剣の可能性
「…L4『風斬りの大剣』、L3『風槍』…」
剣の両手に風を纏った武器が現れる。大振りの剣と細く鋭い槍。2つを手に剣は自然体で立ち尽くす。
「……ふーーーー…」
そして静かに息を吐く。まるで何かのタイミングを見計らっているかのようであった。
(…くるか?。いつも出来た時は直感だった。まるで初めから知っていたかのように体が動いた。…今その感覚はない。だがそれが出来るようにならなければ俺に先はない。重のやつは何か思いついた顔をしていた。俺も…こんなところで止まってられねーんだ。)
「…いくぞ、ごうせ…」
「ヤッホー‼︎」
『ドンッ‼︎』
「い⁉︎…」
高まった集中。そこから新たな武器合成を行おうとした瞬間背中に衝撃が走る。極限まで高めたはずの集中が何者かに妨害される。それにより剣の両手の武器は霧散する。
「遊びに来たよ剣君!。聞いて聞いて…って何してたの?。」
剣の気持ちなど露知らず花凛が剣に声をかける。
「んぁ?あぁ…たった今、お前が邪魔をするまでは新しい合成を試してたんだよ!。いざ本番って時にお前はよぉ。 てか前にも言ったけどお前力強いんだよ!。首むち打ちになるだろ!。」
声で花凛だと判断した剣は声に怒りを含ませ花凛に振り向く。
「私が来るまではってことはもうしてないんだよね。じゃあ一緒に遊ぼうよ!。」
「俺の話聞いてたか?。…はぁ、まぁお前はそういう奴だもんな。」
「お!流石剣君、私の事分かってるね。このこの!。」
花凛が肘で剣をグイグイ押す。
「だからやめろって。…そんで?何しに来たんだ?。何か話があったんじゃねーのか?。」
気をとりなおし話を続ける。花凛とつきあっていくなかである程度話をスルーする術を身につけていたのだった。
「んーー?、何だったかな?。」
「え、お前頭大丈夫か?。ほんの数分前まで覚えてただろ!。」
「えーと、あ!そうだ!。今度ね私に二つ名がついたんだよ!。『霧隠し』だって。何かミステリアスだよね。」
「そうか、お前も二つ名持ちか。まぁそれまでついてなかったのが不思議なくらいだったからな。やる気を出せば取れるだろうな。」
花凛の言葉を聞き剣が漏らす。花凛は本来早々に二つ名を得るはずの実力なのだが本人の性格もあって取得に至っていなかった。しかしコンビトーナメントでの戦いで改めて評価され二つ名獲得に至ったのだった。
「ふふん、もっと褒めても良いんだよ!。ほらほらー。」
まるで犬のように剣にじゃれつく花凛。その大きな体も相まって大型犬の様相を呈していた。
「ええい!うっとおしい。離れろ!。」
「仕方ないな〜。それで剣君は新しい合成を試してたんだよね。…なんで?。」
剣の我儘を聞いてやるかのように花凛が剣から離れる。そして疑問を口にする。
「なんでって…それはあれだろ強くなるためだろ。俺が強くなるには新しい合成を可能にするしかないからな。」
花凛の質問の意図を図りかね剣が顔をしかめながら言う。
「なんで合成を試すの?。決めつけるの?。剣君には他にもできる事あるよね。」
「剣君凄いもん。万能型でしょ。なんで武器錬成だけやるの?。」
花凛が不思議そうな顔をして質問を重ねる。
「……ははっ、そうだな、そうだ。俺は……馬鹿だな。」
花凛の言葉に初めは怪訝そうな顔をしていた剣。しかしある時から何かを閃いたような顔つきになる。
「…二つ名に踊らされてたか。何も俺は武器錬成だけの男じゃない。俺は全てをこなす男だ。武器の合成で行き詰ったなら魔法のレベルを上げてやる。L5の放出系、それを使えるようにする。」
改めて自分の進むべき道を見つけた剣。周りからの評価によって自分自身の可能性を狭めていたことに気がついたのだった。
「おぉー!。剣君燃えてるねー。でもね、私お腹空いちゃった。なんか食べに行こうよ!。」
「はいはい、んじゃ一回帰るか。確か寮に何かあった気がする。」
「やたー!。お兄の料理が食べれる!。」
2人で全星寮に戻る。しかしそこで生徒会から迎えに来た風待によって連れ戻されるのは当然のことである。




