澪、買い物をする
「これなんかどう?。澪ちゃんの雰囲気に合ってると思うよ。涼しそうだからこれからも着れると思うよ。」
「…ちょっと肩が見えすぎな気がするんですけど。」
『ガヤガヤ…』
都会の喧騒。澪、草薙の2人はとあるシッピングモールにやって来ていた。学校が始まってしまえばこの様に服を見に行く時間は取れない。そこで今回服を買いに来たのである。花凛にも連絡を取ろうとしたのだが電源が入っていないとのことだった。普通のことである。
「そんなことないと思うけどね、澪ちゃんせっかく可愛いのに。あ、でもその…重君は…」
澪がお洒落をした場合それを1番多く目撃するのは当然全星寮の面々である。その中には草薙が想いを寄せる重もいる。草薙が突然まごついたのも仕方がないことである。
「ふふふ、わかっています。確かに重さんは素敵な方ですけど、あくまで私のは尊敬の念です。」
澪が草薙に告げる。自分のは恋愛感情ではないと。
「…本当に?。」
持っていた服で顔の下半分を隠した草薙の声は小さめである。先程言った言葉に偽りはなく澪のことを可愛いと思っている。その可愛い澪が重と1つ屋根の下で暮らしている。草薙の不安も最もである。
(…可愛い。その感じで重さんの前に出ればいいのに。重さんの前だとしっかりし過ぎてる感じがありますからね。隙がなさすぎて。)
一方の澪はそんな草薙に対して心の中で賞賛とダメ出しをしていた。
「本当です。安心してください。」
「そう…よかった。…おっと⁉︎。」
心底安心した様子の草薙。安心のあまり手を持つ服を落としそうになる。
「危ないですよ。…そうですね、その服を買いましょうか。お会計をしてきますね。」
改めて服を見て購入を決める澪。
「ん、わかった。店の前で待ってるね。」
一旦別れる2人。しばらくして澪が店の袋を持って出てくる。
「お待たせしました。この店でもこれ、貰っちゃいました。」
そう言い澪がかざす手には5枚の紙。
「あぁ、くじ引き券?。今までのと合わせて18枚か。3枚で1回だからちょうど6回引けるね。それじゃあそれを引いて帰ろうか。」
ポケットから紙を取り出しす草薙。それは澪の持つ紙と同じものだった。
「そうですね、えーと場所は…」
くじ引きを行う為会場を探す澪。
「あ、あそこだね。いこう。」
連れだって会場に向かう澪と草薙。そこには既に人が並んでいる。
「何が当たるのでしょうか?。」
「んー、特等はもう無いっぽいね。一等からはあるね。主に…食べ物かな?。」
草薙が会場の壁に掛けてある景品表を見ながら言う。特等のところにはばつ印がつけてある。
「そうですか、…取り敢えず並びましょう。」
列に並ぶ2人。列は思いの外早く流れていく。そして2人の番になった。
「それじゃあ1人3回、引こうか。」
くじ引きの箱に手を入れ券を取り出す。
「はずれ、はずれ、あ!、2等が当たりました。」
「はずれ、お、3等、5等。悪くないんじゃない。」
2人は引いたくじを開けて中身を確認する。
「はいよ!。先ずは、はずれ3つ分のティッシュ。そんで5等が野菜詰め合わせ。3等が海鮮詰め合わせ、2等が蟹一杯だ。」
2人のくじの結果を確認した係員が景品を手渡してくる。
「うわっ、凄っ。蟹1匹丸ごとだよ!。」
「凄い量ですね。…そうだ、是非食べに来てください。今夜は鍋にします。」
澪が携帯をいじりながら言う。若草に事の次第をメールしているのだ。
「え⁉︎そんな迷惑じゃないかな?。」
「大樹さんもほら!『腕が鳴るね。鍋と言えば若草大樹の出番だよ!。草薙さんも誘うといい。出汁をとるからこれで。』って返信があったし全然大丈夫ですよ。」
早くも若草から返信があり、すぐに出汁の準備を始めたようである。
「そう?それじゃあお邪魔します。」
この後若草謹製の鍋を食べその味に驚いたのは当然の話である。




