File005 ヴィンス・ヴァンダインと言う名の鬼
まさかの訓練内容に、呆然とする隊員達に更にルールが告げられた。
「鬼は、相手の上着を掴んで10カウントしろ。それまでに振りほどけばセーフだ。無駄に怪我をしても良くないからな。 顔面や金的以外への攻撃はありだ。」
それ……鬼ごっこか??
そんな疑問は拭えないまま、隊員達は真剣な眼差しで聞いていた。
1人を除いて。
「範囲はー?どこまでも逃げて良いの?」
ルーシーだけは、普通に鬼ごっことして受け入れて質問した。
ヴィンスは、辺りを指差しながら説明を始めた。
「そうだな。まず、ここより下山はしないラインだ。左側は川があるから、そこにしよう。右は、あの大木。正面は斜面がキツくなる所があるから、そこまでにしよう。範囲内なら身を隠しても良いが訓練という事を忘れるな?他に質問あるかーー?」
ルールと自身が置かれている状況を把握した隊員達は、静かに心の準備をした。
「よし。じゃあ、全員ここに荷物を置け。ついでにここのEnd Lineにするぞ。 目隠しして30秒数えたら、俺が追う。必死で逃げろ」
GO!!!
ダダッ
一斉に、その場を離れる隊員達。この辺りは視界が開けて居るが、少し離れれば木々や大岩など隠れて見張る側になるポイントはたくさんある。
「逃げ切れば良いんだな?そして捕まっても10カウント内に振りほどけば良い。面白い」
ほんの数年前まで、鬼ごっこして遊んでいたレオンにとっては、このハードな鬼ごっこが楽しかった。
ヴィンス「28…29…30。さてと、流石に視界に入る中には誰もいないな。」
とりあえずヴィンスは、ゆっくりと右前方に歩き始めた。
この鬼ごっこの範囲は、ざっくり縦横200m。視界を奪う障害物も多く、隠れられたら探すのは困難を極める。
しかし、ヴィンスは急がず100m程歩いた。
……ダダっ
ヴィンスは、突然走り出した。
隊員「!!こっちか!?見つかった?何故!? クッ……」
ダダッ
「遅い!!」
ガシッ
「1 2 3 4 5」
バッ!…
隊員は、ヴィンスが掴んだ手に体重を乗せて振りほどこうとした。
グッ
「6 7 8 9 10。お前も鬼だ。上着を脱げ」
乗せられた体重を片手で受け止めて、服を握った拳も微動だにしなかった。
ダダッ
次のターゲットを見つけて、ヴィンスが走り出した。
「隠れてるつもりかー!太陽の向きを考えろ!!」
ガシッ
ズサーーーッ
「1 2 3 4 5 6 7 8 9 10。上着を脱げ」
開始早々二人を捕まえたヴィンス。これは彼のフィジカルが高いだけではなかった。
200m×200m全てを捜す必要が無い。
まず見つかるリスクを考えて100mより手前でとどまる者など居ない。手前半分は最初に捨てた。
左側には川がある。追いつめられたら終わり。
正面は心理的に真正面ではなく逸れたくなるので選びにくい。
一番奥まで行ってしまうと、これも逃げ場が無くなる。
人の心理をついた見事な作戦だった。
「お前らには、鬼として役にたってもらう。この辺りに、まだ何人か居るぞ」
ゴニョゴニョ
何やら耳打ちをすると、1人の鬼の兵士が前方に歩きだした。
「そこだ!!戻れ!」
ヴィンスの声掛けで、岩陰目指して走り始めた。
「!!!なっ」
予想的中、1人の兵士がみを潜めていて逃げ出した。
ダダッ
「クソ!!なんで!」
ガシッ
進行方向には、ヴィンスが待ち構えていた。
兵士は反射的に、ヴィンスにミドルキックをした。
ドゴォ……!
「そうだ。本気で振りほどけ1 2 3 4 5 6 7」
「クッ……」
ドゴォ…
「8 9 10。上着を脱げ。3人目」
茂みに身を潜めてレオンは見ていた。
(なんなんだ?あれは…鬼ごっこじゃねぇ。あの人鬼じゃねーか)
兵士の性質になっている、頑丈な物の後ろに隠れると言う選択を知らないレオンは、それが功を奏して危機を脱した。
ーーーその頃。
「おぉーーでっけぇ魚だー。流石、山奥」
どこか、緊張感の無いルーシーがいた。
To Be Continued
次回 緊張感が増していく鬼ごっこ




