↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
22/24

かわいいVS銀の弾丸

フレイアは、背筋を伸ばして、尻尾は揺らさずに、静かに立っていた。プラウトラから取り出した銃をこちらに向け、黙って僕が動くのを待っているようだった。

彼女の威圧感は、尋常のそれではなかった。


僕は気圧されて、とても動けそうになかった。動いたら殺されるかもしれない。そんな恐怖感が、ぞわぞわと僕の心を脅かしていた。


「えっと、どうすれば……?」


辺りを観察しようと視線を泳がせても、青い障壁の外を見通すことは出来ない。姉妹がどこにいるのかすら確認できず、孤独から不安な気持ちが押し寄せてくる。


「貴様も武器を出すといい」


「戦わなくちゃいけないんですか?」


彼女は何も答えない。

……つまり、沈黙こそが答えだと示している。


どうする……? フレイアと、本当に戦わないといけないのか? ”銀騎士”を拝命しているらしい、その彼女と?

彼女は”試す”と言っていたけど、それは”命までは取らない”という意味なのかもしれない。ボコボコにされて、ボロ雑巾のように放り捨てられることだって……あるかもしれない。


僕は唇を噛んだ。

怖い。


どうして戦わなきゃいけないんだ。戦いは、命の取り合いだ。

どちらが早く走れるか決めよう、とか、そういう軽い話じゃないんだ。


とはいえ、話してどうにかなるのか?

……ならない。なるわけがない。フレイアと知り合ってからわずかな時間しか経っていないけど、それでも彼女が冗談を言うタイプには思えなかった。


僕は耳に手を当てて、天使の輪を取り出した。

フレイアは眉一つ動かさず、静かに肩を引いた。


「貴様は全力でかかってくるといい。私を殺しても構わん。罪に問うものはいない」


「罪にはって言われても……そんなこと、できないよ」


「それが”決闘”というものだ」


彼女は言い切って、ふうと一つ息を吐いた。

辺りに満ちる緊張感が極限まで達したときーー彼女が、銃の引き金を引いた。


「ッ! 護って!」


彼女が撃つよりも少し早く、僕は叫んだ。爆発音が辺りに残響し、次に少し遅れて、パキィン! と甲高い音と共に、目の前で光が弾けた。


「っぶな……ちょ、ちょっと、人に向けて撃ったらヤバいよ!」


フレイアは鼻で笑って、銃をくるりと回した。

それから彼女は肩を少し下げて、構えを変えた。


「”赤の弾丸(レッドフィルム)”!!」


フレイアがそう叫ぶと、彼女のプラウトラが呼応し、唸りを上げるように強く光った。“ガキン”と金属が動く音と共に、義手の甲から薬莢が一つ飛び出した。

彼女はそれを逆の手で掴み取り、流れるように銃に装填、引き金を引いた。


赤い魔法陣が彼女の前に現れ、鋭い衝撃波と共に赤い弾丸が真っ直ぐに、こちらに向かってくる!

僕の前で回転する天使の輪が、それを弾こうと魔法陣を展開するが、しかしーー


「は、弾けない!?」


そうーー

弾丸は金属を削るような音を轟かせながら、一向に弾かれることなく、天使の輪が展開する魔法陣にぐりぐりと、頭をめり込ませている。このままだと、僕の身体ごと貫いてしまうかもしれない!


かと言って、力を抜いて回避行動を取ろうとしたら、僕が動くよりも早く着弾してしまうかもしれない。

だったら……!!!


「”押し返せ!”」


僕が叫ぶと、天使の輪は金色に発光し、激しい衝撃派で弾を押し返した。フレイアの方を見やると、激しい風に銀髪を靡かせながら、不敵に笑っていた。

僕の目には、魔力線が2本見えてーー!?


僕は天使の輪を半分に割って”両刃天剣”を抜いた。

直後、何かを弾いた感触が、手にじんと伝わってくる。


周到だ……そう僕は思った。

一発目は、ハナから”弾かれることを想定”していたんだ。相手の技を防いだ瞬間、僕の気が緩むと踏んで、”赤の弾丸(レッドフィルム)”に紛れるように、もう一発を少し遅れて撃っていたんだ。

魔力線が見えていなければ、直撃していただろう。


直撃って……その言葉を反芻して、全身からじわりと嫌な汗が噴き出す。銃弾が直撃するって、つまり、その、”死ぬ”ってコト、だよね……?


「……やはり、解せないな」


「な、なにがぁ?」


恐怖と緊張で息も絶え絶えの僕を尻目に、彼女は義手で顎を撫でた。


「貴様ほどの力を持つものの正体が、まるでわからない。

旋熾亭(せんしてい)”の支局長に問い合わせても、貴様が一度もアルトラを訪れた記録は見つからなかった。

それどころか、”プラウトラの来歴が真っ白だった”と、彼女は首を傾げていたよ」


それは、そうだ……

そもそも、僕が誰なのかは、誰も証明できないだろう。たとえ天使ちゃんがここに現れて説明してくれたとしても、信じられないような話だ。


「見たことのない武器を操り、昨夜見せたあの魔力量も、常人のそれではない。

……貴様は、何者だ?」


僕が何者か。自分でも何度か心の中で問うたし、似たようなことをパイネに言われた。

僕は……そう、何者なのかはわからない。はっきりしているのは、天使と同じ容姿を持った転生者だということだけ。


だから、初めから綺麗に答えられるワケないんだ。

むしろ……そんなことを聞いてくる人が、ちょっとズルく思えるぐらいだ。


「それは、そんなに重要なこと?」


僕は自分に言い聞かせるように、しかしはっきりとフレイアに向けて言葉を発した。

フレイアは顔を上げ、不思議そうな表情をしている。


「何が言いたい」


僕は震える手で、ぎゅっと剣を強く握った。刃をかたどるように輝く白桃色の魔力の光が、わずかに強くなった。


「いや……もっと、もっとさ、重要なことがあるよね。

ねえ、フレイアさん。

僕ってかわいいかな?」


虚を突かれたのか、フレイアの顔が少し引きつった。


「見上げたイカれ具合だな。この状況下で、そんなことをのたまうのか」


「ね、どう?」


剣の輝きは強くなる。


「う、うぅむ……私には、よくわからない。

“かわいい”とか”可憐”という言葉とは無縁の道を歩んできたからな」


「その言葉はさ、確かにフレイアさんの価値観を表したものかもしれない。でもさ、僕が聞きたいことはそういうことじゃないんだよ。

フレイアさんの心は、僕をどう見ているの?」


フレイアは僕の真意が掴めないのか、困った顔をしていた。

やがて大きくため息をつくと、顔を逸らした。


「……かわいい、かもしれない」


「もう、素直に言ってよ……!」


「……かわいい」


ボソッと呟かれたそれは、ぎりぎり僕の耳に届く声量だった。

僕は胸が温かくなるのを感じた。


「ふう。よかったよ。

……僕の思い上がりじゃなくて!」


剣の輝きは更に強くなる。


「覚悟、出来たよ。フレイアさんは素直じゃないけどさ、良い人だから……だから」


言葉を切って、息をつく。

これは”決闘”。だけど、ベットするのは、”命じゃなくたっていい”。

僕は、精一杯の笑顔を彼女に向けた。


「貴女の”誇り”と、僕の”かわいい”をぶつけて、それで終わりにしようよ。フレイアさんの全力を、僕が受け止めたら僕の勝ち。受け止められなかったら、僕の負け。どうかな?」


「構わない。もとより、次で決めるつもりだ」


「うん、ありがとう」


僕は頷いて、剣を左手に持ち替え、目の前でまっすぐ構えた。そして右手で弓の弦を弾くように、ぐいっと右肩を引いた。


アニムスは、”装備者によって見た目や能力を変える、不思議な魔道具さ”というパイネの言葉を思い出す。だから、僕が強くイメージすれば、それはきっと……


分たれた天使の半円の刃は、弧を描いた。


「弓……か」


天の眼(エンテレケイア) !」


周囲に光が満ち、僕の脳裏に”第二の視界”が開かれた。


「魔法は、イメージの力。だから、はっきりと思い浮かぶものの方が、より強くなる……はず。

……だから、ミリーのアイディアを借りるね」


僕たちは構えたまま、相手の動きを待った。

先にフレイアが、銀色の弾丸を装填し、真っ直ぐにこちらを見つめた。


直視する銀の弾丸(シルバーフィルム)!!」


彼女が叫ぶと、銀色に輝く魔法陣から、銀の弾丸が飛び出した。僕の視線はそれに釘付けにされるように、”吸い込まれた”。


「”桜光・瞬き(おうこう・またたき)”!!」


僕は引き絞った弦を離した。空間を切り裂くように放たれた光は弾丸と正面衝突し、銀色と桜色の光が花火のように辺りに拡散した。


そしてーー

射線上に、フレイアの姿は認められなかった。

僕の目には、誰も映っていない。

だけど、もう一つの(エンテレケイア) にはーー


直後、”僕のすぐ近く”で、鋭い音が響いた。

本格的な戦闘描写をしたのは初めてなので、すこしぎこちないかもしれません。

戦闘描写や、展開などにご意見/感想などがございましたら、ご投稿いただけるとありがたいです。

参考にさせていただきます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
script?guid=on
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。