13話 あからさまな陰謀 前編
「それでは各自指定された区域に移動、及び野営に適した箇所の選定を行え!以上!!」
そう言われて各班は自分たちが指定された場所へと向かう。
因みに指定された場所は各班の成績によって難易度が選ばれており、一番下位の成績者は移動などほぼ無く今見えている河原で行うそうだ。
それよりも気になった指示が一つ...
「必ず手渡された野営セットを使え。現場調達したモノだけを使用した場合は失格とする...かぁ」
「それと魔法も厳禁だそうですよ?」「ソレも言ってたわね」
そんな私の独り言にサクヤがツッコミを入れてくる。今回は非常時での生存能力を視る試験だそうだ。具体的な知識を知る為なので魔法はご法度らしい。
「それでも最低限の知識だけは講義されましたからね」
「あんなの教えられた内に入らなくないか?」
私とサクヤの言葉を受けサージェが一言漏らすと、モーリスがその内容に疑問を持つ。
確かに軍学校へ入学してくる生徒なら既に知っていてもおかしくない事を今日の野営試験前の講義で受けさせられた。まるで念を押すかのように...
『実際念押しだったのじゃろう』
そのリアの言葉は、目的地に付いた時に手渡された野営セットを見た瞬間...現実味を帯びる事となった。
「ソレでは二班とも指定された区画内で作業を開始せよ!」
そう追従してきた教師が言うな否や、もう一つの班は迷う事なく場所取りを完了させる。
「やはり試験官と繋がってますね」
「でしょうね」
その動きを見ながらサクヤが私の耳元で囁く。
サージェも一発で確信したのだろう。そのあまりのわかり易さに両手を広げ肩をすくめる始末だ。
その動きが癇に障ったのだろう。
「お前らはアチラに行け!近過ぎる場所に設営してはならん!!」
そう言って試験官が指差してきた方向は川向こうだった。
「ちょっと待ってください!流石にアノ場所は...」
「口答えするな!私はソチラからお前たち二班を監視する。ならばアノ場所しか空いておるまい」
尚も続けて言い放った試験官は、口元をニヤリと歪ませる。
「行きますよ、サクヤ」「...承知しました」
私の言葉にサクヤはこの試験の在り方に憤りを見せながらも、この場は素直に従った。
仕方無く私たちは川向こうに渡り、テントの設営に取り掛かる。
「思っていた以上にあからさまですね」
「元々そうだったというのもあるわよ」
試験官の態度に不満を口にするサージェ。そんな彼に私が気にする必要は無いと告げようとすると
「殿下、コレを見て下さい」
サクヤが近付いて来て、私に袋の中身を見せてきた。
本来なら汎用ナイフに火打ち石、着火剤として炭化した布が入っている筈なのだが
「コレは...酷い錆だな」「オイオイ!コレただの石だぞ?!」「ソレだけではありません」
錆びたナイフに学校の校庭に転がってそうな石、そして極めつけはサクヤが指摘したチャークロス...
「コレは、ただの黒い布です」
そう、コレでは例え火花が出ても、着火剤としては使えない。
「やられましたね」「執拗に野営セットを使えと言っていたのはこの為か」「俺...ちょっと抗議して来ます!」「やめなさい!!」
モーリスが抗議に行こうとするのを私は声を荒げて止めた。
「モーリス...アナタがそうやって抗議に行くのも、彼らの計画のウチかもしれないのよ?」
「ソレはどういう事ですか?!」
私は彼の質問に答えるよりも先に、サクヤに確認する。
「サクヤ?このナイフを研げますか?」
「ソレは...先に錆を落としてからでないと」
するとサクヤはこの辺りの石...というより岩はゴツゴツし過ぎで、火打ち石モドキは丸すぎて時間がかかると言う。なので私は
「モーリス、そこの森に入って硬い木の棒を拾ってきて」「はい?」「いいから取ってきて!」「はっ!」「サージェも手伝ってあげて」「はっ!」
男二人に硬い木の棒を取ってくるように言い付けた。念の為サージェを付けたのは拾えない場合、生木を折るという手段を取らせない為だが果たして気付くかどうか...
その間今度はサクヤに
「錆を落とす時だけど...」
川に入り底から細かい泥のようなモノを掬って錆びたナイフにかける。
「今から二人が持ってくる木の棒でこの泥の部分を擦るのよ」
「成る程、この泥が研磨剤の代わりになるのですね」
そして感の良いサクヤは私の言わんとする事に即座に気付いた。
そうこうしている内に二人が戻ってきたので、私はサージェにサクヤを手伝うよう指示してモーリスには私と共にもう一度森の中へ入るよう告げる。
と言ってもナイフが無いと目的のモノの採取は難しいので、私たちはテントの設営をしながらサクヤたちがナイフを研ぎ終えるのを待つ。
そうこうしているとサージェがコチラに来てナイフの仕上がり具合を見て欲しいと言ってきたので、私はモーリスにも声をかけてサージェと共にサクヤの元に向かう。
「ナイフは?」「この通り」
試験官と言いつつ半ば我々への監視員と化している教師の方を警戒しながら、私はサクヤに研いでもらったナイフを確認する。
「やるわねサクヤ」
「お褒め頂き光栄で御座います」
予想はしていたが...サクヤは錆を取る為の泥を採取する時、平らな石も探しておりどうせ選ぶなら燧石か石英を選ぶのではないかと思っていたのだがその予想は的中した。
「モーリス?」「ハッ!」「この石英を割って頂戴」「は、はい?!」
どうやら割り方が分からないようなので、サクヤに教えてあげてと頼むと
「私も知りませんよ?」
「何でよ!?火打ち石代わりにこの石英を選んだんでしょ?」
私がそう言うとサクヤは首を傾げてしまう。どうやらこの石を選んだのは、たまたまだったようだ。
とりあえず手渡された使えない火打ち石を岩の上に置き、サクヤが砥石代わりに選んだ石英をモーリスに担がせる。そして両手で端を持ちながら置いた石へ垂直に落とさせると
「「「おぉ〜」」」
綺麗に真っ二つとなる。更にその断面に錆を落としたナイフの背を擦り付けると
「火花が出た!」「へぇ〜」「なるほど」
ガリガリっという音と共に火花が散った。
「次は火種作りだけど、皆当てはある?」
そう私が聞くと三人とも試験官の方に視線を向けてから
「黒い布を火口にするのは」「無理ですね」「いっそこの棒で火を起こすのは?」
思い思いに口を開くが解決策は出ず...因みにモーリスの案は始めから却下である。何故なら
「最初に言ったではありませんか」
「そもそも弓錐式発火が可能ならナイフの錆など落とさないよ」
今二人が言ったように、手渡された野営セットを使わないといけないからだ。
そこで私はサクヤとサージェにテントの設営を終わらせるよう指示をする。
そして
「モーリス、今から二人で森に入るわよ」
「分かりました殿下」
私は先程の宣言通り、モーリスと共に森の入口へと向かうのだった。
セシル「ふふん♪やっぱコレよね♫」
サクヤ「最初から最後まで居るのは(ひぃふぅみぃ...)」
セシル「数えないで!!」
リア「居るだけではないぞぇ?」
三歳「そうだな。終始セシル視点なのは(ひぃふぅみぃ...)」
セシル「だから数えないでってば!」
クレア「続きます―――ぅ(フェード・アウト)」
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