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File006 野性

次々とヴィンスに捕まっていく隊員達を見て、レオンはじっとしてられなくなっていた。

何を思ったのか、ヴィンス率いる鬼を追跡し始めた。

(この距離なら大丈夫だ。見つかっても俺の脚なら逃げ切れる)


「とりあえず右奥へ向かうぞ。何人かいるはずだ」

ヴィンスは、目星を付けて捜索範囲を絞った。


暫く進むと隠れるポイントになりそうな所が多くある所に着いた。

「お前達!!そこのデカい木の所を取り囲め!!誰かいるぞ!!」

「はっ!」

ダダッ

(くっ、なんでわかったんだ)

隠れていた隊員は走りだした。

「ほーーう。本当に居たな。でも、俺の狙いはお前だ。」

ガシッ

「なっ…」

ヴィンスは、大木に隠れてるかどうかわからなかったが、わざと大声で指示をして気を逸らし悠々と岩陰に探しにきたのだ。

ズサーーーーッ

「1 2 3 4 5 お前ら!逃がすなよ!そのまま捕まえろ!」

隊員は必死で抵抗して、振りほどこうとするが、ヴィンスのその手は離れない。

「6 7 8 9 10 上着を脱げ」


(なんなんだあれは?何故わかる?そして逃げてる方だって相当強いはずだ。あの人だけ次元が違う)

身を潜めながらも、レオンは一部始終を見ていた。


「捕まえました!!もう1人居たので二人共!!」


ヴィンスは、少し驚いた様な顔をして指を差した。

「ん?お前、その顔どうした?腫れてないか?」


鬼の隊員が照れくさそうに笑った。

「いや、コイツが暴れた時に一緒に転倒しちゃいまして。ちょっとぶつけただけなんで大丈夫です!」


「そうか。気を付けろ。怪我が増える度に生存率が下がるからな」

あくまで実践を想定した演習である事を忘れない様に指示をした。


開始早々あっという間に、鬼が6人増えたのだ。


「よし、だいぶ味方が増えたな。少し思考を変えるぞ。とりあえず全員あの辺りまで走るぞ。それでだな……」


6人一斉に走り始めた。


(なんだ??向こうに隠れてるやつが居るのか?追ってみるか)


少し遅れてレオンが慎重に追い掛け始めた。

距離を取りながら暫く追跡をしていたが、見失ってしまった。

「どこへ行った?この辺のはずだが……」


ダダダダッ


レオンは、追跡しているつもりが待ち伏せられていたのだ。

「くっ……やべぇ!」

ガシッ

「捕まえたぞ!ルーキー!油断したな!! 1 2 3」


レオンは、身体を大きく振り回して握られた袖を地面に叩きつけた。

「うぉらーーーーー!!」

ズダーーン!!

捕まえた隊員は、転倒して手を離してしまった。

「まだだ!!」

2名の「鬼」が追撃で迫って来る。

レオンは、素早く立ち上がり逆に隊員の方に立ち向かって走る。


「なんだコイツ!突っ込んで来る気か!?来やがれ!!」

ダダダダッ


クンッ

ここだ!!

衝突の瞬間、レオンは身体を下げて急激に脇をすり抜けた。

身構えた隊員は、急に相手が居なくなり勢い余って転倒した。

ズサーーーッ…

その勢いのまま、レオンは走り去った。

「はぁ はぁ危ねぇ!あいつら急に現れたな。 俺の追跡がバレていたのか? はぁ はぁ」


その様子を見ていた、ヴィンスが出てきた。

「おぉー、なんだアイツは?まるで動物だな。力もバネも凄いが、何より切り替えが早い。あれで18歳か。楽しみだな」

最初にレオンを捕まえた鬼が、掴んだ右手を見ながら答える。

「はい、掴んだ瞬間に急激に重くなった感じがしました。0からいきなり100になるイメージです」


「くくくくっそうかそうか。もうちょい、鬼を増やしておくか…」

ヴィンスは、不敵に笑って次なるターゲットを捜し始める。こんな時のヴィンスは、ろくな事を考えていないのを隊員達は知っていた。


ーーーそれから1時間程経過した頃。

鬼は18人に増えていた。

10人くらいで、ヴィンスは抜けると最初に言っていたが何か考えがあるのだろう。


「あと12人か。そろそろ俺は抜けるが指揮は取るぞ。川の方へ行ってみるか。ここからはV字に陣形を取れ」


V字陣形。

1人2m程の幅を保って広がり、外側にいる者が前に出る。18人もいると幅が、40m近くなり、物陰に隠れている者は先頭の鬼の後ろになってしまう為、V字の中に自ら逃げてしまうのだ。


先頭の鬼 (あ…居た。しかし教官は気付かない振りをして暫く進めと言っていたな)


見付かった隊員は助かったと思い、物陰の反対側に移動する。

袋のネズミだ。

隠れた隊員は、最初の鬼の後に1人 2人と鬼が通過することに気付く。

「しまった!!…」

ガシッ ガシッ ガシッ

気付いた時には遅かった。

3人の鬼に服を掴まれている。

必死に暴れ回るが、そのかい虚しく「1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 上着を脱げ」

鬼の隊員は、ヴィンスのセリフを真似た。


ーーーその頃ルーシーは。

「おっ、なんか近くで誰か捕まったな。んーー。こっちに向かってそうだ。スタート地点の方に逃げよう」


ルーシーは、ただ運が良いだけじゃなかった。

「普通は、あの辺に逃げる」

「ヴィンスはそこを狙う」

「そこから捕獲に向かってるから逃げるならこっちだ」


全て予想して、難を逃れている。女性が戦場で生き残る。

実は、誰よりも考えて行動しているのだった。


To Be Continued


次回 鬼ごっこ。いよいよ佳境へ

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