25話 エマの冒険 聖女の再臨、伝説は今事実となる編
ランシェ「いやぁ―――!!!」
サミー「うるさいですよ!」
ランシェ「このタイトルは何?」
三歳「分かってるだろ」
ランシェ「...」
セシル「へー…」
ロイ「エマ様は素晴らしい聖女「やめてぇ!」エマ様?」
クレア「(出番が遠いですねー)始まります♪」
ロイの無くなった腕を擦りながら、私は小さな声で謝ろうとした。だが...
「私のせいで...」「ソレは違います!」
ロイは真剣な表情で私の謝罪を否定する。
ソレだけではない。その後に起きた事に関しても、彼は自分が悪いと言い出した。
「私の出自が、招いた事でもあります」
「おやめなさい!生まれは、選べるモノではありません!」
そんなやり取りをしていると
「お二人とも、お気を鎮めて下さい」
「「神父様...」」「グレアの言う通りです」
グレアとヴァンが、私とロイの口論に割って入る。
「あの状況は、どうする事も出来なかったでしょう。それでも責任があるとするなら、ソレは詰め所の長である私の責任です」
そう言ったヴァンの言葉に、ロイが反論する。
「あの人は、元から素行が悪かった!決してヴァン隊長の責任では「ロイ、ソレが長というものだ」しかし!」
「ロイ?静かになさい」「...すみません」
ロイの激情をまた、神父様が諌めると、今度はヴァンが私に謝ってきた。
「ムンカの事、誠に申し訳ありませんでした」
「アレは、先程ロイが言ったように、私もアナタに責があるとは思っていません」
「ですが...」
私はヴァンの謝罪に異を唱えつつ、燃えるような朝焼けを見ながら
「腐敗は、正さねばなりませんね」
ヴァンの消え入るような独白に合わせるように、私は昨日の出来事を思い出した。
「なんだ?そのザマは!?」
私がデムの治療をしながら、ロイの腕を診ていると
「腕、切り落とされてんのかよ!情ねぇなぁ」
私が衛兵詰め所に初めて寄った時...ロイと私の間に無理矢理割って入ろうとした、いけ好かない男がソコに居た。
「お黙りなさい!今がどんな時なのか、アナタは分からないのですか!?」「ああん?」
私が場を弁える以前の問題だと感じていると、不意にロイが立ち上がり剣を構えた。
「ロイ!何を?まだ血は止まっていないのですよ?」
私がそう声を掛けても、ロイはあのいけ好かない男を睨み付けたまま動かない。それどころか
「先輩...いや、ムンカ」「呼び捨てにしてんじゃねぇよ!腫れ物風情がよ!」
切っ先を向け、ムンカと呼んだ男を牽制しているように見える。すると
「兄貴!だいぶ(お宝)頂いて来たぜ!」
「そろそろずらかりましょうや」
周りからゴロツキのような風貌の男達が現れた。
その声にムンカはあろう事か、とんでもない事を言い出す。
「お前ら、最後の仕事だ。目の前の女と男、殺っちまぇ」
「ひょー♪」「マジか!」「いいねぇ♪」
集まった男共の目の色が二色に変わる。
「まだ殺り足りなかったんだよ」
「色っぽいネーチャンじゃねぇか」
コレはいけない。悪魔族が二柱居るとはいえ、多勢に無勢だと思っていたら
「エーやん応援呼んで来たで!」
「無事か?ラン嬢ちゃん」
小母様が叔父様とモールを連れて駆けつけてくれた。
「これは、厄介事じゃねぇか?マルヴェラ、下がってろ」
「あいよ!アンタらは(私と息子の)護衛よ!」「「へ〜い」」
駆けつけると同時に状況を把握したゲビックは、マルヴェラに下がるよう指示する。その後、眼でマルヴェラを宿屋に送った衛兵らに参戦するよう促した。ロイの同僚でもある彼らは、ゲビックの意図を感じ取り直ぐ様配置に着く。ロイにも感じた事だが、彼らは下手な騎士より動きが洗練されていた。
これだけの訓練を施したのは、当然ヴァンしか考えられない。そんな彼の手腕に感謝していると
「多少増えたが、問題ねぇだろ?ドッチにしろ、見られたからには生かしちゃおけねぇしな」
「ムンカ、貴様...」「うるせぇよ!貴族風情どもが!」
ムンカがコチラの増援に大した脅威を覚えなかったのか、さほど気にした様子もなくロイに目を向けた。元同僚の言葉に恫喝を向け、更に言葉を吐き捨てる。
「ロイよ...俺はこの時を待ってたんだよ。グスタフの忘れ形見の癖に、善人面しやがってよぉ!気に入らねぇんだよ!兄貴に似た面してるくせによぉ!」
「ムンカ...」「気安く呼ぶんじゃねぇ!忌み子風情が!」
ムンカがロイに向ける敵意は、何処か歪さを抱えている。
多分それは、ムンカ自身分かっていないのだろう。だがロイの口ぶりは
「俺は確かに、望まれて生まれてきた訳じゃい。母の記憶も無い」
ムンカに対して、何処か憐れみを感じさせる。
「だから何だ...俺も、お前も!似たようなモンじゃねぇか!」「違う!」
「ふざけんな!お貴族様だからって調子にのってんじゃねぇよ!」
そうか...二人は似た者同士でも、環境が違ったんだ。
「俺が妾腹の子だからって、馬鹿にしてんだろ?」「違う」
「だったら何で狂わねぇ?!俺より貧しい生活して、イビられてよぉ!?」
あぁ、そうか...ムンカはロイに、劣等感を感じてしまったんだなと...
ザシュッ!「ぐはっ!?」
鍛え方が違った。感情の赴くまま放ったムンカの剣戟は、素人目からしても余りにお粗末で...
「この...忌み子野郎...が...」「...ムンカ」
ロイが放った剣閃は、カーウィンも目を見張るものではないか?と思わせた。
二人の戦いが終わる頃には、他のごろつき共も地に伏していた。
こんな時、悪魔族は容赦無いなと感じていると
『ゴミ掃除は必要でしょ』
サミーが念話してきたので私は
『そうね』
と答えた。この時にはもう消火作業も終盤を迎え、騒ぎを聞きつけた冒険者や衛兵もやって来た。なので私はデムの治療を急ぐ事に専念する。が...
「デム?起きなさい!傷は塞いだわ。もう大丈夫なのよ?ねぇ?私と遊ぶんでしょ?約束した事、忘れちゃったの?」
返事は無い。それ以前に、鼓動が感じられない。私はデムの胸に耳を当てると、やはり心臓は動いてなくて
「戻って来なさいよ!両親が悲しむわよ?ねぇ?ねぇったら!」
私はお姉様に聞いた、心臓マッサージというのを思い出した。デムに呼びかけながら、私はゲビックに
「電気ショックよ!叔父様、何か持ち合わせは?」
「...ねぇよ。すまねぇな」「くっ!?」
電気を発生させる魔道具を持ってないか聞いたが、予想通りの答えだった。
「ひょっとしたらって思って、言えなかったんだけど...」
そう言ってサミーが口にした言葉は、今の私にとって...とても残酷だった。
デムは...ファレフォルに身体を乗っ取られた時にはもう、心臓が止まっていたらしいと...
サミーが言い淀んだのは、聖女の能力ならもしかして...と思ったからだそうだ。
私は仕方なく、今度はロイの腕を治す事にした。
「待たせてごめんなさい」
「気にしないで下さい。私の腕よりもデムの命の方が...」
そこまで言ってロイは口籠る。助けられなかった事を気にしているのだろう。だがそれよりも
「腕って再生出来んのか?」「えっ?」「ほれ」
セバスが切り落とされた腕を持ってきて、私に見せてきた。すると
「どういう事?」「あの、すみません」「ロイ?」
ロイが私に語った言葉に、一瞬目の前が暗くなった。ロイは私の眼の前に立ち、ファレフォルと対峙している時...自身の腕の異変に気付き、肘関節部分を自分で切り落としていたのだ。
「グズグズと、その...何かが這い上がって来る感覚がありまして...」
「良いのよロイ。アナタの判断は正しかったわ」「なんか、すみません」
良く見れば(見て後悔したが)切り落とされたロイの腕は、グズグズに溶けていた。
そうやって仕方なく、私はロイの腕の傷だけを癒やしたのだが...
まさかこの事が、さらなる悲劇を引き起こすとは...
この時はまだ、考えてもいなかった。
セシル「後何週間私はバカンスしてれば良いの?」
サミー「現実逃避しだしたわよ?」
ランシェ「お姉様...」
クレア「さっさと次行きましょー」
三歳「雑!?」
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