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星間戦争史 ―人類は再び星々に国境を引く―  作者: 三田来栖
第二部 「機動艦隊、出撃」

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プロローグ 「シチリアにて」

第二部スタートです!よろしくお願いします!


西暦2087年7月28日

現地時間17時40分


シチリア島 パレルモ 旧市街

欧州統合軍 前線司令部


戦術神経工学局 技術主任

ディーナ・ルチアーノ少佐



 白壁の建造物には無数の弾痕が刻まれ、石畳には崩れた瓦礫と焼け焦げたドローンの残骸が散乱している。


 かつて美食と観光で知られたシチリア島は、今や北京条約機構軍と欧州連合軍が激突する最前線となっていた。


「敵のドローンが防空網を突破したぞ!」


「このエリアもすぐにドローンが殺到するぞ!」


「機材を纏めて撤退だ! 急げ!」


「少佐もお早く! ここはもう危険です!」


 下士官たちが急かしてくる。でも……


「分かってる! でもこれを敵に渡すわけにはいかないでしょ!」


「なら、それはもう破壊してください! 少佐まで死ぬ必要はありません!」


「駄目よ! これは戦況だけじゃなく、人類の未来をも切り拓いてくれるはずなの!」


「敵が来てます! お早く!」


 下士官たちの焦りがひしひしと伝わってくる。


 でも、私は眼の前の機械――神経接続型ネットワーク端末――を守らなくては。


 急ぎ足で機材の電源を落とし、外の車両に積む準備をしている。


 しかし――


 甲高いプロペラ音。


 自爆ドローンがすぐそこまで来ている。


「来たぞ! 時間を稼げ!」


外で兵士たちが、散弾銃やマイクロ波指向器を空に向けている。


「あと少し――」


 外はドローンの残骸が落下する音や銃声が次第に増えていた。


 もう少しで最後の機材を運べる。


 ――刹那。


 外からの銃声が大きな爆発音でかき消された。



◆二時間後――


 シチリア島に援軍が到着し、敵はこの島を放棄して撤退した。


 西からスペイン軍が到着し、イタリア半島へ撤退したイタリア軍と合流を果たした。


 瓦礫と死体のみとなった前線司令部に、イタリア軍の将兵が到着した。


 しかし――


「少佐も戦死か。あと少しだったのにな」


「遺言通り、遺体は研究施設に――」


「――いえ!バイタルあります! 少佐はまだ生きてます!」


 兵士がディーナの首に指を当てて、脈を測っていた。


「急いで搬送しろ! ルチアーノ少佐を死なせるな!」



 ディーナは、すぐに沿岸に停泊していた強襲揚陸艦に後送された。


 しかし、何日経っても彼女の意識は戻らなかった。


 二週間後、ディーナ・ルチアーノ少佐は植物状態と診断された。


 だが、彼女は遺言を残していた。


 曰く、「私の遺体は科学の為に余さず使え。倫理は多少無視しても構わない」と。



 遺言通り、植物状態となったディーナの体は科学技術の発展に活かされた。


 当時はまだ臨床試験段階にあった、低温睡眠技術の被検体として――


 彼女や他の被験者の功で、低温睡眠技術は実用化された。


 それは、一部の富裕層や宇宙での長期任務を行う人員の為に使われた。


 彼女のポッドは、イタリアがシリウス星系に移転した後も極秘で保管され続けた。


 彼女は、それから二百年以上先で再び【検閲済み】の為に貢献することになる。

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