表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
15/29

12話 はげめ


「ふぁぁあああ…寝みぃなぁ……軍ってのはどいつもこいつもなんでこんな朝早くに集まるんだ?」

「どこが朝早いんですか、ギリギリですよ!姿がありませんが、セラさんとボルクさんはどちらに?」

「知らね。その辺で飲んでたり走ってたりするんだろ。」

「あなた班長なんですよね!?」

「成り行きの班長だ!」


「はぁ。全く、なんであなた方のような人がこんなタイミングに…。」

「こんなタイミング?」

「リオネル様のご実家グラウベルク公爵家、私の寄親でもあるんですが…その家が成果を急いているんです。」

「……やっぱグラウベルク家だったか。」

「気付いてたんですか?」

「まぁ、な。」

「今の公爵様は…。…主の家に対してこんな事を言ってはいけませんね、忘れて下さい。」

 

「ま、だから俺はあのリオネル様とやらを手伝う気にはならねぇ。」

「あなたの過去に何があったかは知りませんし、わざわざ聞きません。しかし、ここは軍です。脱走兵がどうなるか…知らないとは言わせませんよ?」

「連帯責任、ね…。だからここに居んだろ。」

「あなたなりの覚悟ってことですか。」

「いや、昨日の夜抜けるかコインに賭けたんだが、抜けないって出やがってな。」

「バカなんですか!?まぁ出来る限り悪い様にしませんから大人しくしてて下さい。顔見知りでも死なれると寝覚めが悪いんですよ。」

「…あんがとよ。」


 整列した俺たちの前にリオネルがゆっくりと歩いて出てくる。

 昨日とはまるで違う、貴族様らしい綺麗で澄ました表情をしていた。

 セドリックが前に1歩進み、声を張る。

 

「総員、傾聴!」

「前回の探索では無様な結果しか得られなかった。この探索にかかる費用は全て公爵様が出して下さっている。つまり、我々が晒した無様な結果は公爵様の期待を裏切り、顔に泥を塗ったのも同じだ。次は無い。数日後より再び探索に入る。全員今度は成果を得るまで帰らぬ覚悟を持ち訓練に励め!以上。」

「総員、礼!」


 俺はリオネルを睨むことしか出来なかった。


――――――――――――――


「あれ〜?カラムなんでもういるの〜?」

「今日は早いですね!」

「俺だってたまには早起きぐらいするんだよ。」

「小隊長ならまた不吉だ〜前払いで罰だ〜って騒ぎそうだけどね〜」

「もっと受けたかったですね!」


「あなた達はもっと反省して見習って下さい。とにかく数日のうちに探索、ダンジョンへ向かいますので各自で準備を進めてください。」

「早速かよ!」

「昨日来たとこなんだけど〜…」

「いいですね!楽しみです!!」

「分かりましたか?」

「「「はい!」」」


 睨みつつそう告げたセドリックは俺達の元から離れていく。


「ぷはぁ〜あの人優しいけど怖いね〜」

「圧だけなら小隊長以上じゃね?」

「いい筋肉してますよね!セドリックさんも!」

「さて、じゃあ準備に行きますか。」

「さんせ〜!」

「荷物持ちは任せて下さい!」


――――――――――――――


 俺たちはセドリックに教えて貰った物資の集積所に向かう。

 そこでは大量の物資を相手に大勢の人が奮闘していた。


「おぉ〜凄い量だな。制圧部隊とは大違いだ。」

「凄いね〜。あっ!見て!!塩漬け肉があんなにある!」

「あっちには石臼がありますよ!!」

「石臼は物資じゃなくて、ここの設備ないんじゃないか?」


 穀物、塩漬け肉、水。

 カバンに詰め込めるだけ詰め込もうと格闘していると、書類を手に持っている偉そうな人がこちらに詰め寄ってくる。


「おい!貴様らここで何をしている!」

「え?探索のための物資の調達?」

「ここは貴族様用の物資だ。従士、特に貧民のお前らみたいなのはあっちだ。分かったらさっさと向こうへ行け!」

 

「あっちってあのゴミ捨て場?」

「ゴミ捨て場とはいい表現だ。お前たちの様なのはゴミでも漁ってろ。」

「……ちっ…覚えてろよ、このハゲ。」

「ワシはまだハゲてないわ!!え…ハゲてないよね?」

「だ、大丈夫ですよ!ツルーノ様!」

「え、えぇ!全然まだ大丈夫です!!」

「ほら見ろ!ワシはハゲではないわ!!この貧民共が焦らせおって。」

「え?大丈夫しか言われてないけど?」

「英雄も髪の毛には悩まれていました!!」

「本人がいいって言ってるんだ。そっとしておいてやれ。」

「全部聞こえとるわ!!!!」

「じゃ、ゴミ漁りに行ってきまーす!」

「ま、待たんか!!…はぁ……どうにか隠せんかなぁ……。」


 俺は何やらしゃがんでいたセラを引きずりつつ、もう1つの集積所に向かう。

 明らかに物資の質が低い。


「えぇ〜…黒パンと芋と水しかないんだけど。」

「見てください!この黒パンカッチカチですよ!!」

「ボルク、カッチカチなんだぞ…?」

「えぇ!カッチカチですね!!!」

「もしかして顎が鍛えられそうで喜んでる…?」

「セラさん、違います!カッチカチなんですよ!!」

「流石にこれは分からん…。」


 ボルクの新たな1面を知り、戦々恐々としているとこちらでも書類を持った兵士が寄ってきた。


「所属と名前をここに書いてください。」

「なんで?」

「持ち出しの記録を取る決まりなんで…。」

「俺文字書けないんだけど?」

「私は書ける〜!」

「名前だけなら書けます!」

「俺も勉強するか…。」

 

「その場合は代筆で書きますので。」

「じゃあ、リオネルのとこのカラムだ。」

「同じくセラだよ〜!」

「ボルクです!!」

 

「お貴族様を呼び捨てにするのは…!いえ、分かりました。持って行っていいのは各それぞれこの規定量迄です。」

「えっ、少なくねぇか?」

「途中で補給すると聞いてますが…。」

 

「ちょっとぐらいいいだろ。どうせバレないって。」

「既に私にバレてますよ!?」

「こっちにはお酒ないの〜?」

「余計に喉乾きますよ!?」

「石臼持って行って良いですか!」

「カバンに入りませんよ!?」

 

「なら何ならいいんだ!」

「さっき渡した紙に書いてる物だけですが…。」

「本当にあれだけか…。」


 俺たちは静かに荷物をかばんに詰め隊舎に戻った。

 

毎日18:20頃に更新しています。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ