5話 ドゥンメ・アンペル...暗躍?(プアリー・ヒィドゥン)
クレア「何ですか?この赤黄緑は?」
セシル「そのまんまよ」
クレア「はい?!」
三歳「ソレがそのまんま渾名なんだよ」
クレア「へぇ〜!?」
エマ「始まります♪」
クレア「あ!?私の仕事なのに〜!」
「アイツら...やりやがったな」
本人はドスを効かせたつもりらしいが、赤髪の男子生徒が甲高い声で言う。
「あぁ、コレは...報告しないと」
ソレを受けて自信なさげな黄色頭の男子生徒が、モジモジしながら訴える。
「当然よ」
最後に緑色の髪を振り払いながら、女子生徒が枯れた声で答える。
教室の一角で、不穏な動きを見せる三人。
「誰が行く?」「お前に決まってんだろ」「なっ!?貴様...」「次男風情が粋がるなよ?」「バトゥ様...」「お前が行きな」「...はい」
黄色頭が自信なさげに提案すると、赤髪の生徒にイビられた。そんな黄色頭が緑髪の生徒に縋るも、逆に一蹴され命令される。
「さっさと行けばいいのに...ウスノロが」
「あんまり偉そうにするんじゃないよ、男爵の長男風情が」「ああん?」
そんなケナスを見くびるようにして野次るナジルに、バトゥが家格でマウントを取る。
「女の身で偉そうにしてんじゃねぇぞ」
「その女に命令権があるのをもう忘れたのかい?」
しばらく睨み合った後、ナジルが「チッ!」っと舌打ちをして前を向くと
ガラガラガラ...ガラガラガラ、ピシャン!
プラチナ...と言うには色素が薄くただの白髪のような、細身を通り越してガリガリの男子生徒が教室に入ってきた。その後ろに、さっきの黄色頭が追従し扉を閉める。
「やれやれ、ナジルの声は良く通るね。廊下にまで聞こえてきたよ」
「ぐっ...申し訳ありません」「ふんっ!」
見た目同様力のない声で喋る細身の男子生徒に、バトゥが寄り添い鼻息荒くナジルを見下す。
するとその細身の生徒が
「バトゥ?袖を引っ張るのはよしてくれ。伸びてしまう」
「...!申し訳ありません、カマーセ殿下」「分かれば良い」
軽く摘んでいるようにしか見えなかったバトゥの手を握った。
そしてなぜか撫で回す。
『もう良いのじゃ。そんなモノ、実況するでない』
『あら?つまらない授業より面白いのに』
私が折角意識して、リアに教室内のやり取りを実況中継してあげたのに
『今は朝礼前の空き時間じゃろうが?!それよりも、眼の前の二人をちゃんと見てやれい!』
『それはサクヤがノリノリで楽しんでるから任せてるわよ』『気を緩めるなと言うとるんじゃ!』
そんなリアの子守をしながら、私は今日も平穏な日々を過ごすのでしょう。
『だぁから、そのアホな実況中継を止めよと言うとるんじゃあぁ―――……!!!』
「まぁったく...お主は学校とやらに、何しに行っておるんじゃ?」
「それは...手駒を増やしに?」「それはたまたまじゃろうが!?」
今日も...呼ばれてしまった。僕の隣にはモーリスも居る。
そして目の前に居る、殿下を女の子にしたようなエルフが一人...
それ以外にも...
そんな事を考えるより、正面に広がる光景に僕の眼は夢の世界に囚われたようだ。
あれは...ドワーフ?あっ!めずらしい!女性のドワーフまで居る!
あそこにいるのは...えっ?今、壁を抜けなかったか?
ゴシゴシ...
気の所為か...珍しいモノを見すぎて興奮しているようだ。
そんな風に思っていると
「坊っちゃん?サージェ坊っちゃんではありませんか?」
「ヨゼフ?...ヨゼフじゃないか!?どうしてこんな所に?」
目の前に...元使用人が居た。でも、どうして鉱山に?
「もしかして...坊っちゃんはセシル様にお仕えなさったのですか?」
「あぁ、そうだよヨゼフ」「なんと!これは喜ばしい!」
ヨゼフは僕が殿下にお仕えした事を心から祝ってくれているようだ。だが僕は彼を見たおかげで、現実へと引き返せた。
「ヨゼフ、刑期は明けたのかい?」「まさか!鉱山での仕事はヴェルノア様の恩赦で御座います」「へぇ〜…凄いね」
やはりそうだ。ココで働いているのは、多分冤罪で刑期を受けた者たちだろう。
勿論それだけでは無いだろうが...
「サージェ」「ハッ!お呼びでしょうか?」「そう堅くならんでも良い」
殿下に呼ばれて振り向くと、その隣には先程殿下と言い争っていたエルフの少女が居た。
僕に緊張を解くよう言ってきたのはコチラの少女だが、その言葉遣いはまるで年配の方のようだ。だが、その理由を聞いて僕は、腰が抜けそうになる。
「サージェ、実はココに居るエルフのような少女は...」
ホムンクルスで大精霊で...このドール家の守護者、引いてはこの世界で神のような存在であると告げられた。勿論他言無用であるとも...
「お前ならコレがどういう意味か、分かるよな?」
「はっ...身に余る思いに御座います」「だから固くならんで良いと言っておるじゃろうに」
殿下にココに連れて来られた意味を問われ、僕はある意味最高の栄誉を賜った事に冷や汗をかく。そんな僕の状況を確実に見抜いておられるのであろう。だから二度も固くならなくて良いと、大精霊様は僕を気遣って下さっている...
「この公国にとっての心臓部ともいえるモノを観させて頂き、恐縮しないでいろというのは...些か無理難題ではないかと...」
だが、どんなに気遣って頂けたとしても、裏切れない状況に追い込まれた事に変わりはない。
勿論殿下に仕えると決めた時、この命を捧げるくらいの覚悟はしたが...
「それもそうじゃな...セシルよ、ついでじゃ...ウィッグを取ってはどうじゃ?」
僕が気を置きっぱなしな状態から抜け出せないのは、貴方たちが国家機密と合わせて圧を強めているからだと...いい加減そう言いたくなってきたその時、大精霊様は殿下の頭を見なからソレを取れと言い出した。
一瞬何を言っているのか分からなかったが、答えは...強制的に示される。
「ん〜…そうね、そうしようかしら♪」
(ね?かしら?)
声のトーンが高くなって、凛とした女性のような声が殿下の喉から発せられたように感じた。
「嘘...だろ?」「嘘ではありませんよ♪」
殿下の手には白銀の毛毬が収まっており、その頭上には...
同じ色でありながら、艷やかに
天井から降り注ぐ青白い光に照らされ
その髪は...虹色に輝いていた。
「ほーぅ...コヤツ頭は良いのに、変装には気付けんかったようじゃの?」
突然現れた美少女に、僕は心を奪われてしまう。
「いや、コレはその...一種の防衛策と言うか」
僕は基本、人の眼は見ない。ソコに人の本質があると分かっているから...自分を視られない為だ。
だが、今回はソレが裏目に出た。視線を逸らせた先には跪き頭を垂れるモーリスが居て...慌てて僕もソレに倣う。
「二人とも、顔を上げて下さい」「「ハッ...」」
殿下に声をかけられ、ゆっくりと前を向く。すると殿下は少し屈んで、僕の眼を覗き込んできた。
「緊張は解けましたか?」「...はい?いや、えっと...」
さっきまでの恐縮した感じは、確かに霧散した。だが、今は別の緊張に心を支配されている。すると
「もう良いじゃろ。コヤツを縛っていたモノは無くなったようじゃ」
「それは良かったわ。これからよろしくね♪サージェ、勿論モーリスも」
大精霊様の言葉に応え、殿下が僕たち二人に最後の声掛けをし立ち去っていく。
そんなお二方を見送っていると
「俺は最後、オマケ扱いだったな」
となりでモーリスが何か言ったようだが...僕の耳には聞こえなかったようだ。
セシル「少ない」
三歳「どうした?」
セシル「久々なんだから!これからずっと私の番でも良いくらいでしょう?!」
サクヤ「人に働かせて遊んでたんだから充分でしょう?」
リア「我は遊ばれておったのか...」
クレア「(食い気味に)続きます!」
エマ「あ!(ニス湖で乱射した機銃を見つけて)コレ、私が撃ったのと同じヤツだ♪」
クレア「もう終わりですってば!?」
エマ「そうなんですか?では、また来週お会いしましょう♫」
クレア「(サ―――…)嘘でしょ?(血の気が引いた)」
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