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契約のキスでツンデレお嬢様とパートナーになったけど百合展開になるつもりはありません!  作者: 日華てまり


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11話 ゆるさない

 


 魔法警備隊と怪我人の救護活動をし終えた私とフリーニャに、カラッとした女将さんが声をかけてきた。


「アンタがあれをやったんだって!? あの学園の生徒ってのは、本当に凄いんだねぇ。アタシの家も飲み込まれちまったよ!」

「えっ、ごめんなさいっ! 私、無我夢中で……、後のことなんて考えてなくって……」


 そうだ。当たり前だけど、あの花が咲いちゃった幹の下にも、生活してる人がいるんだ。私が落ち込んでいると、フリーニャが背中を叩いた。


「申し訳ありません。怪我人の救護を終えたら、すぐに撤去しますので……、心苦しいのですがしばらくの間、耐えてはいただけないでしょうか……?」

「フリーニャ……。本っ当にごめんなさい! 私に手伝えることがあったら、なんでもします!」


「あっはっは! アタシの言い方が悪かったね。責めてるんじゃないんだよ。ゴーレムを止めてくれて、これ以上の被害が拡がる前に食い止めてくれたこと、感謝してるんだ。怪我人は出たかもしんないけどさ、誰も死んでない。凄いことさ! 胸を張りな、アンタのおかげだよ!」


 女将さんの言葉に、目頭が熱くなった。みんながみんな、そう思ってる訳じゃない。分かってる。他の人が食い止めていれば、もっとスマートに止められたのかもしれない。だけど……、私がしたこと、間違いじゃないって言ってくれる人もいるんだ。


「……っ。ありがとう、ございます……っ」

「あははっ、おかしな子だねぇ。お礼を言うのはこっちの方だよ! それに、撤去だのなんだの、子供がそこまで考えなくていいんだよ」


 女将さんが、一緒に謝ってくれたフリーニャにも、優しい眼差しを向けた。


「ここいらに住んでる人らで話したんだけど、この花は撤去はしないことに決めたんだ!」

「えっ! なんでっ!? あれの下に住むんですか……っ!?」


 気を使ってくれてるといっても、いくらなんでも、このままにしていいなんて言う意味がわからない。


「部屋の中まで入ってきてるわけじゃないからねぇ。あくまで、窓から日が差し込まない程度だろ? そんなもん、外に出ればいくらでも太陽の光は浴びられる。それよりも……、こんな大きな炎の花。それも、どうやって燃えてるんだか、いっこうに消えやしないうえに火事にもならない」


 女将さんがニヤリと笑った。


「こんなに良いランドマークがあるかってんだ。元々、ここら辺は食べ物屋や服屋。馴染みの客しか来ない、しがない商店街だったんだ。アタシらにとっちゃ、最高の贈り物なんだ。ここを観光名所にしてやるよ!」


 私もフリーニャも、ポカンと口を開けてしまった。なんて、たくましいんだろう。女将さんの言う通り、外はもう、さっきまでの事件なんて忘れているみたいに、前向きな声が飛び交っている。

 いち早くお祭り騒ぎを始めようと、明かりが取り付けられたり、出店が出たりと大賑わいだ。


「すごい……っ! 本当に、最初からこういう観光名所だったみたい!」


 夜を明るく照らす炎の花を囲んで、街が飾り立てられて、賑やかな夜市が始まっていた。


「おっ! 主役の嬢ちゃんじゃねぇか! おめぇらも、こっちへ来い! うちのビーフシチューは、最高だぞ!」


 おじさんの大きな声に、街の人たちが私たちに気づく。そして、聞き取れないくらい沢山の「ありがとう」を伝えてくれた。


「ほらっ、大丈夫だろう? せっかくの宴だ。アンタらもさっさと混ざっておいでよ!」


 女将さんに背中を押されて、私は街の人たちの輪の中に混ざっていった。街の人たちは優しくて、私とフリーニャを大歓迎してくれた。壊れたものじゃなくて未来に目を向ける、明るくて前向きな人たちばかりで、私はあっという間にこの街のことが好きになっていた。




 ◇ ◇ ◇



 お祭り騒ぎの中心にいるカナメを、建物の上から見下ろす姿があった。


「周りを巻き込んでく、あの感じ。やっぱり、若い頃の紅蓮の魔女を見てるみたいで、ワクワクしちゃう☆」


 オーティ先生が杖をひと振りすると、一本道に並び立つ街灯に、一斉に明かりが灯った。そして、ふぅ……と吹いた白い息が、キラキラと光る蝶や光の粒になってカナメたちがいる場所に降りそそぐ。


「それにしても……、巨大ゴーレムだなんて。な〜んか、嫌な予感がするのよねぇ。めんどくさいけど、ちょっと調べてみよっかな〜☆」


 そう言うと、オーティ先生はふわりと建物から飛び降りて、幻影のように姿を消した。



 ◇ ◇ ◇



「カナメちゃんっ、フリーニャちゃんっ、おはようございますぅ……っ! 昨日、街で起きた巨大ゴーレム事件に巻き込まれたって聞きましたけど、大丈夫ですかぁっ!」


 次の日、登校するなりターシャが凄い勢いで抱きついてきた。廊下でもめちゃくちゃ見られていたし、昨日の話で持ちきりらしい。


「大丈夫、大丈夫っ! 私もフリーニャも怪我はなかったし。それに街の人たちも、すっごい明るくて面白くていい人ばっかりで、なんか楽しんじゃった」

「カナメさん、泣きそうになってましたよね」

「ちょ……っ! それは言わないでってばぁ!」

「……それにしても、昨日の夜に見た幻影の魔法……、とても高度な魔法でしたけど、あの場にそんな魔女がいたんでしょうか」

「キラキラ光ってたチョウチョのこと? 凄い綺麗だったよね! 魔法ってこうだよねって、私、楽しく上がっちゃったもん!」


 私達が話していると、教室のドアが空いてオーティ先生が入ってきた。


「ほらほら、インタビューしたい気持ちは分かるけど、昨日の主役を囲まな〜い。今日は、なんと……っ! 転入生を紹介するよ〜☆ 入学式したばっかりで転入生ってなんなのって思うけどねぇ、あたしみたいなただの教師は、偉い人に質問なんか出来ないんだよねぇ」


 オーティ先生、テンションが上がったり下がったり忙しいなぁ。オーティ先生に勢いよく開けられたドアから入ってきたのは、真っ黒なゴスロリ姿に真っ白な髪の幼い雰囲気の美少女だった。その腕の中にはボロボロになったぬいぐるみが抱きしめられている。


 え? 同い年ってこと、だよね?

 私の疑問を解決したのは、オーティ先生だった。


「えーっと、あたしもよく知らないんだけど、見ての通り飛び級の天才で初等部からぶっ飛んで来たから、この時期で転入生扱いなんだってぇ。実力はお偉い方のお墨付きらしいけど、まだまだ子どもだから仲良くしてあげてねぇ〜☆」


 クラス中の視線が転入生に集まった。


「………………」


 って、喋らないんかいっ!

 心の中でノリツッコミしちゃうくらい、黙り続ける転入生にしびれを切らして、オーティ先生が自己紹介を促した。


「ラルカは……五大賢者、傀儡の魔女」


 その宣言に、教室がざわついた。

 すると、転入生……、ラルカはフリーニャを指さした。


「…………見つけた。五大賢者、蒼龍の魔女……、ダルを殺した悪い魔女。…………ラルカは、お前たちをゆるさない」


 そう言って、ラルカがゆっくりと手を振りあげると、教室に大量のゴーレムが姿を現した。


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