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言いたいことはそれだけですか。では、始めましょう  作者: 井藤 美樹
第四章 新米王女殿下の初外交

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第四十七話 新米王女殿下、突撃してきた国王代行を冷たくあしらう



 実は、報告書の中に、エンドキサン王国王太子殿下が、謝罪のために、ベルケイド王国に単独で向かっていると書いてあった。


 その報告を聞いて、内心、謝罪の言葉の意味知ってる、と聞きたくなったけとね。


 それはさておき、エンドキサン王国の王都からベルケイド王国までは、馬車で約一か月は掛かる。軍用馬である魔馬を使えば二週間に短縮出来るけど、普通の兵士や騎士なら、腕が痺れて長時間は乗りこなせない。馬といっても、魔物だからね。


 もし、エンドキサン王国内で長時間乗りこなせるとしたら、騎士団長あたりならまだ可能かもしれない。


 しかし、王族を連れてとなると、まず無理ね。あの細腕じゃあ、手綱さえ握れないと思うわ。それに、魔馬に馬車を引かせるのなら、馬車自体を強固な素材で作らないと、直ぐに破損して使い物にならなくなる。


 なので、名目上、謝罪のために国境に着いた時点で、彼らは現状を知る事になるのよね。因みに、例の件を公布してから、一週間はとうに過ぎてるわ。


 つまり、無駄足になるの。着いてみたら、国境を完全閉鎖されてるのだから、当然よね。そもそも、結界は目には映らないし、さぞかし慌てるでしょうね。何度も、入ろうとするんじゃない。


 正確に言えば、エンドキサン王国の人間は国境を越えられないけど、私達ベルケイド王国の人間は入国出来る。漏れ対策ね。一方通行だけど。


「何故だ!? 何故、入れない!!」


 国境沿いで、何日も騒いでいる人がいると兵士から報告を受けて、ラリーお兄様と一緒に来てみれば、見た事がある人がいた。


「騒がしいですね。国境沿いで騒がないでくれます、エンドキサン王国王太子殿下」


(報告は受けていたけど、本当に来たのね)


 どの面でと思ったけど、相手は一国の王太子殿下、友好関係を築けないとしても、最低限の礼儀で応えないとね。私達は礼儀知らずじゃないから。


「ミネリア王女殿下!! これは、どういう事だ!?」


 私の顔を見て喚き立てる。


(結界があってよかったわ。唾が飛んで来そうな勢いだもの、マジ汚い)


「どういう事って、分かりませんか?」


 仮に、行き違いで、お父様の書簡の内容を知らないとしても、この意味は理解出来るでしょ。当然、理由も。


「分からないから、訊いているんだ!! 何故、エンドキサン王国を拒絶する!?」


 王太子殿下は捲し立てる。


「……あれ、本気で言っているのか?」


 ラリーお兄様が呆れながら、私に訊いてきた。地声が大きいから、王太子殿下にも聞こえたみたい。


「私を馬鹿にしているのか!?」


 いちいち、噛み付いてくるのを止めてほしい。


(大声を上げて、威圧しているつもりなの? それって、小物がよく使う手じゃない)


「馬鹿にはしていませんよ。ただ、エンドキサン王国と友好関係を築く事は、未来永劫ないという事を明確にしているだけです」


 詳しく教えてあげた。私って親切よね。


「何故だ!?」


「さっきから、同じ台詞ばかり、いい加減になさいませ。先に、ベルケイド王国に喧嘩を売り、こけにしたのはそちらでしょう」


 うんざりしながら、私は答えた。

 

「その件については、きちんと処罰し、ケジメを付けた旨を報告した筈だ」


 王太子殿下がそう告げた瞬間、場の空気が一気に凍り付いた。流石に、王太子殿下も空気の変化に気付いたみたい。明らかに戸惑っている。


(不可解な反応ね。バレてないと思ってるの? もし、そう考えているなら理解不可能だわ。それとも、まだ騙せると馬鹿にしてるの? 知らないって事はないよね)


「……嘘ばかりの内容でしたけどね」


 取り敢えず、事実を告げた。


「嘘……だと…………」


 王太子殿下はショックを受け、その場に膝から崩れ落ちた。


「あら? 御存知なかったのですか? 全て嘘ですよ。第一王女殿下を北の塔に幽閉したと記していましたが、王都で豪遊しているようですね。他の方々も領地で普通に暮らしているそうです。公爵令嬢は鞭打ちされたと言われている侍女を専属にし、騎士職を剥奪されたとされる騎士は今は彼女の婚約者だとか……我がベルケイド王国をここまでコケおろしたのは、エンドキサン王国側です。そのような国と、誰が友好関係を結べるのでしょう」


「……まさか……陛下は確かに…………」


 更にショックを受けた王太子殿下は小さな声でそう呟くと、何かを悟ったのか、下げていた視線を上げ、私達に合わせた。


(本当に、知らなかったようね)


 王太子殿下がエンドキサン国王代行として、ベルケイド王国に向かってから、方向転換したのかもしれない。一人娘可愛さにね。それとも、そもそも罰する気がなかったのかもしれない。


「信じられないようなら、御自身の目で確かめてみれば宜しいのでは?」


 私がそう告げると、王太子殿下は姿勢を正し数歩後ろに下がる。そして、私達に深々と頭を下げ謝罪した。


「申し訳ない。取り乱してしまい、済まなかった。おそらく、それが事実なのだろう。我々は選択を間違った。間違った方向に進むのなら、正しい方向に戻さなければ」


(王太子殿下って、そこまで馬鹿じゃなかったようね。でも、甘過ぎだけど)


「だとしても、我々の意志は変わる事はないでしょう」


「そうだとしても、このままに済ます訳にはいかない」


 王太子殿下は硬い声で告げると、再度私達に深々と頭を下げ、エンドキサン王国に戻った。




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