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星間戦争史 ―人類は再び星々に国境を引く―  作者: 三田来栖
第二部 「機動艦隊、出撃」

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第七話 「問われる大義」

私生活が忙しくなり、しばらく投稿できず申し訳ないです……

◆会談から二日後――


連邦標準時

2314年5月16日 14時30分


プロキオン星系 第三惑星「アーユシュマーン」

低軌道上 ヴィシュヌ宇宙港


アルマンド・バルデス中将



 バルデス率いる第二艦隊と使節団は、無事に会談を終えて、新たな同盟者を迎え入れることに成功した。


 第二艦隊はプロキオンの第一戦隊と共に、次の目的地であるイプシロン・エリダニ星系に向かう準備を進めていた。


「改めてよろしくお願いします」


「いえいえ、とんでもない! 既に伝わっているかもしれませんが、第一戦隊は我らの親善訪問にご同行の後、我が母港『コロナ・カエリ』にて改修工事を受けていただきます」


 バルデスがデーシュムク大佐――プロキオンの第一戦隊指揮官に握手の手を差し出そうとしたが、咄嗟に手を引き胸の前で合掌した。


「ああ、無理に我々に合わせなくてもいいですよ」


「いえ、ここはプロキオン星系ですから。郷に入ってはなんとやらですよ」


「あなた方の誠意は会食で十分伝わりましたから!」


 デーシュムクがバルデスに対し笑顔で右手を差し出した。


「これでようやく我々が同盟国になったような気がします」


 バルデスはぎこちない笑顔を浮かべつつ、デーシュムクと固い握手を交わした。


「それで、こちらが我々が収集した情報です」


「イプシロン・エリダニ星系の情勢をまとめたレポートです」


 デーシュムクが端末を操作し、バルデスの端末に送信した。


 バルデスはしばらく端末を眺めてから再び口を開いた。


「ふむ、なるほど」


「……彼らはあなた方に対して我々以上に慎重な対応をするでしょう」


「これを見る限りはそうでしょうね」


「彼らはあなた方の太陽系での行いを詳細に把握しています。彼らは我々以上に法と道徳を重んじる」


「会談は査問会のような雰囲気になりうる、と」


「ええ、そう思います」


「しかし、プロキオンからも外交官を付けていただけるのでしょう?」


「はい、もちろんです。可能な限りあなた方のフォローはしますが……」


 両者の表情が僅かに曇った。


「現地での世論は自由恒星同盟への評価はやや否定寄りの賛否両論ですね」


「具体的には同盟支持四十二%。反対四十五%。保留十三%と言ったところです」


「まさに賛否両論だな。今度は作法を覚えるだけでは済まなそうだな」


 不意に現れたデメテルの補足を受けバルデスが感想を述べた。


「ええ、地球からのプロパガンダも大いに影響しているでしょうが、同盟の大義が試されるでしょうね」


「提督、デーシュムク大佐。まもなく出航時刻です。乗艦にお戻りください」


 デメテルが事務的な口調で告げた。


「ああ、では大佐、向こうでまた会おう」


「ええ、それでは」


 二人は互いに敬礼を交わしてそれぞれの乗艦に向かって歩き出した。


◆ほぼ同時刻――


連邦標準時

2314年5月16日 14時35分


イプシロン・エリダニ星系

第三惑星「ブラウボーデン」 閣議室



「どうやら、自由恒星同盟は辺境星系への親善訪問とやらを始めたようです」


「そしてプロキオン自治政府は地球連邦を離反し同盟に加盟したようです」


 閣僚の一人が冷淡に、そして短く報告をした。


「そうか、案外早かったな」


「首長、我々はどうします? 彼らがこちらに来るのも時間の問題でしょう?」


「一応、迎える準備くらいはしておけ」


「星系内の警戒態勢を最大に引き上げて、な」


「では第二戦隊をJPに待機させましょうか?」


「ああ、そうしてくれ」


 首長席に座る細身の男が、眉一つ動かさず短く答えた。


 そして、別の閣僚が端末の資料を見ながら報告する。


「……例の税務書類改竄の件ですが」


「やはり、リークの発信源はシリウス星系で間違いなさそうです」


 短い沈黙。


「なるほど、腐敗を暴いた解放者、か」


「それとも巧妙な扇動者なのか」


 誰も答えない。


「どちらにせよ――」


「真相は彼らに直接尋ねた方が良さそうだな」


「それに、我々の将来にも深く関わる事案だ」


「歓迎の準備は不要だ。質問事項を整理しておけ」


「ええ、今回の件は民衆の関心も高いですからね」


 閣僚たちが頷き、首長の側近が口を開いた。


 首長は椅子にもたれながら手元の資料を熟読し始めた。


 まるで、何かを吟味するような目つきで――


ブラウボーデン 首都「アイゼンシュタット」


 惑星首都の中心街では、顔面に薄型のフィルターマスクをつけた市民たちが行き交い活気に満ちていた。


 現地は丁度、昼休みを過ごす人々が各々飲食店へ向かう時間で人通りが多かった。


 そして、彼らは一際大きなビルの壁面に埋め込まれた巨大モニターを眺めていた。


 市民の視線の先のモニターに映るニュースキャスターが、緊張の面持ちで情勢を伝えていた。


「速報です。太陽系で未曽有の悲劇が起こりました」


「タイタン、火星、地球の軌道施設が艦隊の襲撃を受け壊滅しました」


「一連の攻撃の死傷者は六十万人以上と見られており、地球連邦の直轄艦隊も致命的な被害を受けた模様です」


「攻撃を行ったのは、シリウス自治政府の防衛艦隊で、彼らは自由恒星同盟を名乗り、各自治州への加盟を呼びかける声明を発表しました」


「イプシロン・エリダニには地球連邦、シリウス自治政府の双方からの連絡船が到着しており、アイゼンシュタット宇宙港は一触即発の緊張状態になっております」


「それでは続報をお待ちください」


 街頭モニターの前では、足を止めた市民たちが不安げにその映像を見つめていた。


 中には自由恒星同盟の声明に耳を傾ける者もいれば、顔をしかめる者もいた。


「六十万人だって?」


「連邦の悪事も見過ごせないが、これはやりすぎじゃないか?」


「民間人だっていただろうに」


「とはいっても連邦のプロパガンダだって含まれてるだろ?」


「だが、これで我々も独立できるかもしれない」


「俺たちも独立戦争に巻き込まれるんじゃないのか?」


「だが連邦艦隊も壊滅したなら今が絶好の機会だろ?」


 市民の反応は様々だった。


 宇宙港周辺では警備ドローンの数が通常の三倍に増え、連邦船とシリウス船の双方に武装監視艇が付き添っていた。


 百年以上平和だった宙域が、かつてない緊張感に包まれていた――

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