20話 燻る街 インバス
三歳「燻る(くすぶる、くゆる、いぶる)タイトルでは『くすぶる』と読みます」
セシル「素直に『燻ぶる』って書けば良いのに」
リア「どうせコヤツの事じゃ『燻ぶる』は現代人に合わせたモノで〜とか言うんじゃろ」
三歳「逆なんだよな〜本来『燻ぶ(ふすぶ)』って言葉が『燻ぶる(ふすぶる)』になり読み方が『くすぶる』に変わってから『ぶ』が省略されたんだよ。辞書でも『燻ぶる』の方が正しいとしている方が多いらしいよ」
セシル「素直に『燻ぶる』って書けば良いのに。それが正しいなら」
リア「『くゆる、いぶる』の読みが浸透してないから、そもそも勘違いしないって事が言いたいんじゃろ」
セシル「...だったら余計に何もしなくても良かったじゃない!」
サクヤ「自分だけモヤモヤしたくなかったのでしょう。子どもですね」
クレア「オチも付いた所で始めますよ〜」
三歳「...」
ドール家を出た後、私はバエル様に問いかけられた。
『これでセシルと大精霊を欺けると思うか?』
『どうでしょうか?動物的な鋭さを発揮される時もありますので』
その問いに、私が隷属の指輪を眺めながら答えていると
『サクヤよ?もう演技は良いのだぞ?』『しておりませんが』『...』
何故かバエル様は不機嫌になられたようです。
『お主、我を散歩させておる気になっているではないか?!』
『猫の姿で振り返りながら、そのように申し上げられましても...』
この指輪のお陰でバエル様とのやり取りが楽になったと思いながら
『これまでの気苦労を言葉にしなくても伝わるようになった事が、一番有り難いかもしれませんね』
敢えて言葉にした。当然狙い通りバエル様に私の気苦労が伝わったのを確認出来た所で、疑問を発することにした。
『(日本人の末裔について)全てお話するのではなかったのですか?』
『アレで良い。お主の危惧した部分は、何かしら分かってからでも遅くなかろう』
日本人の末裔が持ち込んだもの...それは、当然刀だけではない。
人が集団で、しかも村落規模で転移してきたのだ。そこには思想、文化といったモノが随伴する。
『そこも今は伏せるが良い』
『そうですか。では、金髪碧眼の人物を伝えたのはどうしてですか?』
話す部分と隠す部分が入れ代わった事に私が言及すると
『話の流れで、アレは秘さぬ方が良いと判断したまでよ』『なるほど』
私の疑問にバエル様が想定内の回答をしてきた。すると
『日本人の伝える人のあり方が、元々のクランディアの支配階級にとって不要な知識と教義だと断じられた。その事をアヤツらが知れば、不要な警戒を招こう』
『それは、リア様のご記憶と関係が?』『当然だ』
尚もバエル様は言葉を続ける。
『あの方の魔素形成が変わっていたのには驚いたが、魔素循環様式は過去の大戦と同じだった。これは誤算ではあったが、逆に使える事象となった』
この言葉が示す通り計画を練り直す事で、より忠実に素早くバエル様の願いを叶える事が出来るだろう。
「あら、おおきな猫ちゃんね〜♪」「『んな〜ん♪』」「ぶっ!?」
「あら?どうしたの?」「いえ、おかまいなく」
私は通り過ぎていくお婆さんに会釈しながら、周りに誰も居ないのを確認する。
「なんですか今のは?」『猫がしゃべったらおかしいであろう?』
「猫になりきる時、念話はおやめ下さい」「『なーん』」
器用な事を...『お主が言ったのではないか』...
この、表層意識まで読まれてしまうのは厄介だと思っていたら
『新たな訓練項目が出来て良かったではないか』「ぐっ!?」
バエル様に声に出ているぞと注意され、セシルの悪い所が感染ってしまったと反省していたら
「それは責任転嫁であろう」「バエル様?声が出てますよ?」
互いに何とも言えない感情になりながら、帰路に着いた。
「思ってたのとかなり違ったわね」「そうですかぁ?」
私の独白に答えたのはクレアだけで、実質独り言になってしまった。
『考えても詮無き事よ』『それもそうね』「なにか失礼な事考えてませんかぁ?」
クレアの方をリアと共に見つめていた為、何かを感じ取ったようだが
「仕方ねぇだろ」「感情をそのまま言葉にするからだ」「言われてやんの♪」
ゲビックとカーウィンの突っ込みにアヴェイルが茶々を入れた。そこにクレアが文句を言うより早く
「お姉様のお付きなのですから、学校ではしっかりして下さいね」
「は、はいですぅ〜」
ランシェに釘を刺され大人しく返事をするクレア。何故か、サミー他二人が加わり、クレア同様姿勢を正す。
そこにヨーマンが怖ず怖ずといった面持ちで、書簡を差し出して来た。
「これは?」「インバスの詰め所から届いたものです」
すると横からカーウィンが覗き込んできて
「前回ニス湖で保護した家族の顛末を記載した書簡だと思われます」
所見を述べた。私はそのままヨーマンに、読んで問題無ければ対処するよう伝えると
「この書簡を持ってきた伝令兵が気になる事を言ってまして...」
「何を言ってきたの?」「何でも両親が言うには、息子がたまにおかしいと...」
ヨーマンに善く善く聞いてみると...
子どもが遊んでいる時や人と話している時、たまに上の空になる。
決まってその後は、気の抜けた状態がしばらく続く。
時間が経つと元に戻るが、気の抜けていた時の事を覚えていない。
という。
「事件の後遺症でしょうか?」「戦場から戻った兵がたまになる病に似ているな」
「覚えてないってのは違うんじゃねぇか?」「珍しく意見があいますねぇ」
ランシェとカーウィンが子どもの心を気遣うのに対し、アヴェイルとクレアは思った事をそのまま口にする。
「気にしても仕方あるまい。明日は学校じゃろう?」
「そうね」「...」「「げっ!?」」
リアの言葉に私が同意すると、少し間を置いてからモールがランシェの方を見ながら声を上げた。
そんな二柱を見ながらランシェが
「私がインバスに赴き、様子を窺って参ります」
そう言ってのけた。私はどうしようか思案を巡らせていると
「ゲビックさんをお借りできますか?商会はまだ使わぬほうが良いでしょう?」
サミーが提案してきた。それを見て、ランシェも頷きながら私に期待の眼を寄せる。
『マルバスも同行させるが良い。何かあった時、直ぐ様連絡が取れよう』
「セバスも連れて行きなさい。何かあれば...直ぐに報告するように」
リアの意見を取り入れ、私はセバスにランシェの世話を見るようにも伝えた。
「うふふっ♪明日が楽しみね?」「あまり無茶をなさいませぬよう」
私の言葉を聞きながら心配してくるカーウィンに
「心配ならアナタが護衛してくださらない?」「明日は学校があります故」
お強請りしてみたが、あっさり断られた。
「私の役目はセシル様の護衛ですから」
カーウィンが言葉同様に、力強い眼で私に語ってきた。
「意地悪ですね」「誠実であるかと」「...やっぱり意地悪です」
そんなカーウィンに私は拗ねながら、少し甘えた声でいじけてみせる。すると先程見せた力強さが何処かに消え失せ、少し困ったような顔をしながらカーウィンがこちらを見てくると...
「恋愛ごっこも程々にしないと、本気になってからじゃ遅いですよ?」
サミーが不要なお節介をしてきた。
「夕食のご用意も出来たようですし、そろそろ失礼します」
「良ければご一緒しても「ここは野営地ではありません」連れないわね」
そう言ってカーウィンが部屋を出ていくのを見送りながら私が振り返ると
「諦めるために言い寄るって、虚しくない?」「放っといて」
サミーが二度目のお節介を口にした。
「冷めないうちに食べましょ。1人分減らずに済んだんだから」
「ちょっと待って!?さっきアイツが「アイツって言わない!」...っく!?」
モールが自分の食事を確保しながら食べるのを横目に、サミーもぶつくさ言いながら食べ始めるのだった。
セシル「どうせ送り仮名が不安だから調べたんでしょ?」
サクヤ「燻ぶに関してはそうだと思われます」
三歳「冷静に分析しないで!?」
リア「遊ばれとるのぅ」
バエル「そんな事より何故自室で夕食を?」
セシル&ランシェ「「父上と顔を合わせたくないから!」」
バエル「お、おぅ?」
クレア「続きます♪」
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