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悪女の呪いが解けたのでもう構わなくて大丈夫です旦那様  作者: 獅子十うさぎ


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17. 面と向き合って



「あの…ご歓談中にすみません。アッシュ様、少しだけお時間頂いて良いでしょうか?」


「?」


声を掛けられ、アッシュはユーゾフとの戯れをやめて目を向ける。

そこに居たのは低姿勢で申し訳なさそうにしている小柄なメイド1人。


「お前は確か…ジュマだったな。どうした?」


エルネスト侯爵家から来たメイドなのに名前を覚えていてくれた事に恐縮しながら、ジュマはアッシュを信用できると踏んで身を乗り出した。


「その、リーフィニア様の事でお話ししたいことがありましてっ」


まさに今探りを入れている最中のリーフィニアに関する話とあらば聞かないなんて選択肢は無い。

アッシュもユーゾフも真っ直ぐに向き直って話を聞く姿勢をとった。

聞いてもらえると分かったジュマはしどろもどろに話し出す。


「えと、わたしは…4年前からリーフィニア様付きのメイドとして働かせてもらっているんです。それで、その、働き始めたばかりの頃のリーフィニア様なんですが…とても、本当にとてもお優しい方だったんです」


4年前は優しかったと知り、アッシュとユーゾフは互いに目を見合わせて空耳では無いことを確認した。

驚きつつジュマに視線を戻して続きを促す。


「わたしはまだ仕事にも不慣れな子供で、失敗ばかりだったのにリーフィニア様は温かく対応してくださりました。誤って花瓶を割ってしまった時も、自分がうっかり割ってしまったんだと罪をかぶってくださった事もあります。泣きそうな時にも何度も慰めてくれました」


先日までのリーフィニアからは想像もできない話に耳を疑うばかりだ。

ジュマは徐々に話の核心に迫っていく。


「ですが3年前…突然リーフィニア様は変わられてしまったんです。あんなにお優しかったのに、人が変わったように粗暴になってしまわれました」


「! 突然…?」


「はい。あまりの変貌ぶりに、屋敷の者たちも精神の病などを疑ったくらいです」


元々は悪女ではなく、突如そうなったという話にアッシュもユーゾフも驚きを隠せない。

泣きそうな表情でジュマは顔を伏せながら続けた。


「でも、お医者様に診てもらっても異常は無くて…お屋敷の人達もこちらが本性だったのだろうと1人、また1人と失望していきました。わたしも、きっとそうなんだろうと諦めかけていたんです。ですが…」


バッと顔を上げ、必死にジュマは訴え出す。


「今また、リーフィニア様は変わられました!まるで以前の頃に戻ったみたいに!わたしは…わたしには今のリーフィニア様こそが本当の姿のように見えるんです!ですから、お願いですっ。アッシュ様はリーフィニア様を嫌ってらっしゃるかもしれませんが…どうか、どうか…!」


伝えたい気持ちの方が先走り言葉に詰まってしまうジュマ。

けれども何を言いたいのかある程度理解したアッシュは、仕方がないといった風に笑んだ。


「了ー解。ちゃんと向き合ってみるよ」


こんなにすんなりと話を受け入れてくれるとは思わずジュマは驚きに目を見張る。

ジュマがここへ来てから知る限りだけでも拒絶するに充分な扱いをされていたというのに。

自分から頼みに来たとはいえここまで器の大きい相手だとは思っておらず逆に動揺してしまう。


「ほ、本当ですか?」


「ああ。こちらとしても真相究明したいと思ってたしな。案内頼めるか?」


「はっ、はい!」


即時行動に移す事に仰天しつつリーフィニアのいる場所へと向かい出すジュマ。

続けて歩き出したアッシュの横に連れ立ってユーゾフもトコトコと付いてきた。


「兄上、おれも行く!」


「別に良いけど暴走すんなよ?」


「さすがにさっきの今だから大人しくするよ…」


先程のやり取りを思い出してユーゾフはまた顔から湯気を出す。

それでもリーフィニアの真相を知りたい好奇心の方が勝り、アッシュが戻るまで待つ気にはなれなかった。


ジュマの案内のもと、長い廊下を歩きエントランスから外に出る。

予想していた通りリーフィニアが居たのは庭園のガゼボだった。

花を眺めて気持ちを落ち着かせていたリーフィニアは人の気配に気付いて顔を向ける。


「あ、ジュマ。もう用事は済ん…え!?」


ジュマだけが戻ってきたと思っていたリーフィニアは、アッシュ達の姿を見て慌てて立ち上がった。

ガゼボの数段しかない階段を登りながらアッシュが話し掛ける。


「悪いな、急に。少し話したいんだけど…良いか?」


「は、はい!何でしょうか…旦那様」


「ぐっ」


やはり現在の愛らしい姿からの旦那様という単語は破壊力が凄い。

アッシュは軽く咳払いして誤魔化す。


「…無理にそんな呼び方しなくて大丈夫だ。アッシュでいい」


「あ、はい。…アッシュ様」


きっと自分に旦那と言われるのが嫌なんだろうと少し落ち込みながらリーフィニアは名前呼びに切り替える。

アッシュは冷静さを取り戻しながらリーフィニアを見据えた。


「それで、だ。リーフィニア」


初めて名前を呼ばれたのと真剣な眼差しを受けて一気に緊張するリーフィニア。

テーブルに手を乗せながらアッシュは早々に切り込んだ。


「単刀直入に聞く。…どっちが本当のお前だ?」


「!」


どっちが、というのがどういう意味かなんて聞き返さなくても分かる。

それでもまさか現在と以前の自分を別物として見られているなんて思わず戸惑った。

答えを返さないリーフィニアにアッシュは続けて言う。


「はたから見ればおかしいと思うかもしれないが…俺はどうしてもこないだまでのお前と今のお前が同一人物には感じない。それにさっき、ジュマからお前が突然豹変したって話も聞いた。どういう事なのか、お前の口から話してくれないか?」


ジュマは少し用事があると言って自分から離れたが、アッシュにその話をする為だったのかとここで納得する。

そしてジュマの話を聞いて直接自分のもとに確かめに来てくれたんだというのも分かった。


アッシュは自分の夫となった訳だし、しかもこうして面と向かって話を聞こうとしてくれている。

ならば嘘だと疑われる可能性があっても話すべきなのではとリーフィニアは判断した。

静かに息を吐き、覚悟を決めて顔を上げアッシュと目を合わせる。


「…信じてもらえないかもしれませんが……これまでの言動は、全て私の意思ではありませんでした」


その場にいた全員が、リーフィニアの発言を聞いて小さく息を呑んだ。





ご評価ありがとうございます!!


力を貰えましたので、より一層執筆頑張ります!!



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