『女装女子校生は学園に馴染めてるみたい?』
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HRの時間、担任の綾小路先生の話が始まる。
「はい、君たち。明日からゴールデンウィークが始まるけど、あまり気を抜きすぎないように」
教室は盛り上がり、ゴールデンウィークについての話が始まっていた。
「静かに~。まだ先生が話してる途中だろーが。で、明日から五連休って訳なので、各先生からも貰ってるかもしれないが、先生からも課題を出しまーす」
教室はぶーいんぐの嵐。
まあ、生徒の立場で言えば、せっかくの休みなのにって感じだからな。
「うるさいぞ~。ゴールデンウィーク中に何か記憶に残った事を、その用紙に纏める事。勿論、他人に見せるていで作るんだぞー」
「せ、先生……質問があるんですが」
か細い声で生徒が質問した。
「どうした?」
「もし、どこにも行く予定が無い人とかはどうすればいいですか……?」
「まあ、そういう奴もいるよな。ないなりに頑張って絞り出して書け。別に大きなことを書く必要はない。どんなに小さい事だって大きくしたっていい」
「分かりました……」
確かになあ。
大きなことなら何でもいいって訳でもないんだな。改めて聞くと、確かにそうだなって思う。
「てことで、あんまりハメ外しすぎないようにな~。しっかり休んで、しっかり課題とかする事~。あとは思う存分休め~。ホームルーム終わり~。時間になるまで、あんまり騒ぎすぎないようになんかしとけ~」
教室はまるでお祭り騒ぎ。
生徒からしたら、この先生は神なのは間違いないな。
それにしても、ゴールデンウィークか……。
毎日やる事があってあっという間だったし、例年みたいにゴールデンウィークを何日も前から楽しみに待っているような状態でもない。
今まで本当に楽しみに待っていたかと言われれば、ノーコメントなのだけれど。
各教科からの課題も済ませないといけないし、やる事が沢山だな……。
通常進行の方が楽なんじゃないか?
誰かに手伝ってもらわないとしんどそうだ。
嬉しいのか悲しいのか、大変になりそうだ。
「おい、一ノ瀬」
「え、はい? どうしました、先生?」
「私は別にここでも構わないんだが……少し話がある」
「え、話ですか……?」
「ああ、そうだ。そんな大げさな物じゃない。本当にここで、今でもいいぐらいの話だが、一応プライバシーとかもろもろあるからな。面倒だとは思うが、後で違う部屋で話を聞きたい」
「そ、そうですか……」
多分、転校してきて今のところどうとかの話なんだろうな。
それ以外だったらどうしよう。
「分かりました」
「私も早く終わらせたいしなー。ま、さっさと来いよ~」
「はい」
先生と話す機会なんて全然なかったし、良い機会だと思っておこう。
先生はいつもだるげだし、なかなか話しかける機会もなかったけど、少しだけ話をしてみたい気持ちはあった。
今回は聞かれることがメインだろうけど、そこに乗じて自分も質問してみようかな。
空気次第だけど。
「ねー、朱里。先生に呼ばれてたけど、何かあったの?」
不思議に思ったみたいで、沙耶が声を掛けてきてくれた。
「うん。この後ちょっと話があるみたい」
「おいおい、朱里何かやらかしちゃったのか~? まー、いつかやると思ってました」
「なんもやってないって。ニュースでよくあるやつもやめてよ」
ほんと、ニュースとかになっちゃうのかな。何かあったら。
こういう身分なもんで、そういう言葉には少し敏感になっている。
犯罪を起こして逃げてる人ってこういう気分なんだろうな……。
現実味がありすぎる展開だな……。
……忘れよう。
「冗談だってば~」
「何か大事な話?」
「詳しい事は分かんないけど、多分転校して来たから、今どんな感じ~? みたいな話だと思うよ。他は分からないな……」
「なるほど。確かに一番ありそうな展開だね」
「そういうつまんない話かー。どんまい」
「二人はさ、綾小路先生と話した事とかある?」
「私は多少あるって感じかなー。少し疑問に思ったことを質問したりとか? 先生ってだるそうにしてて、正直何考えてるか分かんないなー。だから、この話したら盛り上がりそう!みたいなのが全然分からないって感じ」
「先生はああ見えて意外と面倒見いいぞ。だるそうで常にやる気なさそうに見えるけど、文句は言いながらも色々やってくれるタイプだ」
「へー、意外」
「ひまり、何か先生にお世話になった事あったの?」
「そんな大きな事じゃないぞ! 言わんが、まあ、多少はな」
そうなのか。
見かけによらないっていうか、あえてそういう風に振舞っているのかな。
何も知らなければ気にする必要もないしな。
それで言うと、今回の事は担任としての義務というか、しなきゃいけない事なんだろうな。
本心では、ここで困ったことなんて聞きたくないはずだ。
せっかく先生と話す機会だし、軽めの何かを考えてみようかな。
「そんなに話したことないし、緊張するなー」
「そんなんする必要ある?ただの先生だぞ?」
「私は分からなくもないけど」
「そうかー?ん~」
「私にとっては新しい場所で、急に会った人みたいなのも付属してるしね。やっぱ学園の人とかは特に身構えちゃうよ」
「確かにそれはそうかもね。まるで今まで普通にこの学園に通ってたかのように感じちゃってた。そういえばそうだった」
「確かに! お前凄いな! なんていうんだ……。馴染み感って言うの? 馴染みすぎだろ! 我や沙耶とも会って数週間ぐらいだしな!すげーな……」
「どっちかと言うと受け入れてくれてる皆のおかげだとは思うんだけどな。馴染めてるみたいで、一先ず安心したよ」
これは本当に嬉しい事だ。
馴染めてるのも素直に嬉しいかも。
女子として認められてるんだな……。
まあ、良かった。
とにかく不自然に思われてない事は本当に嬉しい。
「実際さ、何か困ってる事とかあるの?」
「べ、勉強かな……!正直、一番ぱっと思いつくのはこれだよね……。この学園レベル高すぎるよ……」
毎日頑張ってるけど難しい。
そんなすぐレベルアップ出来るのであれば、誰も苦労しないんだけどさ。
「うわ、めんどそー」
「でもでも、結構追いついてきてるんじゃない? 私が教えてる限りでは、そんなに問題なさそうだけどな?」
「今みたいな努力を続けられればね?!私としては努力はするけど、もうちょっと楽になりたいなって……。贅沢なのはごめんだけどさ」
「あー、なるほど……。そりゃそっか……。ま、努力だね!」
「だな」
「ですよね……」
現実を見て、コツコツと頑張らないといけないのは変わらないらしい。
逆に考えれば、する事が明確にあるという楽さを有難く感じておこう。
理事長とかに何か言われても、言い返す言葉が本当にあるって事は助かるな!
向こうもこれを言われれば返す言葉がないだろう。
「他は他は?他になにかあったりしないの?」
沙耶はとにかく気になるらしい。
「困ってる事かー……。何かあるかな」
そりゃ基準を下げれば何かある。
でも、普通に生活している上で困る事が何かあるかと言われれば思いつかない。
この場で言えば何か助けてくれそうだしな。
良い感じのがあればいいんだけど。
着替えの時困るとかはあんまり言いたくないんだよな。
わざわざ言って注目を浴びたくもないし。
変に疑われそうだし。
今更の事とかは、あんまり無いよな。
転校時からある事ばかりだ。
お嬢様みたいなエリートと言われる人たちとの差。
マナーや言葉遣いの違い。
そんな所と比べられるところにいないっていうか、女性になりきるのに必死だし。
そういう人が大多数なのは明らかだけど、そうじゃない人達だっているって事も知ってる。
それに、差別みたいなものを実際に受けた訳でもない。
ようは考えすぎなのだが、差という物は実際ある。
そして、身分が下の者はそれを直接感じるしか出来ない。
だからどうしたって気にしてないふりをするしかない。
だからなんだって話なんだけど。
直接大きな被害を受けるまでは考える必要が無い事だし。
この場であまり重すぎる話題を選ぶのもなんだしな。
「女子校特有の空気?ってのかな……。距離が近いのとかは流石に驚いちゃう事あるかな」
「そんな事気にしてんの~?てか、そんなのある?」
「多少そうなんだろうなって部分は少し分かるかも。中学から女子校だったから、朱里ほどギャップを分かってる訳ではないだろうけど」
「へー、そんなのあるもんなんだな~。我は慣れたしあんまわかんね」
「ひまりは友達いないから、そういう空気を感じられないだけでしょ」
「なんだと~?! 我だって友達ぐらいいるぞ! な、朱里!」
「そ、そうだね?」
「いや、いつものメンバー以外の話でしょ……。本当にいないみたいなのはやめてよ」
「じゃあ、言うなよ!効いてしまうだろうが!」
この二人、相変わらず仲良いな。
「まあ、もし大きな悩みとかあったら相談してね?」
優しい表情で手を差し伸べてくれた沙耶は、まるで女神だ。
「ありがとう。その時は相談させてもらうね。と言っても普段から沙耶に助けてもらいまくりなんだけどね」
「たまには我も助けてやるからな!いつもは大変だから困るけど、たまにならやってやらんくもない!」
「じゃあ、沙耶に助けてもらおかな」
「それで決まりだね」
「なんでだよー?! たまには我にも助けを呼びに来いよ! 助けてやるんだから!」
「嘘嘘。ひまりも頼りにしてるよ」
「うむ。くるしゅうない」
二人の優しさと友情を改めて感じられて、何とも嬉しい時間になっていた。
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