24話 エマの冒険 風雲急を告げる編
セシル「謝られても...ねぇ?」
三歳「やっちまったモンは仕方ねぇだろ?」
クレア「はいはい今日は駄目ですよ〜」
一同「「「「何が?」」」」
クレア「始めます♪」
「どういう意味ですか?」「そのままの意味です」
私は今のやり取りで大体の経緯を理解した。理解しました、しましたが...
(お姉様ごめんなさい)
そう心の中で呟くも、やった事実は消せません。お姉様風に言うなら
「覆水盆に返らず...ですか?」
と独り言をしたつもりでいたら、サミーがイタズラしてきた。
「サミー?」「冗談です、エマお嬢様」「...やっぱりドール家って変だわ」
私が圧をかけるもサミーは涼しい顔をしている。そこにネメリアが、少し呆れた様子で突っ込みを入れた。
「ゴホン!さて、それでは特に真新しい情報も無さそうですし、失礼させて頂こうと思います」
「そうだな...ん―――「大変です!」何事だ?!」
咳払いしてヴァンが席を立とうとしたのを見て、ベンは大きく伸びをする。そこへ血相を変えてロイがやって来て、何事かを伝えようとしてきた。ヴァンが手短に説明するようロイを落ち着かせようとするが
「火事です!季節外れの強風が何故か先程から吹いており、炎の勢いが強く思うように消火出来ません!」
呼吸を整える暇も惜しむように、ロイがそう言った後...更に
「火元は...教会施設と...思われます」「なっ?!」
「ラムっ!じゃない、グレアは...無事なのか?」「分かりません」
衝撃の事実を知らされた。が...
(グレアって神父さんの名前よね?ラム...?)
タイミング的に言い間違えたのだろう。そして、私にはラムから始まる名前に心当たりがある。
私はロイを見て
(あの時感じた出来事は勘違いじゃなさそうね)
そんな事を考えていると
「何悠長に身構えてやがる!」
ベンが大きな声で叱咤する。
「ネメリア!ウェニ―!緊急招集を掛けろ!手の空いている奴は片っ端からだ!ランクは問わん!」「「はい!」」
その後も矢継ぎ早に指示を飛ばし...
「ヴァン!お前も行け!」「だが「だがじゃねぇ!俺に指名依頼されてぇのか?!」そいつは勘弁だ」
ヴァンにも発破を掛ける。そこで意を決したようにヴァンも動き出す。
「ロイ、行けるか?」「勿論であります!」
先程ベンが掛けた発破がロイにも通じたのか、先程までの不安と緊張も鳴りを潜めたようだ。
「私も参ります」「おい!」「冒険者なんでしょう?」
「ランクは問わねぇって言ってたぜ」「言ってましたね」
「ならもっと問題は無いわね」「これがドール家御令嬢か」
私は今回、事の顛末を見極めに来たのでは無い。あくまで姉の名代として赴き、動向を探りに来ただけである。だがドール家の威信を取り戻す為にも、ここは引き下がれない。その私の決意が届いたのか
「良い面構えだ、嬢ちゃん。それなら「待った。公爵家御令嬢だぞ...こちらで受け持つ」...そうかよ」
ベンが私に同意した。だがそこにヴァンが待ったを掛けるが、私の身柄は自分が持つと言い出す。
「構いません。寧ろ今回は、そうでなければいけません」「ああん?」
私がそう二人に告げると、ベンは少し機嫌を悪くしたようだ。相槌に怒気が籠もる。だが...私もここで、引く訳にはいかない。
「公的機関で何かあれば、誰かが責任を負わねばなりません。その時は、全責任を私が負います」
「「「「「!!!!!」」」」」
そう私が宣言すると、ここに居た全員が驚いたようだ。だが
「まちぃ〜なエっちゃん!そんな勝手な「勝手ではありません!私は今回、お姉様「おい!」何ですか!」
私がマルヴェラの言葉に答えようとした所で、ベンが割って入ってきた。
「嬢ちゃんの覚悟は分かった。ヴァンも目立つ訳にはいかん。その条件は渡りに船だ」
それなら何も問題無いじゃないですか...そう思っていると
「それよりも、一回落ち着け。そして、さっきからずっと黙ってたんだが...」
ベンが溜めて言った一言に...私は、今日一番の後悔をする事になった。
熱風が荒れ狂う中、私はドール家次期当主名代として拡声魔法で指示を出す。
〘ドール家嫡子セシル=クランドールの名代として、エマ=クランドールが命じる!〙
枕詞として、私は意図的に嫡男の名代を強調した。
(お前さんは感情的になると、姉の男装の事が抜ける)
大失態だ。幸いネメリアはお姉様がギルド登録した時の当事者で、全て知っていた。
当然ギルド長も知っていた(さっき知った)
〘冒険者ランクがD以下の者はギルド職員に従い、消火作業に専念せよ!〙
衛兵詰め所の長にも秘密があり、ベンがそれを私に密告した事で共犯に引きずり込んだ。まぁ...聞けば、元から運命共同体だったらしいが
〘Cランク以上の者は衛兵と共に要救助者を探せ!但し無理はするな!二次災害をもたらすな!〙
そんな事はどうでも良い。私には、覚悟が足りなかった。私は、頬を伝う涙を拭う事もせず
〘不測の事態があれば即時撤退!必ず報告せよ!以上!!〙
この緋く燃え盛る炎と共に、私は姉の運命に殉じる事を改めて心に刻んだ。
だが、衛兵の中から私に侮蔑の言葉を投げつける者が居た。
「泣いてんじゃねぇよ」「飾りの腰巾着にぶら下がるしか能が無い癖に」
「貴様ら!真面目にやらんか!!」「...仰せのままに」
それを見ていたヴァンが、そんな下位貴族共に怒号を浴びせる。それでも奴等は態度は変えず、仕方なく返事をしただけ...といった態度を取った。
「申し訳ありません。殿下」「構いません。今はそんな事よりも、やるべきことがあります」「仰せのままに...閣下」
ガラガラガラ...
焼け付く炎のせいか、その時近くの壁が崩れた。私は反射的にそちらを見ると...そこには!!
「エマ様ぁ―――…!!!」
バシュッ―――…
そこには、紅い眼をしたデルが居た。手に...衛兵の剣を携えて...
だが、そんな事よりも...
「ロ―――イ…!?」「ロイ?!」
私の眼の前でロイの腕が舞った。血飛沫く鮮血に...私は今にも、気を失いそうになる。
だが、血を失いつつある...私なんかよりも先に、気を失っても可怪しくないであろうロイが
「お下がり下さい!エマ様!!」「ロイ、あなた...」
左腕を飛ばされた事など感じさせない顔で、私の事を気遣ってくる。私は血の気を取り戻し、ロイの元に駆けつけようかと...そう思った時、紅い眼のデルが本人では無いと私は気付いた。
「なんともまぁ...前回ドール家を襲った時といい...こうも良い所で邪魔が入りますかねぇ」
「やはりアナタは、母と祖父を殺した...」「おや?中々勘の良い小娘ですね。姉とは大違っ?!」
悪魔族に操られたデムが突然後ろに飛ぶ。
「相変わらず趣味が悪いっすねぇ」「変質者か?こんな所で何をっ!?ぐはっ!」
だがそこにはサミーが居た。鉱魔石で作られた魔槍を突き付けて...
「【怠惰を貪る者】まで...まさかセシル、いや上位精霊の差し金か?...」
「【誘惑し盗む者】?アナタ何処まで知って...って、逃げたわね」
悪魔族たちが良く分からない会話をしているが...そんな事よりも、私には今直ぐやらねばならないことが!
「セバス!ロイの腕を!サミーはその槍を私の声に合わせて!ゆっくり抜くのよ!!!」
必死で声を張り上げながら、私はなりふり構わず力を行使する。
それが徒労だと、この時私は...気付けなかった。
セシル「ランシェ〜…」
ランシェ「ごめんなさいお姉様!もう何を謝って良いやら」
三歳「セシル?まだ一度も」
リア「言うてやるな」
クレア「まだ序の口ですよ」
セシル「(サ―――…)嘘でしょ?」
クレア「続けます♪」
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