17話 暴かれる陰謀と暴かれぬ策謀 前編
日の出とは違う方向から、一筋の光がテントに当たる。
「殿下、合図です」
「そうですか...では、行きましょうか」
集合時間にはまだ早いですが、それも作戦の内...対岸にいる奴等を見ながら
「私が、この手で...引導を渡して差し上げます」
言葉にした。彼らの事です。あの手この手で言い逃れするでしょう。
そう胸に秘めながら、焚き火の炎を消すのに砂をかける。すると気を利かせたバトゥが水を汲み戻ってきた。私は立ち上がり、場所を空けるようにして彼女の元へ歩み寄る。
「ありがとうございます殿下」
「ソレは私の台詞ですよ」
私が側に来たのを見計らい、彼女は礼を口にしながら砂の被った焚き火に水をかける。するとチラホラ見えていた小さな炎が消え、煙を上げ始めた。ソレを見ながら私も彼女に礼を言いつつ、その髪に触れる。
やがて完全に鎮火したのを確認し、後から起きてきた馬鹿と無能に野営設備を片付けてから来るよう告げると
「テメェがノンビリ眠ってるから置いてかれるんだろうが!」
「そんな!僕だけ「ウルセェ!言い訳しねぇで手ぇ動かせ!」...うぅ」
いつもの馬鹿騒ぎが始まった。そんな愚か者には目もくれずに
「行きましょう殿下」「あぁ、そうだね」
私の斜め後ろに立ったバトゥが先を促してきたので、私はソレに同意する。
「待っていなさい...セシル」
もう少しでセシルたちの元へ到着する試験官を見ながら...私たちは歩みを進めた。
「何かの合図を送ったようですね」
サクヤが試験官の方を見ながら、私にそう告げた。私もその言葉を受けて試験官とカマーセたちの方を見る。すると
「(焚き火の)消化作業に入った?」
「みたいですね」「(試験終了には)まだ早いわ」
焚き火に砂をかけ、一人は川へ水を汲みに行ったようだ。
私はサクヤに髪を梳いてもらいながら、彼らが何をしようとしているのか推察する。
「アイツら、仕掛けてくるわね」
「そのようです」
どうやらサクヤも近づいてくる気配に気付いたようだ。
「わざわざ回り道して来るのは、驚かせて冷静な判断力を奪う狙いでしょう」
状況を分析するサクヤ。そんな彼女に私が一言
「まぁ、無駄な努力だけどね」「ソレはセシル様が狡猾...もとい優秀「言い直さなくて良いわ」...認めまし「認めてないわ」そうですか」
言うと、何故か私を褒め貶してくる。
「とりあえず...二人を起こしてくるわ」
「私が「アナタはそのまま警戒していて」...分かりました」
そんな事より現実への対応が先だ。私が二人を起こし、サクヤに索敵を任せる。
(適材適所は組織の基本よ♪)
私より暗部に身を置くサクヤの方が警戒業務は適任だし、私にもコッチでヤる事があるのだ。
「起・き・て♪」「...(う〜ん)ハッ!?うわぁ?!」「うふふっ♪」
先ずはサージェから起こす。何故こんな起こし方をするのか?答えは簡単...面白いからだ。
「...うるさいなぁ」「おはようモーリス」「あっ、おはようございます」
そしてモーリスも勝手に起きる。一石二鳥だ。それよりも
「サージェ?(おはようの)挨拶はしてくれないのですか?」
「(ビシッ!)おはようございます!」「おはよう♪」
さっきの続きで再びサージェに声を掛けると、寝起きで固まっていた彼は何故か敬礼しながら挨拶する。
そんな彼らを見ながらゆっくりと立ち上がり
「さて、お遊びはココまでよ。奴等が仕掛けてきたわ」
私は声を低くして、二人にそう告げる。するとまだ眠気の残っていた二人の眼から、微睡みが消えた。
私がその眼を見ながら頷くと、二人とも同じように頷きテントの外へ出る。
「サクヤ、どうですか?」
「森の中から近づいて...あっ、出てきましたね」
外へ出て直ぐサクヤに状況を確認すると、丁度試験官が森から出て来た。
「私たちが警戒態勢に入ったのを見ての判断でしょうね」
「ドチラにしろ出てきてましたよ」「どういう意味です?」
私の問いに答えながら、出て来た試験官を見て判断したサクヤ。ソレにサージェが物申す。するとその意を聞いたサクヤにサージェは後ろを指差した。
「なるほど」「まぁ、予想通りだけどね」「予定通りでしょ?」「???」
納得するサクヤに泰然とした態度を取るサージェ。そんなサージェに私は余裕を見せるが、モーリス一人だけ良く分かってないようでキョロキョロしだす。
「モーリス?コレから何が起こるか、分かってるわね?」
「は、はい!」「なら大丈夫」「それが予定通りって事だよ」
そんな彼に私が確認を取ると、サージェは私がさっき言った言葉を添えて彼を安心させた。
現にモーリスは「そーいう事か」と呟きながら、試験官とカマーセたちを交互に見ている。
「さて、何と言ってくるのやら」
私たちは手薬煉引いて...ノース家御一行を待ち構えた。
「さて、どんなやり取りをしているのでしょうか?」
「どんな不正をしたのか、問い詰められているのでしょう」
私の零した独り言を拾うバトゥに、同意しながら歩いていると
「喧しい!試験官は私だ!」
予想外の怒号が聞こえた。
「おっ始まったみてぇだな!」
「そ、そうみたい」
そんな試験官の声を聞き、勇み出すナジルと怯えるケナス。だが
「ちょっと可怪しいですね」
「何がですか?」「行ってみない事には...」
分からない。試験官の様子がどうも変です。バトゥの質問に答える為にも
「少し急ぎましょうか」「はい」「よっしゃ〜ぁ!」「うぅ」
小走りになりつつ先を急いだ。まだ距離は有りますが、もう少し近づけばアチラの声もコチラに届くでしょう。そう思っていると
「声高に自らを試験官だと言うのなら、その試験内容の正しさを証明してみせよ!」
まるで演説でもするかのように、サージェが言い放った。その狙いは明白で
「私たちに聞かせるつもりですね」
「なるほど!」「あぁ?!どういうこった?」
私たちが到着してから二度手間にならぬよう配慮しての行動でしょう。勿論挑発の意味もあるでしょうが...
「試験官は...どうやら安い挑発に乗ったようですね」
「仕方ありませんわ。所詮下賤な者でしたから」
またも私の独り言を拾い同意を示すバトゥ。だが今度は後ろでナジルが舌打ちをしている。
「あら?本当の事でしてよ?」
「ウルセェ!アイツが馬鹿なだけだろうが!」
そんなナジルを煽るバトゥに、いつも通り怯えるケナス。そんな三人に
ドルルルルゥ・・・・・・!!!
発破をかけようとした時、森の中から1台の蒸気馬車が飛び出してきた。
どうしてこんな所に...そう思って見ていたら
「違う!?アレは...蒸気馬車では無い?!」
何処にも煙突のようなモノは見当たらず、蒸気を上げていない。その上
「アレは...いつぞやのセシルの妹に...!ま、まさかあの方は?!」
降りてきた人影に見知った顔が...しかもその一人は、私の良く知る人物だった。
サクヤ「何が適材適所ですか?」
サージェ「そうですよ!アレのが何処が仕事なんですか?!」
セシル「えぇ〜!?嫌だったの?」
サージェ「うぅ!?」
モーリス「良いなぁ〜」
クレア「後半に〜続くぅ♪」
三歳「(あ、俺の出番が...)」
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