14話 あからさまな陰謀 後編
「今から馬の蹄のような形をしたキノコを探すわよ」
「キノコですか?」「そうよ」
森に向かいながら、私はツリガネタケの特徴を説明する事にした。
「表面はキノコとは思えないほど硬いから直ぐ分かる筈よ」
そうやってキノコの特徴を伝えた後、今度はありそうな場所を言おうとして私はふと気付く。
「モーリス、さっきの硬い木の棒はどの辺りで見つけた?」
「それでしたらサージェがあの辺りが良いだろうと...」
そう言ってモーリスが指差した場所へ行くと
「当たりよ♫」「びんご?」
ソコにはツリガネタケが複数生えていた。
早速私はそのキノコを取ろうとするが
「か、硬い」「殿下...代わりましょうか?」「そうね、お願いするわ」
思った以上に硬かった。そう言えば...大きなツリガネタケは鋸でないとキツいと、当時読んだ本に書いてあったっけ。
(そりゃナイフじゃ手間が掛かるわ)
前世の記憶を呼び起こしながら、私がそう考えていると
「で、殿下...この大きなモノではなく小さめのモノでも「良いわよ」...了解です」
モーリスが振り向きながら嘆願してきたので即刻許可する。
言われて思い出したが、大きいモノは逆に中がスカスカだったりする可能性がある為
「モーリス「取れました!」早っ!」
私は取る大きさを指定するのに話しかけようとしたら、もう取れたと言う。だが
「コレはダメよ」「あ〜やっぱり」「モ〜リスゥ〜?」「スミマセン」
彼が取ったのは表面が灰色になった古いモノだった。だがその後言った彼の言い分にも一理ある。
「良いわよモーリス。そうやって考えて行動すると、ただ正解を覚えるだけよりも理解が深まるのよ」
彼は取り方を模索するのに敢えて劣化したモノを選び、その構造を知ろうとしていた。そんな彼を褒めつつ私は
「取る前に観察して欲しいのよ」「はい!」
彼に卵くらいの大きさを選び、ツリガネタケに小さな穴が開いてないか見てから取るよう指示する。
するとその理由を聞いてきたので、その穴が虫によるものだと説明すると
「虫に喰われたモノは使えないんですね」「そうよ」
中身層がやられている事に気付き、大きいものはその中身が変質している可能性にも視野が及んだ。
「殿下は最初、その大きなモノに取り掛かってましたけどね」「ウルサイ」
そんな風に試行錯誤も交えながら一つ、また一つとツリガネタケを採っていく。
「結構採れたわね」「は、はい」
疲れただろうモーリスを労いながら、私が採れたツリガネタケを選別していると
「軽いモノはダメなんですね」「そうね」
私が使えないと判断したモノを見て、彼は落ち込んでしまう。
「別に虫食いじゃないわよ。何らかの理由で中身が乾燥しちゃったみたいね」
「成る程!分かりました」
そう言って再び彼は生えてるツリガネタケを選び、ナイフを石で叩き食い込ませてからもぎ取る。
「コレでどうですか?」「良いわね!どうして分かったの?」
「硬い層を抜けた時の手応えで、何となくですが」
そして今分かったのだが、その感覚で採りやすいモノを選んでいたらしい。
「だからダメなモノの方が多かったのね」「面目ありません」「謝らなくて良いわ、今のはどんなモノを選べば良いか言ってなかった私が悪かったのよ」
謝るモーリスに、私は自身の伝達不備だと告げる。
だが、採る時に良質なツリガネタケが選別出来るようになったのは大きな進歩だ。
必要分は確保出来たが、私はクードル商会で利用する分も持ち帰る事にして...
とりあえず私とモーリスはポケットに入るだけ持っていく事にしたが、ソレだけでは少ない。
仕方なく私はスカート...では無く練習着の裾を少しだけたくし上げ、ソコにツリガネタケを乗せていると
「で、殿下!?俺の上着を使いますのでお止め下さい!」
そう言ってモーリスは自分の上着を脱いで袖の部分を結んだ後、まるで袋のようにしてツリガネタケを詰め込んでいく。そして顔を背けながら、私の持つツリガネタケもソコに入れるよう突き出してくる。
「ありがとうモーリス」「いえ、どういたしまして」
真っ赤な顔をして言うモーリスに私は自分が何をしたか知り、思わず赤面するが極力平静を装う事にした。
戻る道すがら彼に
「モーリス、アナタがさっき試験官に抗議しようとした事だけど...」
ソレもカマーセたちが、今回仕込んだ策略の一つである可能性を示唆する。
すると彼は思いの外冷静に答えてきた。
「ヤッパリそうなんですね」「ヤッパリって」
頭に血が昇った瞬間は分かってなかったが、私に止められた時にそう感じたそうで
「最初はいつもの嫌がらせかと思いましたが、殿下の一言でコレもアイツらの仕業なんだなと」
遅まきながらソレで察したと言う。
「そう...まぁ良いわ」「良いのですか?」「良くないけど、今はまだ良いわ」「はぁ...」
私はモーリスの少しづつだが変わっていく様を見て、これからの成長に期待する事にした。
「アイツら...何をトチ狂ったのか知らねぇが、さっきから森の中を出入りしてやがるぜ」
「まぁ、あの野営セットでは何も出来ませんからね。代用品を求めているのでしょうが...今回の試験はその野営セットを使わなければ、失格ですからね」
ナジルがセシルたちの班を見て馬鹿にしているが、殿下は冷静に彼らの動向を観察していらっしゃるご様子。
「あ、アイツらはどうやっても失格なんですね」
「さっき殿下がそう言ったじゃねぇか!お前は黙って火を起こせよ!」
そんな私たちのやり取りを見て無能が会話に入ろうとするも、馬鹿が火起こしに集中しろと怒鳴った。
だが殿下はそんなナジルに
「ナジル、そんな風に言うなら君が火を起こしなさい」
「えっ?!」「出来るからそんな風に言ったのでしょう?」
ケナスに代わって火を起こすよう命令する。明らかに動揺しているのが目に見えて分かるのだが、自尊心の強いナジルはソレを悟られまいと声を荒げつつケナスと入れ代わった。
「オラッ!ちゃんと持っとけよ!」「なんで手伝わせるんだよぅ」「ウルセェ!日が暮れてからじゃ遅いんだよ!」
馬鹿でも日没までには焚き火を行わなければならない事くらいは分かっているのだろうか?それとも本能でそう感じただけなのか...だが彼らに任していたらチャークロスに火が着いても、直ぐに消してしまうだろう。
私は仕方なく彼らを手伝おうとすると
「私がやろう」「...殿下」
殿下は私の肩に手を置き引き止めた後、自らが火を起こすとおっしゃられた。
その時手に持っていたナイフを私に手渡しながら...
馬鹿と無能の元に歩み寄り下がらせた後、殿下は先程まで握っていた木の枝を一本だけ赤くなったチャークロスに重ねた。ソレ以外にも枯れ草や枯れ木を予め木の枝で組んだ焚き火台へと乗せる。その上に先程までナイフで大量に作っていたササクレのついた木の枝を焚き火台に被せていく。そして赤くなったチャークロスを先程置いた木の枝で、すくい上げるようにして焚き火台の上に置き息を吹きかけると
「おぉ!」「凄い!」「さすが殿下」「まだコレからだよ」
そう言って薪にする為拾っておいた木の枝を火種に当たらないよう組んだ後、また火種に息を吹きかけていく。そうして段々と火は大きくなり
「こんなものかな?」「「「素晴らしいです!殿下!!」」」
私たちが殿下の手際の良さに感動していると
「アッチも火起こしできたみたいだね」
「えぇ!?」「嘘だろ?!」「どうやって?!」
殿下が落ち着いた様子でセシルたちの方を見て、一言そう呟いた。
サクヤ「上着を脱いで使うシーンですが、襟元からこぼれ落ちませんか?」
セシル「ソコは簡単よ!片方の腕の布地を上着の中を通して反対側の腕に通せば落ちないわ」
サージェ「ソレをよくモーリスが咄嗟に思いついたね」
モーリス「山で木苺を取った時なんかに良くそうしてたんだよ」
サクヤ「経験談でしたか」
リア「ソレはそうじゃろう。尤もセシルも似たようなモンじゃが」
セシル「リア⤴?」
クレア「続きます♪」
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