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3 止めるな、今止めたらパンツが見えんだろ!

「失礼します」

 二回扉をノックしてその部屋に入る。

「眼鏡君おかえりなさい。外の様子を見るだけだったのにずいぶん時間がかかったみたいね。そう……一日ぐらい?」

 豪華な施設、綺麗なソファーや黒い長机が並べられたその部屋は終楽学園の教室の一つ。その部屋に待っていたのは制服を着た椅子に座る一人の女子生徒だった。

「風紀委員長すみません、昨日のことはよく覚えていないのですがいったい何があったんですか……あと眼鏡じゃなくて彩原です。彩原 双。名前を憶えてください」

 身に着けている四角く黒い眼鏡をくいっと中指で押し上げてそう言うと女子生徒は「ふふ……」と微かに笑い。

「ごめんなさい彩原君」

 笑顔でそう言った。

 この教室は校舎の三階に位置する場所にありよく外の景色が見え、そこから見える景色は変わらず正方でできた豆腐のような建物のが数多く並んでいる。

 女子生徒は椅子から立ち上がり窓の外を眺めはじめると先ほどの明るい声とは変わっており冷たい声で喋りはじめる。

「彩原君はこの世界の反逆者負けたのよ」

「負けた……自分がですか?」

 全く身に覚えがない様子の彩原は手を顎に当て少し考えるようなしぐさを見せる。

「ふふふ……記憶を飛ばされているのね」

 女子生徒は振り返り、彩原との距離を詰めて顔を見上げながら右手で頭をなではじめる。

「やめてください、自分の方が歳が一つ上なので恥ずかしいです」

 顔を赤らめながら彩原はその手を振りほどく。

「恥ずかしがらなくてもいいのに……うん、彩原君の顔見てるとどうでもよくなっちゃった。今回は私たちの負け、相手が望むものをあげる。遊びってのは景品がないと燃えないからね」

 そう言った女子生徒はテーブルの上から端末を取ると誰かと話し始めたのであった。


=====


 バー・イケガミそこは表世界とは別の世界にあり反逆者たちの隠れ家となっている場所。

 その場所では風紀委員に一人ではかなわなかった錆月 灰斗の強化が行われていた。その方法とは。

「97……98……99……100……くっ、はあー死ぬ、いきなりハードなのはきついって!」

 腕立て伏せをやっていた。

 ろくに運動をしてなかった錆月は腕立て伏せを百回やっただけで息切れしている。

「情けないお兄ちゃんなんてカナタ見たくない……ほれ、あと百回、おもり追加で」

 そう言うとカナタが手に握っていた薄い本と机に置いていた本を錆月の背中にポイポイと乗せていく。

「そして最後に……とう!」

 そして椅子の上に立ち上がったカナタは勢いよく飛び上がるとそのまま錆月へとダイブした。

「おはようございまっす、学校に行く前に来てみたんですが……なにしてんすか?」

 入り口から入って来た小司は薄い本が周りに飛び散り散らかっており、錆月が汗だくで突っ伏している上にカナタが乗っていた。

「ちょっとお兄ちゃんと運動を……」

「どんな運動すか!」

 ………

 ……

 …

「いてて……」

 筋肉痛やカナタにダイブされた腰が痛い今日、学校に登校していると腰がずきずきと痛む。

「大丈夫っすか?」

 心配そうに一緒に登校している小司先輩がこちらを見ているが大丈夫とやせ我慢するしかない。

 この世界には娯楽という物がなくなった。それにより無駄なものも排除していて、なんといっても楽園法律のせいで医学と言うものが全く発達していない。自分が風邪をひいたり腕や足を故障しても自分で何とかするしかない。湿布なんてものはない、これがこの世界。

 だが筋肉痛なんかで運動をやめるわけにはいかない、これから先世界を変える活動をしているとどんなことがあるか分からない。体だけでも鍛えていないと。

「『いいんだよ心配しなくても、男の子はこうやって強くなるの。大丈夫だよロリ先輩』」

「ロリ先輩! どう呼んでもらってもいいかなと思っていたけどそれはひどくないすか!?」

 カバンの中にはいっている小さな通信機代わりの人形一号ちゃんからカナタの声がする。その声は一切の悪気がない堂々とした口ぶりだ。

 半分はカナタのせいで体を痛めたということは心の中にとどめておこうと決めた。

 そんな会話をしていると終楽学園の門の前に着いたのだがやけに人だかりができている。

「何すかね、昨日もこんな人だかりできてたっすね」

 門を見てみるとそこには風紀委員と書かれた勲章をつけている生徒が何人かおり、登校している生徒のカバンのチェックをしているようだ。

「昨日あんな派手なことした後だし誰かスカートを持ち込んでいないかのチェックだろう」

 昨日、生徒に服が溶ける水をぶっかけスカートを無理やりはかせるという計画をし、スカートをはかせるということはできたのだがそれは一日だけの話、今日の女子生徒の姿はいつも通り地味なジャージ生地のズボンをはいていた。

 だがその作戦のおかげで大半の女子生徒はスカートを着たいという意思は見て取れた。

 少しづつでもいい、その大勢の意思が表向きに出てくるようであれば世界は変えられる。

 これからもこういうことは絶対続けると決意した錆月は決意したのだが……

「これ、カバンの中に入っている一号ちゃんはどうしよう……」

 今は目の前のことが大事だ。

 このかばんのチェックをどう乗り越えるか、それが大事だ。

「小司先輩カバンの中に変な道具は入れてませんか?」

「うん、大丈夫っす特に変な道具は入ってないっす」

 カバンを開け中をごそごそとあさった後親指をこちらに立てた。

「『変、変って言わないでよ』」

 カナタの少し怒った声が一号ちゃんから聞こえた。

「『まあこのことは大丈夫。一号ちゃんは自分で歩けるからここで別れて、学校の屋上で合流すればいい』」

「それで大丈夫なのか?」

「『大丈夫、一号ちゃんのステルススキルなめんなよ』」

「わかった」

 錆月は門から少し離れたとこでカバンから一号ちゃんを取り出し地面に置く。するとぺこりとお辞儀をしてすたすたとどこかに消えて行ってしまった。

「大丈夫かな……」

「まあカナタちゃんの技術を信じるっす」

 心配な一号ちゃんを送り出した後自分たちは門へと向かった。

 門に着くと生徒会委員の勲章をつけられた生徒に呼び止められカバンを調べられるが何も出てこないので普通に通ることが出来た。

 小司先輩も同じように調べられ通ってよしとなったとき一つの黒い大きな袋を渡され、不思議そうな顔で錆月と合流した。

「何すかこれ。錆月さんはもらったすか?」

「いやもらってない……」

 その時チャイムが鳴り響いたあと放送が流れる。

『これより集会を行います。生徒の皆さんは速やかに体育館に移動してください』

「集会なんて珍しいっすね、三年間で三回目ぐらいすっね」

「そうなの! とりあえず行ってみよう」

 集会があまりないことに驚きながらも小司先輩と一度分かれ体育館に向かうのだった。

 ………

 ……

 …

 生徒が集まった体育館、普通ならざわざわと微かに生徒の話声が聞こえるのだがこの世界の生徒は静かで死んだように皆立ち尽くしている。なんか悲しい。

 静まりかえっているそんな中体育館の前に一人の女子生徒が立ち喋り始めた。

「皆さんおはようございます、今日もいい天気で……何もない日和ですね」

 その女子生徒は少し他の生徒とは雰囲気が違う、後ろを結んだ長い髪、光が入っていない青い瞳、制服も少し違う。黒をベースにしたパーカーのような感じで少し赤いストライプが入っている制服そして何よりも驚いたのが……赤と黒のチェックの入ったスカートをはいていた。

「今日女子生徒の皆さんにはある物をお配りしました。それは今私が着ている制服と同じもの……今日から女子生徒の皆さんはこちらの制服で登校していただけるようお願いします」

「なっ……」

 同じものって……女子生徒皆スカートを着るということ……だがそれは楽園法律に違反している、おしゃれは禁止されているはずなのにどうして……

「あ、楽園法律を気にしている方がいる生徒もいるかもしれませんがご安心を。子の制服には特別な鷹の印がついています。それにEnd paradiseの皆さんにも伝えていますので大丈夫です。それでは」

 そう言い終えると一つお辞儀をして去ろうとしたその時、微笑む彼女と目が合った。偶然ではないその目はすべてを見透かしているようなそんな感じがする。

 そんな彼女はそのあと何もなく去っていったのだった。

 ………

 ……

 …

「うーん」

 いったい何だったんだ、確かに彼女と目が合ったのだが自分の勘違いだろうかなんだかすごくもやもやする。

「錆月さん、さっきから何うなってるんすか?」

 屋上の壁にもたれかかり腕組みをしながら悩む錆月に顔をグッと寄せのぞき込む小司先輩に驚き少し体を震わせてしまう。

「いやちょっと気になることがあって……って、その格好は」

「あ、どうっすか、可愛くないですかこの制服……ちょっとサイズがあってないっすけど」

 小司先輩の格好は先ほど体育館で喋っていた女子生徒と同じ格好、ちょっとサイズがあっておらず少しぶかぶかだ。

 小司先輩は一周くるりと回ったり少しぴょんぴょんと跳ねたりしている様子を見て錆月は少しドキッとしてしまう。主に短いスカートのあたりを見て……

「あの、小司先輩やめた方が……」

「『止めるな、今止めたらパンツが見えんだろ。止めるなんてそれでも男か貴様』」

 その声がした方を見ると腕組みをし睨みつけるように小司先輩を見る一号ちゃんがいた。

 無事に学園入れたことに安心したのは一瞬、あきれた表情で錆月は一号ちゃんの目を両手で隠した。

「『あ?なにすんだテメー見えねーじゃねえかお兄ちゃんでも許さんぞこら』」

「そういう目的でスカートをはいてほしいと自分は思っていないから。パンツを見たいなら自分のを見てなさい」

 そうして小司先輩に飛び跳ねるのはやめた方がいいと伝えると少し頬を赤らめ両手でスカートを抑えながら「わかったっす」としゃがみこんだ。

「『……で何でスカートはいてんの?』」

 カナタは今朝の状況を知らないため、あったことを説明した。

「『なるほど……制服が変わったのか、しかもスカートに。やばいやつがこの学園にいるもんだ」

「どういうこと?」

「『スカートをはくってのは法律で禁止されているだろ、法律てのはそう簡単に変えられるものじゃない、その法律を簡単に変えれる存在がこの学園にはいる。これは私たちに見せているんだと思うよ、『自分たちはいとも簡単に法律を変えることが出来ますよ』って感じで』」

 カナタが言うように法律を変えることはできない。禁止されていることが昨日今日で許されるはずがない、しかもこの学園だけと一部だけ。と言うことはやはりいるのかこの学園に簡単に法を捻じ曲げることが出来る人物が。

「だったら好都合だ」

 その人物は昨日の出来事を見て制服をスカートに変えてくれた物わかりのいい人かもしれない、娯楽を求めている人なのかもしれない、だったらこの学園の生徒やこの街に住んでいる人がもう少し娯楽を求めるようになったなら変えてくれるかもしれない、この世界を。

「これから何するか考えてたけど今決まった……これからは人の求めること、願いをかなえることをして皆に希望を持たせる、人助けの活動をする」

「いいっすね、やろうっす」

「『そう言うと思ってカナタちゃん一瞬で組織名を考えたよ名前は快楽堂にしよう』」

「……却下で」「……いやっす」

 その日俺たちは快楽堂(仮)を作り人々を助ける活動をすることに決めるのであった。

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