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言いたいことはそれだけですか。では、始めましょう  作者: 井藤 美樹
第四章 新米王女殿下の初外交

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第四十六話 国王陛下、聖獣様に頭を垂れ願う



(ラリーお兄様の笑顔を見て、おおよそは予想してたけど……これって、あんまりじゃない!!)


 腸が煮えくり返る。持っていた報告書がグシャと潰れた。


「完全に、ベルケイド王国を舐め腐ってるわね、あいつらは」


 とても低い声で報告書の感想を述べた。


「バレていないって考えるあたり、馬鹿というか……バレてもどうにかなるって考えているのか……まぁ、どっちにせよ、舐め腐っている事に違いないな」


 口調が荒くなる訳じゃないけど、怒気がだだ漏れ状態で、ラリーお兄様は答える。

 

 私は手の中でクシャクシャになった報告書を、机に叩き付けた。


「全く!! 何が、北の塔に幽閉したよ!! 幽閉どころか、貴族牢にさえ放り込んでないじゃない! 自室に形だけの謹慎状態って、授業をサボったぐらいの罰よね。完全に、ベルケイド王国を舐めてるわ!! ましてや、お茶会を開いてはいないけど、王都で豪遊って何!? 謹慎自体ないと同然じゃない!! あの映像と音声を添付したのにこれって、事の重大性をちっとも分かってない!! よくこれで、大国と名乗れるわね。ほんと、ありえないわ!!」


 第一王女の処分がそれで済んだのだから、他の四名はあってないようなものよ。現に、腰巾着達は修道院に追放されてない。噂が消えるまで領地に戻っただけ。そこで、普通に暮らしている。そして、噂が消えれば、何食わぬ顔をして王都に戻って来る気満々だ。


 ましてや、リアス様を直接虐めていた侍女も、見て見ぬ振りをした近衛騎士も、王城を追い出されただけで、大した罰を受けていない。書簡に書かれていたような鞭打ちも、騎士職の剥奪もない。今、侍女と騎士は、腰巾着の一人、公爵令嬢と一緒に領地にいるらしいわ。侍女は専属侍女として、騎士は婚約者として。


 そう――何から何まで、全て嘘だった。


「陛下、如何しますか?」


 剣の柄に手を掛けたまま、ラリーお兄様はお父様に尋ねた。


(ラリーお兄様、開戦する気満々ね)


 元々、ラリーお兄様は戦闘狂の面がある。だけど今回は、それを抜きにしても我慢出来ないわ。私も開戦する気満々だからね。ここまで、コケにされたら当然よね。


(とはいえ、民の事を考えると、そう簡単に開戦なんて出来ないんだけどね……)


 ラリーお兄様もそこはちゃんと分かってる。分かっているからこそ、とても歯痒いの。


「開戦はしない。あんな馬鹿な奴らのために、我が民が危険な目に合うのは、到底我慢出来ん。決別する。今後一切、エンドキサン王国の者を我が国に入れぬ。未来永劫な」


 完全に国交を断絶する――


 それが、初代ベルケイド王国の国王として初めて下した決断だった。


 お父様は立ち上がると、イシリス様の元へと向かう。


「俺に、何かして欲しい事があるのか?」


 さっきまで、私の傍でク〜ンと鳴いていたのに、今はキリッとした顔でイシリス様はお父様に尋ねた。


「はい。エンドキサン王国の者が入れないように、結界を張り巡らして欲しいのです」


 どんな困難な場面でも、お父様はイシリス様に頼み事をする事はなかった。それが、お父様なりの聖獣様に対しての礼儀だった。


 そのお父様が、一歩踏み込んだ。


 私とラリーお兄様は表情を固くし、イシリス様の御言葉を待った。私が口添えしてはいけない事だから。


「……それくらいなら、容易い事だ。問題はない。今からするか?」


 イシリス様は私の方をチラチラ見ながら言っている。カッコいいだろ、惚れ直したか、そんな副音声がはっきりと聞こえたわ。


「いえ、今はまだ……その前に、エンドキサン王国に書簡を送り、両国中に配布します。エンドキサン王国の者がいるなら、さっさと国を出て行くようにと。出て行かぬなら、二度とエンドキサン王国の土は踏めぬと思え、と記載致します」


 一切の感情がこもらない声で、お父様は淡々と述べた。お父様が声を発する度に、張り詰める空気のピリピリ度が増していく。私とラリーお兄様は冷や汗をかきながら、黙って立っていた。


(エンドキサン王国は終わりね。完全にお父様を怒らせたわ)


「なら、国境の詰め所だけは残すか?」


「はい。それ以外は先に張って頂くと助かります」


「それは構わぬが、いいのか? エンドキサン王国に行商に行っている者もいるだろ」


「その点なら、心配は不要です。念のために、エンドキサン王国に向かう前に行商に伝令を飛ばしております。後、暗部と影の者に、残っている者がいないか確認させます」


 お父様の台詞に驚いた。


(まさか、この事態を予想していたの!?)


「だがそれでは、絶対とは言えないのではないか? そうだな……もしもの事を考慮して、俺の護符を持つ者は、猶予を越えても通れるようにしよう」


 ベルケイド王国の国民は、皆聖獣様の護符を身に着けている。影も暗部もだ。それが誇りなの。


「配慮痛み入ります」


 お父様は深々と頭を下げた。


 一箇所だけを残して、全てを封鎖する。お父様の本気度がよく分かる。


 それからは、行動が早かった。一時間もしないうちに、王都には張り紙が貼られ、把握している村や町にも伝令が走った。


 猶予は一週間――


 一週間後の同時刻、ベルケイド王国に張り巡らされた結界に、新たな制約が加わる。


 これは決定事項だ。



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