15話 ラルカ、おりこう?
「それじゃあ、サバイバル試験を始めるわけだけど〜、ちゃんとチームメンバーは揃ってるね?」
全ての一年生が講堂に集められているから、凄い人数がいる。そんな中でもいつもの調子てアナウンスするオーティ先生に、年配の先生が厳しい目を向けている。
「今から、この講堂にいる全員を『魔女の森』に転送する訳だけど、最終ルール確認しておくねぇ☆ これだけは、守ってもらわないと命に関わるから、ちゃんと聞いててねぇ〜☆」
命に関わるっていうのに、なんであんなに気楽なんだろう。
「まず、必要最低限の水と食糧は全員に渡したカバンに入ってるから、森で変な物を飲んだり食べたりしないこと。で、合否判定に使うこのチョーカーだけど、絶っっっ対に無くさないこと。絶対だよ☆」
そういうと、講堂のスクリーンに説明用の資料が表示された。
「チョーカーを最後まで持っていないと不合格っていうのは、言い換えたら、教師が奪って回収したらその場で強制転送をして、この講堂に戻ってくるってこと。魔物もいる危険な場所……、命に危険があった時とか、緊急時とか、皆の身の危険を察知して転送する役目もあるから、絶対に外しちゃダメだからねぇ☆」
一応、生徒の身の安全も考えられていたんだ。魔物がいるって聞いて、ドキドキしてたけど、救済措置があることに私はほっと胸を撫で下ろした。
「はいっ、説明終わりっ! もう、みんなも早くスタートしたいよね? ってことで、スタートォ☆」
「「「「「えっ?」」」」」
オーティ先生の軽い合図で、講堂が光った。すると、次の瞬間には緑が生い茂った森の中に転送されていた。
私たち五人の姿しか見当たらないのは、グループごとにランダムな場所に飛ばされているんだろう。
「ほんっと、オーティ先生は適当だなぁ。それで、私たちはどういう作戦でいこっか?」
こういう時、一番頼りになるのはフリーニャだ。全員の視線が自然とフリーニャに集まった。
「そうですね……。まずは、先生方がどう来るつもりなのか、様子見がしたいです。なので、最初は戦闘は避けましょう」
「見つからないように隠れるってこと?」
「はい。でも、それだけでは不十分です。ターシャさん」
「ひょぇい……っ!?」
自分が呼ばれると思ってなかったのか、ターシャが気の抜けた返事をする。
「魔女の丘で見せてもらった、ターシャさんの探索魔法ですが、あれは動くもの……、例えば『オーティ先生』をターゲットにすることは出来ますか?」
おおっ! その手があったのか! 先生の現在地が分かれば、隠れ続けるのもかなり楽になる。攻撃魔法が得意な子だけが活躍する訳じゃないって、こういうことだったんだ!
皆に注目されて、ターシャは少し困ったように悩んでいたけど、決意したのかハッキリした声で答えた。
「出来、ますっ!」
「でしたら……っ!」
「ま、待ってくださいぃ……っ、やれば出来るとは思うんですけど、動く相手で一人の人をターゲットにするのは、集中するのに凄く時間がかかってしまうと思いますぅ」
「それは、どれくらいですか?」
「えっと……、魔女の森には魔物も……、他の生徒も沢山いるので……、オーティ先生の魔力を見つけるだけでも……、十分はかかります」
「十分っ!? そんなの全然短いよっ! 時間かかるっていうから一時間くらいかかるのかと思った〜。全然、凄いじゃん!」
「え、えへへ?」
褒められたターシャが嬉しそうにはにかんだ。
「カナメさんの言う通りです。探索魔法は特に適性に左右されますから、その時間でそれだけの事ができるのは凄いことですよ。私がやっても、動いている中からオーティ先生を特定して捕捉する、なんて高度なことは出来ません」
「そ、そうなの? フリーニャちゃんは凄いから、簡単に出来ちゃうのかと思ってた……。わたしだけ……、わたしだけ、なんだ。えへへ、なんかフリーニャちゃんに褒められるの、凄く嬉しいなぁ」
へにゃ、と猫耳を垂らして、ターシャが照れくさそうに笑った。でも、分かる。首席のフリーニャに、あんな風に手放しで褒められたら嬉しいよね。……私も、なんか凄い魔法使って褒められたいな。
「ターシャさん、それだけの集中がいる魔法です。何度も使えるわけではありませんよね? 目安で構いませんけど、探索魔法は一日に何回くらいなら使えそうですか?」
「二回、……かな。逃げなきゃいけない時とかのことも考えて魔力を残しておくなら、それくらいしか出来ないかもですぅ」
「分かりました、十分です。まずは、スタートしたばかりの今、一回目を使いましょう。そして、なるべく先生から離れた場所に拠点を構えて、次は寝る前に二回目をお願い出来ますか?」
「うん……っ! 出来るよ! わたしに任せて欲しいですぅ!」
嬉しそうにぶんぶんと両手を振るターシャの猫耳が、嬉しそうにピコピコ動いている。それにしても、あの猫耳……、ターシャの感情が丸わかりだなぁ。
その様子を微笑ましく眺めていると、隣にいたムアンも同じことを考えているのか、ターシャを見つめてにこにこと笑っていた。
「あっ、で、でも……、早いって言ってくれるのは、嬉しいんですけど……、実践での十分は長いので……、探している間に先生に見つかってしまうリスクもあるんです。だから、なるべく頑張りますねっ……!」
それだけ言うと、ターシャはすぐに魔法を使う為に、両手を目の前で組んで祈るように目を閉じた。
『お願い、オーティ先生を探してっ! リチェルカ!』
ターシャの探索魔法が発動する。
確かに、これが十分……。それを待つ間、周りに警戒しておかないといけないのは、かなり緊張するかもしれない。
皆にも緊張がはしるのが分かる。そんな時、ラルカが小さな声で呟いた。
『…………出てきて。ドゥオモ』
すると、私たちの周りの土が段々とへこんでいって、掘りごたつの上にかまくらが乗っかったみたいなドームが出来上がった。
「これなら、周りにばれない」
ラルカの言う通り、多分、外から見たらただの地面があるだけで、その下に私たちが隠れてるとは思われないだろう。
僅かに開けられた空気穴から入ってくる光で、なんとか誰がどこにいるかがわかる。魔法が使えない私にはどうしようもなくて、目を凝らしていると、フリーニャとムアンが魔法を使って光で照らしてくれた。
「……ラルカ、お利口?」
「すっごく、お利口だよっ! これなら安心してターシャの探索魔法が終わるのを待てるね!」
そう言って、私がラルカの頭を撫でると、ラルカは満足そうに微笑んだ。




