10話 こえろ
※前話も同時投稿しています。ご注意下さい。
「こんにちはー。よろしくお願いしまーす。」
「まぁ〜す…」
「よろしくお願いします!!」
俺たちは小隊長にボロボロにされた次の日の朝、街に向かって旅立たされた。
何やら物資の輸送部隊がちょうど出る所だったとか、何やら言って急いで準備させられた。
そのまま数日を歩いて過ごし近くの街、村とは大違いの立派な石壁を持った市街にやって来た。
街に着くやいなや輸送部隊の隊長に捕まり、こうして攻略部隊への挨拶に来ていた。
「なんだその挨拶は!!シャキッとせんか!」
「いえいえ、いいんですよ。彼らは非常に優秀で、軍の認知していない迷宮を見つけ、あまつさえ攻略し破壊した程の実力者と聞いています。貧民に礼儀作法など最初から期待していませんし。」
「しかし、それで許していては…。」
「貴方達の様な部隊ではどうかは知りませんが、ここでは実力が全てですよ。本当に強いのであれば、ね。」
「良いと言うなら……って3人とも何寝てんだ!!」
「……ふがっ!?頭殴んなよ、おっさん!」
「ここの床柔らかいよ〜…すぅ……」
「寝てません!瞑想です!!」
「…………本当に……強いのであれば…」
「これはどれだけ強くてもダメだろ。」
――――――――――――――
「おっさん、ありがとな。世話になった。」
「木っ端の輸送部隊とは言え、俺も一応隊長だぞ。まぁお前達がいる間は暇にはならなかった。良い意味でも悪い意味でもな。」
「役に立ってたなら良かった〜!」
「いや、そうは言ってないが。」
「今度は馬に負けないように上手に荷車曳きますね!」
「ボルク、いいかよく聞け。二度と荷車に触れるな。」
「まぁとにかくまた会ったら、また世話になるからよろしくな!」
「今度は助けてやるぐらい言いやがれ。」
「助けてみせます!!」
「頼む、助ける為に大人しくしててくれ。」
「じゃまたね〜!」
俺たちは数日間ともに過ごしたおっさんと別れ、それぞれ割り当てられた部屋へと散っていく。
村には無かったカードを使った新しい賭けがとても楽しかった。
――――――――――――
「これどうすっかなぁ……。」
「……うぇ〜…気持ち悪ぃ……。」
「お二人とも遅刻ですね!」
「いや、ボルクもな!」
俺たちは太陽が真上に上がった頃に訓練場の入口で偶然にも出会った。
どっちかは流石に行ってるだろうと思ってた俺が馬鹿だった。
「とにかく村の時みたいに壁を壊すのはなしだ。」
「えぇ〜…なんでさ〜……」
「壁はすぐに壊れるものです!!物語でもドンドン壊してました!」
「絶対に高いからだ!見ろ!装飾が一杯だ!!」
「ゴツゴツしてますね!」
「壊れたら直すんだしいいじゃんか〜……」
「その結果村の訓練場はボロボロだった。いいか、あんな壁の修理費だと、それだけで一時金が丸ごと消えるぞ。」
「え〜まだ貰ってないのに!!」
「だろ?だから破壊はなし。」
「じゃあどうするんですか?」
「……今日から来るって知らない可能性に賭けて、明日出直さね?」
「いや〜昨日挨拶したし無理でしょ〜…」
「だよなぁ…おっさんめ……」
「うーん……。」
俺達は3人で頭を抱えて無駄に装飾の多い壁を睨み……あ。
――――――――――――――
私は将官ジュリウス・フォン・グラウベルク様に呼び出され隊舎に来た。
良質な木材でできた重厚な扉をノックし、声をかけ反応を待つ。
「セドリック・フォン・グラウムント到着しました。」
「入れ。」
「失礼致します。」
返事に従い、入室する。
部屋には高級そうな机やイス、ソファーなどが並び、床に敷かれた絨毯は柔らかく歩いても音が立たない。
その部屋の奥で机に向かい、何か書類に書き込んでいる男へと近づく。
男は顔を上げることなくこう告げた。
「セドリック、貴方の主人は最近どうしていますか?さっぱり成果報告がありませんが。」
「…成果を出すため日々、訓練を重ね研鑽を積んでおります。」
「あぁ努力は大切ですね。訓練も是非励んでください。ですが、成果はそれ以上に大切です。」
「心得ております。」
「これは独り言ですが、例えどんな結果になってでも、手遅れになる前に成果を出された方がいいですよ。」
「……それはリオネル様の命すらも度外視しろと?」
「私はそこまで言ってないよ、君。それにどのような親族でもこうして争うことになるのはいつも寂しく思っているよ。だが、父上や兄上を怒らせることはあまり賢明とは言えませんね。」
「承知…致しました。」
思っていたよりも状況が悪そうな事に頭痛がしてくる。
急ぎ帰り、リオネル様と相談しなければ。
踵を返し、退室しようとした際に再び声がかかる。
「あぁ、そうだった。明日、君たちの班に追加の人員です。」
「追加人員ですか…。先日の探索で出た欠員は既に補充いただいておりますし、あの部屋は数を揃えてもあまり意味はありませんが…。」
「辺境制圧部隊からの転属です。上が言うにはどう扱っても良いとの事です。」
「辺境からとは…貴族の子息や、もしや平民ですらないということでしょうか?」
「その辺の事情は何も。まぁ大方なにかをやらかしたのでしょう。」
「…そちらも承知致しました。他には?」
「ありません。行っていいですよ。」
「はっ!失礼致します。」
退室し歩き出す。
頭の中は再び主の事だけが巡る。
――――――――――――
翌朝、訓練所――――
主リオネル様が従士たちの訓練の様子を見られている所へ、昨日聞いた連絡を伝えに向かう。
「――一刻も早く成果を出せとの事です。」
「…努力すると伝えておいてくれ。」
「これ以上は引き伸ばせそうにありません。小さな物でも成果を出す必要が…」
「分かっている!そう何度も言われなくとも!!」
「…申し訳ありません。出過ぎた真似でした。連絡は以上です。私も訓練に参加してきます。」
「……成果を…でないと俺は…」
俯きつぶやくリオネル様に背を向け、訓練中の従士たちの方へと向かう。
そこでふと気がついた。
全員が知ってる顔だ。前から居た顔ぶれしかいない。
最も近場で訓練していた従士を捕まえ尋ねる。
「今日から3人転属して来るって聞いたんだが、知らないか?」
「いえ、自分は一度も見ておりません。」
「そうか、邪魔した。続けてくれ。」
どういうことかと首を傾げる。
昨日の連絡が間違いで明日からだったのだろうか?
1度隊舎に確認に行くかと考えた次の瞬間、高さ3mほどある訓練所の壁を乗り越え1人の男が侵入してきた。
驚いて固まっていると、その男の背中からさらに2人が崩れるように現れ、そのうちの一人がこちらに気付き、一人が地面に横たわり、一人が天に両拳を突き上げた。
「今日から転属予定のカラムだ、よろしく!」
「よろしくねぇ〜……ふぁぁ…」
「また1つ壁を越えました!!!」
何かが壊れる音が聞こえた気がした。
11話以降はストックの続く限り毎日18:20更新予定です。




