4話 翻弄されるモーリス 後編
セシル「まだなの?」
三歳「これで(モーリス編は)終わりだから」
リア「一瞬の間が気になるのぅ?」
クレア「もうしばらくモーリス劇場にお付き合い下さい」
「だから、保身や妥協だけで君を助けた訳じゃないんだよ」
「本当にお上手ですね♪」「サクヤ嬢...」「うふふっ♪」
サクヤ様が何故サージェをからかっているのかは分からないが、コイツが俺の為に動いてくれたのは確かだ。
(あのままだったら、俺は潰されていた)
いや、まだ油断は出来ない。ノース家とその取巻きが何をしてくるか分からない。
そんな事を考えていると
コンコン
「どうぞ」「失礼します」
見たことある女児が来た。確か
「アナタ!どうしてここに?」「エマ!?ソイツは僕が引き立てたんだ」「お姉ぇ、っふぇふ...お兄様が?」
そうエマだ。そう言えば、伯爵家以下の貴族は知らないとか言っていたが...どうやら妹なのは本当らしい。
俺を打ったその女児が勢い良く眼前に来たかと思えば...セシル様に窘められ、変な咳き込み方をする。そんな女児にサージェが近づく。
「これはこれは...セシル様の妹君、エマ様でございますね?」「はい」
「私はカステル家の三男で、サージェと申します。以後お見知り置きを」
そして臣下の如き礼を尽くすサージェと、ソレに見事応えた女児。
(いや、俺はこれからドール家に尽くすのだ。エマ様と呼ばなければ)
そう思い直し俺もサージェに倣う。すると
「それはお受け出来ません」「は?」
エマ様は俺が礼をやる前から拒否した。何故だと訝しんでいると、サージェが耳打ちしてくる。
「(先に謝れよ)」「(あぁ!?)」
当然だ。俺はまだ、筋を通していない。改めてエマ様の方を向いて膝を付き、頭を垂れる。
「この度は、誠に申し訳ありませんでした」
「...お兄様がお許しになられたのなら、私もそれに倣います」
少し合間があったが...それは多分事情を知らぬエマ様に、事のいきさつを告げていたのだろう。
「ありがたきお言葉」「赦した訳ではありませんよ」「...はい」
俺は、この時改めて...自分の仕出かした事を思い出し、本気で悔いた。
『空気が重いわ』『我慢せい』『分かってるわよ』
そろそろ集中力が切れてきた私が嘆息したくなるのを我慢していると、リアがいつものように活を入れてくる。とりあえず...集中力を取り戻す為に
「サージェ」「はっ!」「君は臣下ではないのだから、学友らしく接してくれても良いのだよ?」「それが殿下の望みであるならば」
この空気を変えようと、僕は改めてサージェに声をかけた。すると彼は、早速僕の意を汲んで行動に移す。
「ですがセシル様?ゆくゆくは私を取り立てて下さいね♪」
「それは構わないが、君の父君がソレを許すとは...」
僕が敢えて言葉を濁すと
「大丈夫です。僕は三男ですし、冒険者になれと言われてますから...ね」
「どういう事だ?子爵家以下なら分かるが?」「セシル様」
サージェが大丈夫と言ってきた。でも...その答えが冒険者と言うのはどういう事なのかと聞き返すと、サクヤが割って入り僕に報告書のようなモノを見せてきた。
「...へぇ?こうなっているのか」
「失礼ですが殿下、私にソレを見せて頂く事は?」
報告書には彼の内情とカステル家の動向が記されていた。
サクヤに目をやると二枚目の方だけに視線をやり頷く。
「構わないよ」「ありがとうございます」
そう言って僕が二枚目の方だけ渡すと、サージェは一通り目を通してから一枚目を見て
「一枚目は差詰、僕の個人情報でしょうか?」
「サージェ?」「分かっております、サクヤ様」
見なくても分かるとでも言いたげに微笑んできた。勿論友好的に...
そんなサージェをサクヤが窘めようとするが、サージェが即答する事でソレを遮る。尚も続けて
「先程の質問に、もう少しだけお答えしましよう」
そう言って彼が語ったのは、父との確執だった。
「ありがとう...とでも言っておこうかな?」「勿体無き御言葉」
僕は彼が語り終えると同時に、一枚目も見せようと差し出す。だが、彼はソレをやんわりと断ってきた。
「私が今話した以上の事は一枚目に書かれていないでしょう」
確かに今サージェが話した事以上の事は書かれていない。正確には父との確執を知れば分かる事ばかりだと言い換えても良いだろう。
「サージェ、来たるべき日...お前に我が参軍となる事を許そう」
「拝命、確かに承りました」
サージェが僕の言葉に臣下の礼を持って応え、深く頭を下げる。
そんなサージェを見て
「わ、私も宜しいでしょうか?」「...許す」
「我が身命を賭して此処に!」
その隣で、モーリスも臣下の礼取る。
そして...そんな二人を見ながら、僕は鷹揚に頷いた。
ガラガラガラガラ...ドゥン...
公爵家の門が閉まるのを見上げながら、俺たちは学生寮へと向かう。
その馬車の中で、俺はサージェに今日のやり取りについて聞く事にした。
「なぁ?」「なんだい?」「今日聞いた話、俺も知って良かったのか?」
するとサージェは
「そんな事か」「そんな事で済まして良い話では「まぁまぁ」...」
たいした事では無いとでも言いたげに笑う。しかも続けて言った言葉が酷かった。
「君も殿下に忠誠を誓ったじゃないか?それっていざと言う時、命を差し出すって事だろ?」「勿論そうだ。騎士として最も名誉な事だろ?」「なら、君は僕より先に死ぬのが役目...それなら、今日聞いた僕の秘密くらい...対価としては安いものだろ?」「...はぁ〜?!」
コイツは役割上、俺の方が先に死ななければならないと...そう言ってきたのだ。
だが、確かにそうだ。俺は...コイツも守らなければならない。
なぜなら、将来コイツは殿下の元に就くと明言した。ソレは即ち親家に逆らうという事だ。
「分かったみたいだね」「あぁ」「だから僕は、君を助けたんだよ」「???」
コイツが殿下の前で言った事に、やっと理解が追い付いたと思ったら...
また、良く分からない事を言い出した。俺が分からないといった表情をしたからだろう。サージェは
「忘れたのかい?僕が普段から君を庇っていた事を?」「!...あぁ?!」
ちょっとイタズラっぽく、笑いながら言ってきた。その表情から俺はその意味を探る。
すると、その言葉の意味が...教室で言った言葉の理由を...
「サージェ?お前は最初から...」「サクヤ様も言っていただろう?」
今、ようやく理解した。俺は...
「最初から利用されていたのかぁ―――……!!!」
「僕だけだよ?モーリス♪」「嘘だぁ〜!!」
実際に最初からその気だったのはサージェだけだったのだろうが...
サクヤ様は俺を利用したつもりだったが、実はそれもコイツが仕込んだ策だった訳で...
どちらにしろ、俺が弄ばれる運命だった事に変わりは無かった。
モーリス「熊猫って何?」
セシル「熊猫の事よ!」
三歳「ドッチにしろ客寄せパンダが分からんだろ?」
サクヤ「そんな事より...私までサージェに踊らされていたのですか?!」
サージェ「まぁ...それは結果論だよ。サクヤを狙った訳じゃないからね」
リア「どちらにしろ、戦力が増えて重畳よのぅ♪」
クレア「来週こそ!私たちにも出番を〜」
全員「「「「「「(コレ...フリだわ)」」」」」」
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