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File004 井の中のレオン

ーー1900年。


軍の入隊テストのフィジカル部門で、10年振りに満点を叩き出した男がいた。


レオン・フォックス(18)。


小柄な体格でありながら、パワー部門でもトップの成績を記録し、周囲を驚かせた。


「ふん。軍隊と言ってもこんなもんか。大した奴も居ないし、これで満点とはな」


当時の彼は、自身のフィジカルの高さを自覚していて、刺激を求めて軍へ入隊した。


「ヴァンダイン大尉!!今年の入隊テストで満点出したガキがいたらしいですよ!」


ヴィンス・ヴァンダイン大尉(28)。


彼はニヤリと笑い、立ち上がった。


「ほーーう。面白いヤツが入って来たなー。来月の特殊部隊の訓練、連れてってみるか」


兵士「え!?特殊部隊に在籍してるだけでも化け物ですよ!?そこに素人を連れて行くんですか!?」


ヴィンスは顎に手をやり、楽しそうに斜め上を見つめた。


「あぁ、あれで満点取るならある程度着いてこれるだろ。本部に連絡しといてくれ」


こうしてレオンは入隊早々、歴戦の兵士が震え上がるヴィンス・ヴァンダインの訓練に招集されることになった。


ーーー当日。


「お!お前だな!満点小僧は!名前は?なんて言う?俺はヴィンス・ヴァンダイン。今回の訓練の教官だ」


「レオン。レオン・フォックスだ。です」


レオンはヴィンスから何かを感じ取ったのか、慣れない敬語で応えた。


ヴィンス「そうか、レオンな。お前の素質、見させてもらうぞ」


挨拶も程々に、早速30名参加の地獄の訓練が開始した。


「まず、各自装備とウエイトを担げ。およそ25kgある。そのまま山を登る。着いて来れないやつはどんどん置いて行く。いいな?」


ヴィンスは教官の立場なので、手ぶらで向かっても良いのだが、性格上、自信がそれを許さなかった。


同じ装備を身につけた。


レオン(拍子抜けだ。この程度のウエイトで登るなんて普通の登山じゃないか)


「よーし!準備は良いな!!向かうぞ!!」


そう言うと、ヴィンスは走り始めた。


「は……?」


特殊部隊の面々は、いつもの事で何事もなかったように走り始めた。


「あ、やべ」


少し出遅れたが、レオンもすぐに合流して走り始めた。


「おっ、新人くんだね!いきなりこんな訓練に呼ばれるなんてついてないね!」


ルーシャ・デトア(21)。


唯一の女性特殊部隊員。


男に混ざっても、引けを取らないフィジカルとガッツがある。


レオン「あ、どうも。全然大丈夫だ。ここがトップだとしたら軍も大したことないな」


ルーシャはニヤリと笑い続けた。


「そっかー!それは凄いね〜。私はルーシャ。ルーシーって呼ばれてるよ!」


それだけ言うと、前を向き力強く走り続けた。


25kgのウエイトを担いで走る。


それは想像を絶する負担だった。


徒歩ではそれほど気にならないウエイトも、走れば一歩ごとに大きく揺さぶられる。


落下によって生じる加速が、肩や脚に衝撃を与え続ける。


必要なのは体力だけではない。


肉体そのものに、継続的なダメージを与え続ける過酷な訓練だった。


レオン(はぁはぁっ……こんな人達が居たのか)


1時間が過ぎても、誰一人脱落しない。


レオンは早くも衝撃のようなものを感じていた。


それから、更に走ること30分程経ったところで……


「よーし!到着だ!!脱落者無しだな!今からここで訓練をするが、一旦休憩だ!1度座って脚をほぐすんだ!」


ヴィンスが休憩の指示を出した。


「ふぅ、ようやく休憩か。まだまだ行けるが、確かにハードかも知れないな」


ドサッ。


レオンは荷物を降ろし、重さから解放された。


「何をしている?すぐに担げ。戦場で疲れたら武器を手放すのか?そうなったら、お前はその場で脱落だ」


レオンは、はっとして慌てて荷物を担いだ。


「はい!申し訳ありません!」


ヴィンスは、片眉を上げて腕を組んだ。

「おーおー、まだ元気そうだな?ここからの訓練は荷物置く場面もあるが、基本的には指示を出すまで担いでおけ」


レオンは、ヴィンスの目を見て小さく頷いた。

「はい」


過酷な戦場では、自力で装備も食料も持って何kmでも移動する。どちらも生き残る為には必要不可欠だからだ。


「よーし!皆集まれ!これから訓練を開始するぞ」


ヴィンスの声掛けで隊員達が、足早に集合してくる。


「今から行う訓練は、鬼ごっこだ。みんな子供の頃にやった事あるな?」

皆一様に怪訝そうな顔を浮かべながら頷いた。


「ただ、ルールは少し違う。俺が鬼だ。そして捕まった者は離脱せずに鬼として加わる。つまり、どんどん鬼が増えていく。 わかるな?」


そもそもヴィンスが鬼という時点で、隊員達には緊張が走った。 そしてどんどん過酷になるであろう事を察した。


ルーシー「鬼になった奴は、どうやって見分けんの?」


ヴィンスは、顎に手を当てて少し考えて答えた。

「鬼になったヤツは上着を脱げ。最後まで上着を着ていた者が勝者だ。鬼が10人くらいになったら俺は抜ける」



To Be Continued

次回。

鬼と鬼ごっこ


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