪我したんだ。それすらも分からないお気楽貴族様。」


 リオネルの顔に自分の顔を近づけ睨むと、目を逸らさずさらに近づけてきた。


「何も知らない貧民風情が舐めた口をきくな。口減らし部隊ではまともな口のきき方すら教えてくれないらしいな。」

「あぁ習ってねぇな。でも大切な事はきっちり教えてくれたぜ?」

 

「なんだ?言ってみろ。仲間の絆か?友情か?愛か?」

「バカが。拳の握り方だ!!」


 俺は拳を握り、思い切りリオネルの顔面を殴る。

 周囲の音が消えたように感じる。

 ゆっくりと後ろに倒れていく。

 

 勝った。

 と思った瞬間、こめかみに衝撃を感じ、俺の意識は飛んでった。


――――――――――――


「………バ…カ…やーい、バーカ。」

「誰がバカだ!!」

「あ、起きた〜!」

「頭いてぇ!!何が起きた!?」

「カラム、突然の凶行に走ったでしょ〜?あの後すぐにリオネル様もカウンターで蹴ってたんだよ〜鋭かったな〜」

「それならなんで俺生きてんだ?」

「さぁ〜?リオネル様も倒れたからじゃない?」

「チッ…相打ちかよ……。」

「たぶん私達も巻き込まれたと思うけど、反省してる〜?」

「…ボルクは?」


 そう聞き、セラの方へ向けた視界の先をテントの資材が吹き飛んで行った。


「あぁ…また何か手伝ってんな。」

「しばらく休憩するらしいよ〜建ててるのはリオネル様の天幕だって〜」

「あの野郎…」


 再び拳を固くしていると後ろから声をかけられる。

 振り向くと暗い顔をしたセドリックがいた。

 

「はぁ…全く、反省してますか?」

「…死刑宣告に来たのか?」

「それならカラムさんが目覚める事はなかったですよ。」

「なんで俺は生きてんだ?」

「リオネル様の寛大な差配…と言いたい所ですが、様々な思惑でというのが正直な所です。」

「何させる気だ。」

 

「公爵家の三男を殴り飛ばしたのと釣り合う仕事。前回我々が引き返す原因となった3階層にいる敵をあなた方で倒して下さい。」

毎日18:20頃に更新しています。

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