10話 出る杭は引っこ抜かれる
「以上が昨日あった出来事になります」
サージェが私に朝から報告したい事があると言って昨日の出来事を告げてくる。
その内容はサクヤからの報告書と、念の為ランシェから聞き取りした内容に相違無かった。
だが、サージェの眼はまだ何かを言いたげにしている。
「まだ何か言いたそうね?」「流石殿下、隠し事は出来ませんね」「世辞は良いから早く言いなさい」「はい」
私が促すとまるで公宮内を彷彿させるような仕草をするので、私は教室の扉を見ながら早く言うよう催促した。するとサージェは姿勢を正し、手短に話し出す。
「ヴァンと呼ばれた男の視線が、尋常ではありませんでした」
「具体的には?」「任務以外にも、何か秘めたる決意を感じました」
ソレを聞き、私は再びヴァンの履歴を思い出す。
『(ヴァンの素性を)知ってる訳ではなさそうね』『それはそうじゃろ』
私はリアのツッコミを聞き流しながら、サージェにまた何か気付いたら知らせるようにだけ告げた。
それと同時に教室の扉が開くとモーリスが入ってくる。
「カマーセたちが来ました」「そう」「嬉しそうだね」「なんか斥候気分で楽しい」
私はモーリスに笑顔を向けながら軽く返事をした。ソレをサージェが揶揄するのだが、モーリスは素直に喜ぶ。私はそんな彼を見て『今だけだよ』と思うと同時に、ちょっと可愛いと感じた。
『馬鹿な部下程可愛いというやつかぇ?』『そうかもね』
ガラガラガラガラ「チッ!?」
そしてモーリスの報告通りカマーセたちが入室してくる。
私は『コレにもいつか慣れるのでしょうね』と思いながらも、辟易する事に変わりはないのだろうと感じ思わずため息を吐いてしまった。
「今日こそお買い物を済ませたいですわ」「そうですね」
私は今日もロイを伴って雑貨屋を訪れました。昨日変な幇間貴族に絡まれて時間を無くしてしまいましたからね。
そうして雑貨屋の入口に立つと、奥には一人の衛兵の姿が...
その背格好から嫌な予感がしたのですが
「隊長?」「ロイか...私はもう君の上長では無いのだから隊長呼びは止めなさい」
ロイが話しかけてしまいました。そして隊長呼びを禁じられた彼が、呼び方を思案しているのを横目に
「エマ様、今日もご機嫌麗しゅう「麗しくありません」えっ!?」
挨拶してきたヴァンに私は思いっきり不機嫌な態度を取る。もう面倒くさいので
『サミーこっち来て』『はぁ...』『わざわざ念話でため息吐かない!』
「ロイ...ヴァンの事は任せるわ」「は、はぁ」「いや、私はもう職務に戻りますので」
サミーを呼んでロイと交替してもらった。そして立ち去ろうとするヴァンに私は視線だけで釘を刺す。すると観念したのかヴァンはロイと共に店の端に寄って何かを話しだした。
そうして三日越しで欲しいモノを購入出来た私が店の入口まで行くと
「必要なモノは購入出来ましたでしょうか?」
「えぇ、やっと買えましたわ」「それは良かった」
ロイしかそこには居らず、ヴァンの姿は無かった。仕方がないので、諦めて帰路に着く事にする。馬車へとエスコートされ、乗ってから私は改めてロイに問いかけた。
「ヴァンはなんと?」
「昨日他に何か変わった事が無かったか確認に来たそうです」
私は「そうなのね」と言いながらも、昨日サージェに見せたヴァンの視線を思い出す。
『絶対何かあります』『そりゃ何かはあるでしょうね』『茶化さないで!』
心の呟きにツッコミ入れるサミーを余所に、私はサージェの言った言葉
『単独で...この問いに、ヴァンは強い反応を示したわ』
その2つを思い描きながら、思考を巡らしていると
「また、首を突っ込むのですか?」
「しません!?報告するのに(思考を)整理してるだけです!」
サミーが今度は声に出して突っ込んできた。つられて私も口に出して反論してしまいましたが、でもソレはロイを巻き込む為の策だと気付く。
「ねぇロイ?ヴァンが一人で公都に居るのって...普通なの?」
「それは...通常任務では有り得ないですが...」
問いに答えるロイが口にした推測の中に、一つ気になった事があり
「まだ昼前よね」「やっぱり(首を)突っ込むんじゃないですかぁ〜」
私が公都の北側を見据えながら呟くと、何故かサミーは絶叫しロイが肩を落とした。
「居ましたよ」「やっぱり!」「どうして分かったんですか?」
サミーの特殊能力を使って私はノース家周りを調べてもらう。するとヴァンはアッサリ見つかった。
ロイがサミーをサクヤさんを見るのと同じ眼で見ながら、私にも質問してくる。なので私は先にロイの疑問に答える事にした。
「サージェって人がヴァンに向けて言った...単独で...って言葉。その時に、ヴァンが一瞬凍りついたように見えました」「それだけで?」「その後彼を見ていたサージェも、何か探るような眼をしていましたわ」
私が答えると、ロイは眼を丸くして固まってしまう。見た目はカーウィンに似てるけど、この辺りは全く似てませんね。なんて思っていると、見る見るロイの表情が落ち込んでいく。
『酷い女ですねぇ』『何がですか?!』『鈍感なのも罪ですよ?』
私はサミーの言葉に何が言いたいか理解しましたが、今はそんな事よりもヴァンの狙いが何なのか探る方が大事です。
「ヴァンがノース家を調べているのは明白です。そして昨日出会った幇間貴族は、ノース家五男の取巻きでした」
そこで言葉を区切った後、私は彼の任務内容を予測する。
「なので彼は今、カマーセたちを探っている。つまり、カマーセは何か悪巧みをしているって事です!」
「ちょうど今のエマ様のようにね」「私は悪巧みなんてしてません!」「似たようなモノですよ」
そしたらサミーはいつものように念話ではなく、声に出して突っ込んできた。先程同様、私も思わず釣られて声に出し反論すると
「こんな所で...何をしているのですか?」「「ヴァン?!」」「隊長は止めなさいと言ったでしょう」
馬車の窓の外に、私服姿のヴァンが立っていた。
「どうしてこんな所に?」「ソレは私が今お聞きしたのですが」
そう言いながらも、ヴァンはこれから遅めの昼食を取りに出かける所だと答える。そして
「何故ココに?」「いや...たまには私たちも外食しようかなぁ...と」「こんな貴族の住宅街に?」
苦しすぎる言い訳は当然通じる筈も無く
「ソレを言うなら、アナタはどうしてこんな所で私服に着替えれたのかしら?」
「親戚の家が直ぐソコに有りますから出張費削減です。昼食と言いましたが、厳密には夕飯みたいなモンです」
私の質問返しに、ヴァンは夜勤明けだと主張してきた。そうして次に口にした言葉は
「セシル様に報告して来ますね」「ソレだけは止めて下さい!!!」
私たちは、ヴァンの軍門に下ったのでした。
セシル「(出る杭は)打たれないんだ」
リア「ある意味打たれてもいたがのぅw」
三歳「因みに幇間は太鼓持ちとかそんな意味ね」
サクヤ「難しい言葉を使うの止めれば良いのに」
三歳「長ったらしい言葉を使うと話の流れが途切れるでしょ?」
サクヤ「難しい言葉を使う方が意識を持っていかれて話の内容が頭に入ってきませんよ?!」
三歳「一度入ってしまえば持っていかれないから!?」
リア「ソレは暗に数回読めと言っているようなモンじゃぞ?」
セシル「それくらいのファンが付けば良いけどねぇ」
クレア「また来週〜♪」
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