2話 出来上がっていく聖女伝説の裏で咲くのは...
セシル「ねぇ...まだ主役の座...返って来ないんですけど?」
三歳「そうかな?」
エマ「ごめんなさい」
リア「ここまで盛大に奪うとは思ってもいなかったんじゃろうてw」
セシル「新章に入ったのに(シクシク)」
クレア「始まります♪」
「おやおや...公国の盟主だと自称している御曹司が、こんな所で何をしているのかな?」
嫌味全開な言葉を口に出来る馬鹿と思しき輩の声がした。
今、私はかなり気が立っている。そんな僕に舐めた口を聞いたんだ。正直憂さ晴らしをしたって構わないだろうとさえ思って...
バシン!
「無礼者!」「な、なんだこの女児は?」「口を慎みなさい!」
思っていたら、ランシェに先を越された。
「アナタ、お兄様の事を分かってて蔑んだ物言いをしましたね?」「だったら何だってんだよ!」「カーウィン、この者を捉えなさい」「はっ!」「なんだと?!貴様!平民以下の騎士ですらないものが「おだまりなさい!この痴れ者が!」だからお前は何様なんだよ!?」
それだけではなく、何故か捕物に発展してしまった。律儀に眼の前の犯罪者を捕縛するカーウィンを見ながら、私は仕方なく成り行きを見る事にした。
「私の名はエマ=クランドールです。お前みたいな下級貴族では、成人前の上位貴族の名の事など知らないでしょうけどね」
「くっ...過去の血筋にだけ縋る、神輿ですらなくなったお飾りの王族風情がよ!」
普段私が軍学校で味わっている口撃を受けたエマは、その言葉を聞いた途端...
私が一度も見た事の無い、無慈悲な笑みを浮かべた。妹は取り押さえられえている男の耳元で
「それは十二星家が勝手に担ぐのを止めて、簒奪に走ったからでしょう」
そう告げた瞬間、男の顔色が変わった。
「そこまでだ」「ベン、これは「アッチを見てくれ」...ヴァン!」
尚も言い募ろうとしたランシェが、抗議の声を上げようとして振り向く。だがベンは親指でヴァンを指していた。
「申し訳有りませんエマ様。勝手ながら、隊長を連れて参りました」
「大儀である」「寛大なるお言葉に感謝を!」
事態を把握したランシェは、大仰に振る舞うロイに合わせて公国式の謝意を示す。するとロイも合わせて公国式の礼を取った。だがソレを最後まで大人しく見ているつもりはないようで、馬鹿な貴族が最後に自分で自分の首を締めた。
「お前も犬に成り下がるのか?」「我が誉れを犬扱いした貴様は犬以下の大罪人ではないか」
「なんだと!?」「名誉毀損以前に不敬罪、下手をすれば反逆罪も有りうるぞ?愚か者が」
なんだと...と言う言葉は、続けれる状況では無くなった。
「何処の馬鹿貴族だ?」「聖女様に向かってなんて口を」
「正当な王家の血筋に向かって...あり得ねぇ!」
当たり前だが...
公然の秘密としてクランドール家が蔑まれているのは、貴族社会の中での話であり...
市井の者たちは、基本的に知らない者の方が圧倒的に多い。
「くそっ!コレだから下民は」「下民だぁ?!」「コイツ何様だ?!」
「やっちまうか?」「そうだそうだ!」「おやめなさい!」「聖女様...」
威風堂々って...こんな感じよね。我が妹様は...またも、やらかす気いっぱいのようだ。勿論、本人にその自覚は無い。ただただ、私の事が馬鹿にされて、腹を立てているだけなのだ。
「この者は、これから公国の法に則って裁きを受ける事が決まっています。ここで皆様が私刑を行なってはなりません」
「なんでだ?聖女様?」「そうだよこんな奴」「...なるほど」「どういう意味だ?」
「ここで俺等が手を出したら、減刑されるかもしれないって事だよ」「はぁ?!」
さっきから妹の発言が堂に入っているのもさるものながら、私は市井の中に煽動者が居る事に気付いた。
「アレはサクヤの手引でしょうね」「カーウィン?!いつの間に?」
ヴァンと共に来た衛兵たちと入れ替わったのだろう。カーウィンが定位置に戻ってきた。
そんなカーウィンが言うには先程から同じ者たち(2、3人)が民衆の暴走を止め、真っ当な雰囲気になるよう調整しているらしい。言われてみれば先程から、理解ある民衆も居るものだと思っていたのだ。
「アイツ...ココまで読んでたの?!」「それは違うでしょう」
私がサクヤの手腕に驚愕していると、カーウィンは笑いながら違うと言ってきた。
「仕込みはしていたでしょうが、狙ってこうなった訳ではないと思いますよ」
要するに、監視兼護衛兼情報操作...そんな事をやるよう命じられた間者が、あちこちに居る。
そういう事らしい。現に騒いでいた民衆は既に落ち着き、今は成り行きを見守っているようだ。
「それではエマ様、よろしいでしょうか?」「善きに計らえ」「ハッ!」
結局また、締めの所業はランシェが持って行った。
そして何故か...
「聖女様、万歳!」「これからのクランドール家に繁栄を!」「聖女様、万歳!」
万歳コールが始まる。
「コッチみんなよ」「「違うの?」」「ちげぇ〜よ!」「「......」」
聖女様万歳はベンだと決めつけ、私たちは同時に睨んだ。だが
「(サクヤの間者が)ベンの流布を利用したのでしょう」
カーウィンの指摘で私は納得する。しかし、事情が分からないランシェは
「大聖女って、言ったのはどちら様だったかしら?」
「だから、号令はかけてねぇって意味でだな...」
ベンに詰め寄っていた。そこで言った一言に、私とカーウィンは顔を見合わす。
「やっぱり大聖女呼びを利用されたっポイわね」「ですね」
ただ、いつまでもこのままって訳にもいかない。私は顔面蒼白になっている男に
「街中で軍学校と同じ振る舞いは不味かったな」
何故こうなったのか教えてやった。すると
「お、俺はこの後...どうなるんだ?」「裁かれるに決まってるだろう?」
「どうして?「親(の教育)を恨め」...う、うぅ...」「連れて行け!」「ハッ!」
不憫な男は、項垂れながら連行されていった。
「お優しいのですね」「エマ...」
連行される男を見送っていたら、ランシェが私に近づき不満を漏らす。
だが私は
「ソレは...どうかしらね?」「...はい?」
ランシェにだけ聞こいるように、ボソリと言った。訝しむランシェを見ながら私は不敵に笑った。
(衛兵詰め所の独房にて)
「酷い目にあったわね」「お前は...殿下の腰巾着か」
「あら、そんな事言うなら...助けてあげないわよ?」
その言葉を聞いた男の顔が、軽く跳ね上がる。だが
「助かる?あれだけの事をしたのにか?」
一瞬、眼に光が宿りかけたが...彼の眼は再び暗くなる。
どうやら思っていたより、使えそうだ。私はそう感じながら
「モーリス?アナタ...貴族階級について、何処まで理解しているのかしら?」
「サクヤ...ここまで来て俺を馬鹿にするのか?」「いいから答えなさい」
モーリスに救いの手を伸ばす。
「そこまで分かっていて...どうしてあんな事を...」
「うぅ...俺が...馬鹿だったんだよ」「そうね」「うぅ...」
やはり...子爵家の長子は伊達ではない。しかも、倫理観はしっかり育っている。
その証拠に...モーリスは私の質問に答える時、反省を交えていた。
それでもこうなってしまったのは、取り巻く環境が要因だろう。
後悔しつつも、彼は反省した事が窺えた。
「明日学校で、殿下に謝りなさい」「はっ?」「謝るのよ」
何を言っているのか分からない。そんな顔をしているモーリス。
そんな彼に私は...
これ以上無いほどの、冷徹な仮面を見せていただろう。
三歳「久しぶりの出番...張り切ってるなぁ」
サクヤ「やっと出れました」
セシル「ねぇ?私より見せ場が派手じゃない?!」
エマ「確かに...」
サクヤ「いや、大聖女様にはかないませんよw」
エマ「アナタまでいじるのね?」
リア「ここはそういう場であろうよ」
クレア「続きます♪」
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