12話 動き出すそれぞれの策謀
「それにしても...ドール家はしぶといですね」
「何がですか?」「当主が降格し、家格まで落ちたにも関わらずですよ」
カマーセ殿下の独白に思わず聞き返してしまった私に、殿下は視線をセシルたちから外さないまま先程と同じように答えてくれた。
因みに今は授業中なのでケナスもナジルも静かにしている。彼ら二人には授業を阻害せず適度にやり過ごす等の能力は無いと殿下に通達された為、ソレ以後彼らは教室での授業中話す事を禁じられた。
「バトゥ?」「はい?」「明日の野外授業で仕掛けますよ」「はい殿下」
今も眼の前で伝えられている明日からの野外授業...
主に環境適応力をみる為のモノらしいですが...
学校側が用意した野営装備だけを使用するのが条件で自前の道具、特に魔具は全面使用禁止で発覚し次第単位は無しになるそうです。
「殿下、我々の野営装備は「大丈夫ですよバトゥ。今回の野営セットは全てクラウン商会が取り仕切ってますからね。当然アチラの班の野営セットも」ふふふっ...素晴らしいですわ殿下♪」
私が殿下に確認をするまでもなく、既に手は打ってあるご様子...
しかもアチラにまで...
明日私たちが一番になるのも、セシルたちが最下位になるのも...
「決まったようなモノですわね♪」
「楽しみですね」「えぇ殿下」
私と殿下は、声に出して笑うのを堪えるのに必死になるのでした。
『気持ち悪い』『アレは気持ち悪いのぅ』
正直カマーセたちを見る気はなかったのだが...
モーリスがアレを見て「うげっ!」と声を上げ、サージェが鼻で笑った為釣られて見てしまったのだ。
「絶対に何かやってくるわね」
「対策ならお任せ下さい」
そんな彼らを見てサクヤは自信満々受けて立つつもりのようだが...
(学校側もグルな気がするのよねぇ)
サクヤを見ながら私はそんな事を考える。そしてその予測は現実のモノとなった。
「本気ですか?!」
「えぇ、ですから殿下たちは別に来なくても...」
ヴァンの物言いに待ったをかけるべく私が再度確認しようとするも、彼は私たちに来なくても良いと言いたげで...
「ソレでは今まで私たちがやって来たことは「別に必要とはしてませんでしたが?」っくぅ!」
確かにヴァンの言い分も分からなくはないのです。どちらかと言えば私たちが首を突っ込んでなかった方が、より多くの証拠を集めれたような気はしていましたし...
「絶妙に邪魔ばかりしてましたもんね」
「私たちは被害者ですよ?!」
尚も私が思案していると、サミーが余計な一言を嬉々として宣う。
「ですが私たちが集めた情報もアナタは手に入れたのですから、私たちを連れて行く義務はある筈です!」
「その情報は殿下があの場に居なければそもそも普通に手に入っていたモノで、寧ろ余計な手間が増えたような...」
ええぃ男のクセに細かい事を...
「細かくてすみませんね」
どうやら声に出てしまったようです。
(仕方がないですね)
私は最終手段に出る事にした。
「そんな!今までずっと私を利用しておいて...最後はお払い箱ですか?!」
「ちょ!ちょっと殿下?!」
私は立ち上がってワザと大げさに声を荒げ、お払い箱と言う瞬間だけチラリと一階を見下ろしながら言い放つ。
当然何事かと酒場に居る客たちが一斉にコチラを向き、当然のように静まり返った。
私はヴァンの方を向きながら今が好機と、席に座ってから言葉を続ける。
「私にあれやこれやと尽くさせて、飽きたらお捨てになるのですね?」
「でっ...いや、お待ち下さい」
静まり返った手前、ヴァンは私を殿下とは呼べない。幸い私は今日着替える間が無かった為、ハビット姿である。いつもなら子どもにしか見えないだろうが今なら小柄な女性に見えるだろう。
(おいおいあの色男...幼女趣味か?)
『(大人には)見られてませんね』『黙ってて頂戴!?』
サミーに突っ込まれるまでもなく、酔っぱらいの声は私にも届いています...がソレは目の前に居るヴァンも同様で...
「とりあえず出ましょう」「この雰囲気で?衆目を集めたまま?」「...はぁ、どうにか出来るのですか?」「勿論♪」
ヴァンはこの場を去りたそうにしたが、このままで出るという事は、ハッキリと酒場の皆に見られる事を意味しており...
観念したヴァンは私に救いを求めてきた。計画通り事を進める為にも私は
「何か言葉が足りないのでは?」「(ジ―――)連れていきますよ」「何処に?」「お望みの場所に」「ありがとう♪」
ヴァンに同行する許可を出させる。言質を取った私は大げさに礼を言ってから
「ロイ?追加注文をお願いします」「は、はははい」
何事もなかったように食事を進めた。すると仲直りしたのだと勘違いした客たちは、一斉に興味を無くして元の喧騒を取り戻す。
『ロイ可哀想』『仕方ないでしょ?』『私より悪魔なんじゃないですか?』
せめて小悪魔と言って...と思いつつロイを見ると、何だか本当にしょんぼりしているように見えますね。
(あとで少しだけ相手をしますか)
仕方ない...部下の精神衛生も上司の努めです。そう思っていると
『本当に小悪魔になるんですね?』『なりませんよ?!』
サミーが馬鹿な事を念話してきましたが、私は平静を装いながら食事を続けるのでした。
「それでは行ってくるわね」
「お気を付けて、お姉様」
私は「外ではお兄様ですよ?」とランシェに釘を刺しつつ、妹たちに見送られながら馬車に乗る。
「それにしても男と女で一泊とは」
「別に良いじゃない?令嬢扱いは嫌なの?」
私がサクヤにそう言うと
「我々は殿下をお守り致します!」
「いや、そこは上手く誤魔化せよ?」
モーリスが馬鹿正直に私を守ると言い出す。そんな脳筋2号にサージェがダメ元でツッコミを入れた。
「今回は楽な狩りになりそうね」
「油断大敵ですよ?」「あら?懐かしい言葉」
馬車に揺られながら私が勝ち筋の視えた陰謀に言及すると、サクヤが日本の四字熟語を口にする。
「仏教由来の言葉...故事成語だっけ?」
「違います!故事とは唐土の事を指す言葉ですよ!」
モロコシ?とうもろこしと関係あるのかな?なんて事を考えていたら、サクヤが
「食べ物じゃないですよ?」「何で分かるのよ!?」「はぁ」
リア並みに私の思考を『今のは誰でも分かるじゃろ!?』『そうなの?!』「そうですよ」...どうやら分かり易かったようだ。
因みに...聞こえない筈のリアのツッコミに同意したのは、サクヤだけでない。
サージェや、モーリスまでも頷いていた。
セシル「もう出番があるだけで良いとさえ思えてきたわ」
リア「ソレはもう末期症状ではないかぇ?」
サクヤ「今回は久々に全員出番があったのでは?」
アヴェイル&カーウィン「全員だと?!」
三歳「あっ...嫌な予感」
クレア「続きまぁ〜す」
隣の部屋(ゴゴゴゴゴ...)
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