第四十話 新米王女殿下、選択を間違えないよう助言する
「ど、どうして、ミネリア王女殿下がこちらに? お呼びしていないのに」
(マナー違反だと、出しゃばりだと言いたいわけ、あんたが)
私の胸の内は別として、不意打ち攻撃は成功したようね。平静を装っているけど、声が裏返っているし震えてるわ。こういう奴らって、とても打たれ弱いのよね。だから私は、畳み掛けるように、意味深ににっこりと笑ってやる。あくまで表情は令嬢のままでね。
「散歩していたら、道に迷っただけですわ。……それで、先程の私の質問に答えて下さいな、エンドキサン王国第一王女殿下」
更に笑みを深め、返答を促す。
(ほら、さっさと答えなさいよ)
「……作法を教えて差し上げていただけですわ。見知った者として」
(ありきたりな答えだわ。それにしても、作法ね……ただの虐めでしょ。リアス様を道化にして楽しんでいただけでしょうが!! あぁ!!)
「エンドキサン王国第一王女が、ベルケイド王国の専属侍女に対して教育ですか? 体罰を与え、火傷を負わせてまでご指導を、ね……そうそう、これまでも度々ご指導して頂いたようで、全て把握しておりますわ。ベルケイド王国から、正式に抗議文を送らせてもらいますわね」
(楽しみにしていてね。徹底的にやるわよ)
「抗議文って……大袈裟な」
第一王女がやや顔色を悪くしながら呟く。同調していた令嬢達は皆震え、顔色が悪い。中には、腰を抜かし、その場に座り込む令嬢もいた。
それにしても、ここまで来ても、まだ大丈夫と思っているのか、第一王女から垣間見える。
(本当、救いようがないお馬鹿さんね)
「大袈裟ですか? まだ、甘いと思いますが。……私付きの専属侍女を他国の王女が私的に使い、怒鳴り付け、暴力を振るい、火傷を負わせ、皆で嘲笑する。それ以前に、私の専属侍女に対する度重なる虐めの数々、それが許されるとお思いで? もし、そう考えているねかなら、甘いですわね。甘過ぎますわ。私には許しません。当然、ベルケイド国王陛下にも報告致します。我が民を虐げる者を放置する事は出来ませんので」
敢えて、専属侍女と繰り返す。
「…………この女のせいで、こんな状態になったのに」
(やっぱり、持ち出してきたわね。でも、そんなの私達には関係ない)
「それは違いますわ。選択を間違えたのは、亡王国の王族達です。リアスは一婚約者でしかありません。王族籍に属していませんわ。なのに、亡王国の責任をとれと。……亡王国は選択を間違えました。エンドキサン王国第一王女様、貴女も、これ以上選択を間違えないように。忠告はしましたよ」
(既に、十分間違っているけどね、あれは?)
誰かが、王太子殿下を呼びに行ったようね。騒がしくなって来たから、ここいらで退散しようかな。映像と音声はバッチリ撮れているからね。
「では、御機嫌よう」
何も発する事が出来なくなったお馬鹿さん達に、にっこりと微笑んでから一瞥し、その場を後にした。
そのまま、お父様の所に突撃して全て報告したわよ。リアス様は念のために、ジュリアに付き添ってもらい休んでいる。お父様も早かったわね。速攻、あのお茶会を主催していた第一王女と、参加していた腰巾着達にも抗議文を送ったわ。
後、命じられたとはいえ、リアス様を虐めに手を貸していた侍女と、見て見ぬ振りをしていた近衛騎士の名前も記したわ。
当然でしょ。第一王女の周囲にいる人物は、既に把握済みだったからね。
あっ、そうそう、あのお茶会の映像と音声も添えて差し上げた。あの第一王女なら、自分の良い方に持って行くに決まっているからね。なんせ、溺愛されてる我が儘王女だもの。
すると、一時間も掛からず、エンドキサン王国の使いの者が書状を持ってやって来た。
(ま〜許せる早さね。高官? 見た所、宰相補佐って感じね)
勢揃いした私達を見て、少し怯んだだけだから。表情も変わらないし。宰相じゃないのがイラッとするけど。取り敢えず、最後まで聞いてから判断しよう。
だが、その後が悪かった。




