第四十二話 新米王女殿下、売られた喧嘩を数倍の値段で買う
「……それはそれは、盛大に選択を間違えましたね、エンドキサン王国は」
いきなり帰って来た私達を、ラリーお兄様と宰相様は特に驚く事なく出迎えてくれた。そのままあった事を報告したら、宰相様がにっこりと微笑みながら感想を述べた。勿論、その目は笑ってない。まぁ、当然だよね。
「大国だから、下に見たんだろうな」
今度は、ラリーお兄様が率直な感想を述べる。
「でしょうね。小国とはいえ、一国の扱いではなかったし。完全に、属国の扱いだったわ。表面上は敬う感じで接して、内面は蔑んでる。それが見えて、マジで腹が立ったわ。そもそも、国の大きさで優劣を判断するなんて、短絡過ぎるわ。失礼にも程があるわよ」
周辺諸国では、エンドキサン王国は大国だから、それが許されていたんだろうけど、ベルケイド王国がそれを許すって考えていたのが、大間違い。慢性化し過ぎて、その辺の感覚が完全に麻痺したようね。
「友好国としてのサインの前にボロを出すって所が、エンドキサン王国の間抜けな所だな」
心底呆れながら、ラリーお兄様は言う。
「ほんと、それ。緊急だと招集したわりには、会議をしたのは皆が到着してから、三日後よ。せめて、その時に交わしていたのなら、多少は対応も変わっていたのに。マジで間抜け過ぎるわ。詰めが甘過ぎ。……それにしても、表の評価と本質が、あまりにも違う事に驚いたわ」
エンドキサン王国の評判は、以前からすこぶる良かったのよね。
「噂じゃなく、自分の目で見る事が大事だと勉強する事が出来たんだ、ミネリアにとっては成果があったな。……まぁ、そんな間抜けで勘違いしている国だから、他国の専属侍女を虐げる事が出来たんだろ。普通は許されないからな」
(ご尤もです、ラリーお兄様)
私とラリーお兄様が意見を交わしていると、クククと笑う声が聞こえた。お父様だった。
「今頃、さぞかし慌てているだろうな、あいつら」
お父様の愉快そうな声に、私とラリーお兄様の口元にも笑みが浮かぶ。
「陛下が文官を追い返して、代わりの者が訪れたら、もぬけの殻。転がるようにエンドキサン国王に報告している頃ね。慌てて、国境を封鎖するよう命が下ったりして」
私はコロコロと笑いながら答える。
エンドキサン王国にも意地と面目があるからね。何としてでも、ベルケイド王国と友好関係を結ばないといけない。そのために、こんな糞な会議をわざわざ開いたのだから。その割には、扱いは雑で最悪だったけどね。
(このままだと、周辺諸国にはどう映るか。かなり、心象は悪くなるわね。ジワジワ来るわよ、これ)
「なら、俺達も、同じように国境を封鎖するだけだ」
お父様はニヤリと笑いながら言った。全員頷く。
(友好国じゃないもの、国交自体断絶しても非難はされないからね)
商会もエンドキサン王国以外にツテがあるし、特に困らない。食料も輸入してないしね、魔石などの日用品関しても、装飾にこだわらなければ、自国で十分に補充出来る。勿論、魔法具製作もね。
リアス様を虐めた事、絶対に許しはしない――
(ベルケイド王国を小国だと思って、舐めんじゃないわよ。売られた喧嘩は、数倍の値段で買ってやるわ)




