18話 サクヤの真意 後編
「どうやら本当に、制御可能なようですね」
「過信するなよサクヤ。その気になれば、自力で外せる程度の魔具だからな」
不敵な笑みを浮かべながら銀猫を観ていたサクヤに、カーウィンが忠告する。
「忠告有難うございますカーウィン様。ですが...やっと手に入れた肉体ですよ?そうそう手放しませんよ。ねぇ?バエル様♪」
カーウィンの方を一瞥した後、再びバエルを観てほくそ笑むサクヤ。
〚少し待つのだサクヤよ?お主、我との盟約を忘れたのか?この隷属は聞いておらんぞ?!〛
「はい、報告してませんからね♪」〚な、んだと!?〛
そこまで聞いたバエルが驚愕しながらも周りを見渡す。そして徐ろに何かを念じたかと思えば、人の姿へと変貌した。
「どういう意図があってそのような事をした?今までのお主の忠義は何処へ行ったのだ?」
「忠義?悪魔族の存在を目の当たりにして、逆らえる人間がいますか?しかも、幼少期にですよ?!どれほど恐ろしかった事か!?」
バエルが人の姿をとってくれた事で聞き取り易くなりはしたが...
「それはキングが悪いな」「元からそういう柱でしたけどね」「お主ら、アガレスの所で言葉遣いが悪くなったのでは無いか?!」「「......」」「否定はせんのだな」
マルバスとサミジナにも突っ込まれる程、バエルのした事は人間にとって脅威でしかないだろう。だがバエルが二柱に言った内容の方に私の興味は持っていかれた。
「ねぇ?糞爺って誰?ひょっとして今回の事件の黒幕だったりする?」
私の質問に、何故かこの場に居る全員がコチラを見ながら
「「「「「「「「それはそうでしょ」」」」」」」」
総出で突っ込みを入れられた。
「お主...疲れとるのか?」「ランシェの事さえ無ければ...」
リアの一言に、私が痛恨の極みを思い出し嘆く様を見て
・・・・・・あぁ〜〜〜〜・・・・・・
一同は思い思いに頷いたりウンウン唸ったりしだした。
「だが、報告書にその一件は記載してないからな」「それは(不確定要素だから)出来ませんよね?」「それ以前の問題です。素直に悪魔族の事まで報告出来ません。諜報記録にすら、です」
サクヤの方を見ながらカーウィンが気を使って私に非はないと言うも、クレアが分かったような物言いで突っ込みを入れようとしてくる。そこにサクヤが容赦なくトドメを刺しに来た。
「サクヤよ?そこの心を喰う怪物に嫌味をぶつけるのは構わんが、心ある者にする時は状況を弁えよ」
「...申し訳ありません。大精霊様」「リアで良い」「はい...リア様」
だがここで珍しくリアが私を庇ってくれた。しかも場を落ち着かせるためだろうか、少しだけ精霊力を強める事で言葉に強制力を持たせている。
『珍しくは余計じゃ!さっさと頭の中を切り替えよ!』
そう言えばサクヤが上司に反旗を翻した時から、何故か緊張感が解けてしまっていた。そんな事に気を取られた位で集中力が無くなった...その事自体に違和感を覚えたその時
「所でセシルとやらに聞きたい。お主は前世では何者だったのだ?日本人とやらは選ばれた種族だったのか?」
バエルからの質問が飛んできた。その事に私が答えるより先にリアが動く。
「バエル、ちと性急すぎるのではないかぇ?」
自身の問いに別の問いをぶつけられたバエルはリアに向き直り、何か覚悟を決めたように言葉を続けた。
「人魔大戦をお忘れですか?」「!?」「...やはり」
得たばかりの肉体で一呼吸おき、続けてバエルが口にした言葉は驚くべきものだった。
「やはり人魔大戦に消滅なさったのですね。そして今、再び顕現された」
「いや、消滅などしておらんぞぇ?」「は?」「その後もドール家に居ったぞ」「はぃ?!」
だがバエルの言葉を否定したリアの言葉に、今度はバエルが混乱する。
「リア、先に状況を整理しない?」「そうじゃがお主、また我に...?!であろうの!」「話が早くて助かるわ♪」「やかましいわぇ!」
私とリアのやり取りを見て不思議がるバエル...だが、それ以上に他の者が急にお茶の用意をしだした事に困惑しだした。それを見たサクヤが
「とりあえずお座り下さい...って床じゃありません!?」
「すまん、ついうっかり」「...(じぃ―――)」
バエルに席を勧めるが、猫の姿をとっていたせいか床に座り込む。そんなバエルに呆れながら、サクヤがソファを指差し思いっきり突っ込みを入れた。肩身をせまそうにするバエルに、サクヤが更に視線で追い打ちをかける。そんなサクヤに、思っていた関係では無かったと私はゴチた。
「思ってたのと...違ったわね。ちゃんと主従関係を構築してると思ってたわ」
「努力はしてましたよ?!でも、長話しすると猫化するんです!?」
あっ...そうですか...
実体無い時からそうなんだったら、これからは散歩も必要じゃない?
なんて無体な事を考えていると
「...んっ、あぁ...始めるぞぇ」
お茶を一口飲んだリアが早速説明しだした。
今から500年ほど前に消滅寸前まで消耗した事
その後ドール家に保護されていた事
(この時はまだ指輪を通じて念話出来ていた)
帝国の侵略に抗えず意志を保てなくなった事
(この時のどさくさで大精霊の存在は秘匿された)
そこから何年経ったか分からないが、最近魔力が注がれた事で復活した事を告げて
「じゃから我は存在が希薄になった反動で、創生からの記憶は無い。じゃが精霊としての自我はあるぞぇ」
「...そうでしたか...で、その娘の事なのですが「急かすでないわ。それも話してやるわぃ」...大精霊様がですか?」
ここで先程の私とリアのやり取りに合点がいったのだろう。バエルが呆れた顔で私を見てきた。
「気にするでない。其奴はいつもそうじゃからの」「はぁ...」
そんな事を言われても私は動じない。悪魔族との会話はリアに任せるのが最適なのだ。会話の続きを忘れたのか、リアが私を睨んでくるが気にしない。
私の態度に呆れつつも、催促するような目をリアに向けるバエルとサクヤ。そんな二人に根負けしたリアが再び口を開く。
「...ふん。で、セシルの前世じゃが...別に貴族でも無ければ、特権階級でもない。アチラの世界では、何処にでも居る一市民じゃったよ」
ガタガタッ!?
そんなリアの説明を食い入るように聞いていたバエルより、臣下たちの方が驚いて私の方を見てくる。私は皆を見渡しながら...
「言ってなかったっけ?」
首を傾げながら惚けてみると
「「「「「「「「「「「聞いてませんよ―――!!!」」」」」」」」」」」
一斉にハモった。
セシル「手抜きが酷いわ」
三歳「(お話が長くなって)中弛みするよりマシなんだよ!」
サクヤ「リア様はご記憶が無いと言いながら何故過去のお話を?」
リア「セシルの祖父から聞いたんじゃよ」
セシル「それ...私が聞いたんだけどね」
クレア「続きますぅ〜」
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