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その男、紀元前

「お?出てきたか。待ってたぜ。」

 厳重に周りを囲まれた建物。犯罪を犯した者達を収容する監獄。そこで如月が出てきた男に向かって言葉を放つ。


「…誰だ?俺は今機嫌があまり良くない。今回は見逃してやるから消えろ。」


「おいおい、折角迎えにきてやったのに…つれないことを言うなよ。」

 如月が魔力を放ちながら言う。


「…くっ…この魔力、貴様国家魔導師か。俺を閉じ込めた国に尻尾を振る国の奴隷だな?。」

 対する男も魔力を放ち如月に対抗する。溢れ出る魔力は如月のものより研ぎ澄まされていた。


「俺は国の奴隷になんてなったつもりはねーよ。お前生き方が下手すぎるだろ。それにしても…くくっ、流石だな。俺の魔力を浴びて動じずにさらに魔力で上書きをしてくる。人類初の男よ。」


「俺にも名前がある。『無藤海里』って名前がな。それなのにお前らは俺を人類初の男だの、紀元前だの、好きに呼びやがる。それが…許せない!。」

 さらに魔力を放ちその魔力によって来ていた囚人服が弾け飛ぶ。


「…これは雅を置いてきて正解だったな。…落ち着けよ無藤。俺は話がしたいだけだ。それが無理なら…」


「やるってのか?。……やめとこう。貴様は強そうだ。俺もただでは済まんだろ。」


「(冷静さもあるか。資料では中々の切れ者だって書いてあったしな。なるほど適任かもしれん。)それじゃあ俺の車に乗れよ。そこで話をしよう。あんたのこれからも話だ。」


「…分かった。俺をどうするつもりか聞かせてもらおう。」


 ーーーーーーーーーーーーーーーーー


「なんかさ今日新しい先生が来るらしいよ。」

 全星寮で朝食を摂りながら重が言う。その顔は自分の話を聞いて欲しくてたまらないといった表情だった。


「ん?そんな話どこで聞いたんだよ?。俺は初耳だぞ?。」

 その言葉に反応して剣が返す。しかし剣の場合は起きていない間に起きたことの可能性のあるため知らないことは結構多い。


「私も始めて聞きました。それにこの時期ですか?。タイミングが少しおかしいような…?。」

 澪の言うことも最もであった。通常新任の教師がいる場合始業式で着任の挨拶があるはずである。この学園でもそれは例外ではなくつい先日始業式が行われたばかりである。


「なんでも突然決まったらしいね。噂になってるよ。」

 キッチンで片付けをしていた若草が席につきながら言う。


「なんだ、知ってたんですね。昨日職員室でたまたま聞いた新鮮なネタだと思ってたんですけど。」

 がっくりと肩を落としながら重が言う。


「僕は情報通だからね。それに情報は鮮度が肝心だ。…それじゃあ重くん、その続き、これは知ってるかな?。その話を持ってきたのは如月花月さんだと言うことを。」

 重の情報に追従するように若草が新たな情報を提供する。


「え!あの人がですか?。」


「如月さんって夏休みに会った方ですよね。国家魔導師の。」


「…ってことはかなりやる奴なのか?。」


「んー、残念ながらまだその情報は入ってないね。」

 若草が顎に手を当てながら応える。若草が入手できた情報は如月花月が推薦した新任の教師が着任すること。そして…


「これは…噂の噂なんだけどねその人は『人類初の男』とか『紀元前』とか呼ばれてるらしいよ。」

 新しい先生の2つ名らしきもの。


「人類初の男?紀元前?随分とかっちょいい名前だな。特に…」


「なんだがあれですね、なんと言うか微妙だよね特に…」


「「紀元前が。」」


「「…………」」


「「…はぁ?」」


「剣何言ってんの?。普通にないでしょ。骨董品みたいじゃん。」


「お前こそ男か?。紀元前といえば恐竜。そらすなわちめっちゃカッコいいだろ。」

 お互いの意見が対立しヒートアップする重と剣。そのためか周りが見えていない。若草と澪の姿は既になかった。


「…ったく、…ん?あれ?大樹さん?澪ちゃん?何処に…‼︎。」

 その事態に先に気づいたのは重。慌てて自分の部屋に戻る。


「なんだよあいつ急にどっか行って。トイレか?。それしてもロマンのわからん奴だな。」

 一方の事態に気づかない剣は新聞を読んでいた。


『ドドドッ‼︎』

 重が部屋から走って来る。


「おい、なんだよ、なんでそんなに…って!お前!自分だけ…」

 部屋に飛び込んできた重を見た剣。次の瞬間には顔色が変わる。制服を着用していたのである。そして慌てて時計を確認する。そこに示されていたのは中々致命的な時間だった。


「んじゃお先でーす。」

 制服に着替えた重が剣に敬礼をする。そして意気揚々と走り出したのだ。


「……まだやれる!。」

 剣は猛ダッシュで用意を済まし寮を出る。果たして間に合うのか⁉︎。









「廊下で立ってろ。」


「…はい。」


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