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死ねない私の鉄のテディベア  作者: ノイズマリー
おかえりが聞こえない
8/12

8 to do:2 説教


 霧の東側、外との境目にそっと立つ。カインが一歩遅れて隣に並んだ。

 やっぱりこちら側には敵の姿はない。


 ほっと息を吐いた。


 どの方向へ行こうか、スモークはどこで焚くのが効果的か考えていると、急にカインが私の顎を掴んだ。

 正面に向けたあと、右に向かせた。私の顔に何かついているのか聞こうと口を開いた瞬間に、カチッと乾いた音がした。

 直後、耳の下、首の付け根に何かがグサリと刺さる。


「痛った!」


「投与完了:体内ナノマシン上位制御型」


 カインの手には大きな注射器。


 信じられない思いでカインを見上げる。

 反射的に瞬きをしてから、やっと声が出た。


「それ、投与前に言ってくれない!?」


「了解」


 どうしてこれに限って事後報告なんだ。私は注射が大嫌いだって、知ってて不意打ちしたんじゃないのか。

 ズキズキするそこを押さえる。

 うめき声ともため息ともつかない声が漏れて、無理やり気を取り直す。


 慎重に数メートル進んで、周囲を確認する。

 ヘルメット内の通信機が回復しかけているのか、ブツブツと音がし始めた。


 この状況のせいかさっき投与された上位ナノのせいか、胸が高鳴る。


 カインに合図をすると、スモークを投げた。

 煙が広がるのを確認し、一気に崖の淵まで駆ける。


 自分の脚じゃないみたいに速い。心臓が強く脈打つのに、息は乱れない。

「これ、さっきの上位ナノのせいでしょ。でもあとで説教だからね」


 まだ途切れがちな通信にカインの声が入る。


「敵車両1台:連携対象を捜索開始」


 振り返り、シールドを展開して身体を屈める。

 一拍遅れてエネルギーとナノマシンの鎖が機銃の弾を受け止めた。


「……これ、いいな」


 連射機銃なのに、衝撃が小さい。

 仕組みはよくわからないけど、これ、金属の盾よりも良いかもしれない。

 少し心配していたけれど、エネルギー残量の減り方も問題無い。これならまだ耐えられる。


 ドライバーもガンナーも私に引きつけられている。

 車両が霧の横を通るタイミングに合わせてカインが動いた。


 カインの足が地面を蹴るたび、鉄の塊を殴りつけるような音を立て、踵のジェットが草を焼きながらそれを押し出す。


 ……力技の走行システムだと思う。もっとスマートな推進方法は無かったのか。


 それでも、カインの重そうな鉄の身体が弾丸のような速度で射出され、車両側面に飛びつく。

 射線が私から逸れた。カインに気付いたんだろう。でももう遅い。


 盾を構えながら後ずさって、低い崖の向こうに飛び降りた。

 次はカインの番だ。


 強い衝撃が金属に叩きつけられる音が響く。

 背面ドアの破壊。……殴っているのか、蹴っているのか。そういう音だろう。


 空気の振動が1発1発の重さを伝えてくる。4発目で、金属が限界を迎えた音。


「カイン、大丈夫……?」

 恐る恐る通信を飛ばす。


「現在背面ドア破壊中。破損部より拡張。」


 続く金属がねじれる嫌な音が耳に突き刺さり、鳥肌が立つ。


 それに被さる敵兵の叫び声。

『おいおいおい! 敵は1人じゃねえのかよ! ロボがいるなんて聞いてないぞ! 振り落とせ!』

『リーダー早く来てくれ! 早く! ケツから入られる!』


 通信と通信の外側、両方からタイヤが激しく暴れている音が聞こえる。

 次いで小銃の音と、2人分の何かが砕ける不穏な低い音。


 崖から車両が飛び出してきて、目の前で車体を揺らして着地した。


「制圧完了」


 運転席から立ち上がったカインの姿を見て、いつの間にか小さく止めていた息を吐いた。


「っ‥‥、よくやった‥‥カイン」


 喜ぶのはまだ早い。

 でもこれで戦力は半分に削った。



読んでくださってありがとうございます!

外見だと違いが分からないけど内側で機構が変わるタイプの◯◯モードが好きです。

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