『放課後、綾小路先生と空き部屋にて』
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「え、"隠し事"ですか……?」
「ああ。お前、何かしてないか?」
正直に言うと、しまくりです。
「え、えと……」
もしかして何か勘付かれてる……?
怪盗は姿が見えた時点で八割方終わっていると言われている。
それを自分の立場に置き換えると、綾小路先生には既にばれかけているということだ。
いや、もうばれているのか……?
相手がどこまで情報を持っているのか分からない。
だからと言って、探るように聞き返すのもどうなんだ……?
「なあに、そんな堅苦しい話じゃない。新天地での生活って、素を出しづらくて周りに合わせてばっかりになったりするだろ?息苦しい生活になってないか?って思ってな」
「ま、まあ……それもなくはないかもしれません」
「まー、私としては面倒な事は避けたいんだが、そんな風に見える瞬間が何度かあったからな」
教師の目って鋭い……!
綾小路先生がやる気なさそうに見えてたから、こっちも少し気を抜きすぎていたのか……?
どちらにせよ、大問題だ。
「非常に言いづらいんですが……。沢山あります……」
その言葉を聞いた途端、綾小路先生の表情が少し曇る。
面倒なことに関わってしまったと後悔しているようにも見えた。
「立場的にも、私はお前を助けないといけないし、困ってるなら素直に頼ってくれてもいい。選択権はお前にある。別に全部話せって訳でもない。私を信用できるようになるまでは小さなことだけ頼ってもいいし。その辺は好きにやってもらって構わないが、どうだ?」
「先生って、この学園に来てからどれぐらい経つんですか?」
「んー?六年だな」
「六年……」
先生の年齢は知らないけど、多分新卒からずっとここにいる感じなのかな。
「最初ここに来た時って、どんな風に感じてました?」
「だりーとか、めんどくせーって思ってたよ」
聞く人間違ったっぽい。
「こう、威圧感とか、空気感に圧迫されたりとかはなかったです?」
「そういうの全部ひっくるめて、だりーって感じ」
「なるほど……」
一つ一つ細かく考えてないって事なのかな。
それが世の中を上手く生きていくコツなのかもしれない。
「すぐ慣れました?」
「慣れるも何も、初めての職場だったしな。ここで物事を覚えていくって感じだったし。慣れるって感覚とは少し違うかもな」
「そういうものなんですね」
「私はな」
凄いさっぱりした考え方だ……。
参考にした方がいいのかな。
「そういう困難を乗り越えられたコツとかありますか?」
「やらなきゃいけないから、やる。それ以外に何もない」
こっちとしては、結局どうやったら出来るんだよ?!って感じではあるのだが……。
世の中、どこまで行ってもそういうものなのかな。
「先生って好きな事とかあります?」
「娯楽」
「凄いストレートな答えですね……」
「分かり切ってる事だしな~」
「その中でも特に好きな事とかあります?」
「煙草とゲームと音楽。ってか、これ私が質問に答える側になってるんだが、大丈夫か?」
「はい。気になるので。ゲームとか音楽も好きなんですね。それに煙草も」
「お前がそれでいいならいいんだが……。まーなー。煙草はやめとけよー」
「吸ってる人がそれを言いますか」
「だからだよ。場所もねーし、たけーし。未成年は吸ったら怒られるし。大人になってもやめとけ。それよりゲームとかの方がよっぽど健全だぞ」
吸っているところを見たわけではないが、先生って煙草が似合うな……。
「じゃあ、そうしときます。どういうゲームやったりするんですか?」
「別になんでもやるかな。上手くはねーけどなー」
「いいじゃないですか。色んなゲームをのんびりやるのも。一番純粋に楽しめてる人っぽいですよ」
「だといいんだがな。お前も今のうちに出来るだけ遊んどけよ。学生の時に勉強して、大人になったら遊べばいいなんてのはほとんど嘘だからな。今のうちから勉強もして、遊びもしとけ」
「皆のおかげで比較的楽しく生活出来てると思います。勉強はしてるんですけど、全然追いつかないって感じですが……。ゲームはほとんど出来てませんけど」
ここの学生っぽくないイメージだったから、ゲーム機なんかは持ってきてもいないし、買ってもいない。
もっと余裕が出てきたら、そういうのもありかなと思っている。
「真面目だな~。もっと気楽に生きろよ。というか、そんな可愛い顔してゲームとかするんだな~。意外だ意外」
先生にそう言われると、胸の奥がじゅわっと熱くなった気がした。
と、ときめいてないよな……?
気のせいだ気のせい。ふう。
軽い冗談だろう。
自分の気持ちが落ち着いたのを確認してから、会話に戻った。
「それで言うと、先生の方が意外ですよ。見た目で言うとゲームも煙草もしなさそうですし」
「何も似合わねー見た目で悪かったな」
「なんでそう卑屈に捉えるんですか……。凄い美人じゃないですか」
「女に言われても嬉しくねーなー」
何を言っても肯定的に受け取ってもらえなくて詰んでるんですが。
それに、本当は男なんですけど。
「そんな事言わないでくださいよ」
「だってそうだろ?それより一ノ瀬はどんなゲームやってたんだよ?」
ゲームの話がしたかったのかな。
「対戦ゲーとかRPG系が多かったですかねー」
「対戦ゲーとかもやるのか。例えば?」
「FPSとか格闘ゲームとかは結構やってましたよ。ゲーセンのアーケードでもたまに遊んでましたし」
「まじかよ……。なんかイメージと全然違ったわ……。やるじゃん。私も全くやらない訳じゃないんだけどさー、むずいんだよなー」
「対戦系は勝つなら、やっぱり知識と時間が必要ですからね……。適当にやるのも楽しいは楽しいですけど」
「そうだけどさー、やっぱ勝ちたくなるだろ?」
「ですね。先生、負けが込んだら怒ってそうですね」
「よく分かってるじゃねーか」
容易に想像出来るな。
そこまで含めて絵になる。
「今度機会があったら、一緒にゲームやってくださいよ」
「は?」
「先生は普段忙しくて出来てないみたいですし、私もこの学園に来てからほとんど出来てないので、丁度よくないですか?」
「するったってなー……」
軽い気持ちで言ってみただけだったけど、綾小路先生は意外にも真面目に考えてくれているみたいだった。
「ゴールデンウィークのどれか、うち来るか?」
「え、いいんですか?」
「普通はこんな事しねーけどなー。ま、これも悩める学生のお悩み相談の一つだろ。楽しい事の一つや二つあれば、何か解決するかもしれねーしな」
「せ、先生……!」
なんて良い人なんだろう……。
綾小路先生の事を誤解していたかもしれない。
「どうせなら早めの方がいいですよね。明日とかどうですか?」
「急だな……。まあ、構わないけど」
「どうやって行けばいいです?」
「ん~。どうすっかな。ここまで迎えに来てもいいけど、面倒だしな~。七木田駅まで来れるか?そこまでなら迎えに行ってやる」
「はい。じゃあ、それで」
「時間は昼過ぎとかでいいか?休みの日にわざわざ朝から起きたくない」
「分かりました」
「電話番号教えとくから、その時に連絡してくれ」
「分かりました」
もう既に楽しみだ。
しばらくゲームをしっかりやれてなかったしな~。
そもそも、もうほとんど出来なくなるって思ってたし。
「それはそれとして、他に聞いておきたい事とか悩みとかはないか?」
「先生から見て、私が駄目な部分ってありますか?例えばですけど、この学園で生活するなら、これは気を付けた方がいいとか」
「よっぽど変な事をしない限りは大丈夫だとは思うが……。上級生と関わったりしたか?」
「え、いや……多分ないと思います」
「そうか。まー、多分ないと思うが、一部上級生に性質が悪いのがいるとも聞いている。要するに、危なそうな連中とは関わるなってぐらいだな」
「ここの学園でもあるんですね……。どこもそんなに変わらないか」
「まーな。せいぜい気を付けろよ」
「分かりました。今日はありがとうございました」
「おう。まー、何かあったら適度に言えよ」
「はい。頼りにしてます」
「頼りにはすんなっつーの。じゃ、明日なー」
先生はいつも通りマイペースにそう言うと、部屋を出ていった。
ふー。
特に問題なくやり過ごせたかな。
上級生か……。
下級生でも問題児はいるんだろうけど、上級生は立場や権力で押してくるイメージもあるしなぁ。
気を付けないと。
まあ、そうそう関わる事なんてないだろうけど、一応覚えておこう。
それより、明日先生と遊べるの楽しみだな。
久々にゲームだ!
……ん?
綺麗な先生の家に男子生徒が一人で行くってシチュエーション、危なすぎないか……?
相手には女性って思わせれてるから大丈夫なんだけど……。
絶対にばれちゃ駄目だ……。
楽しむのも大事だけど、気を引き締めないと。
なんやかんや、明日が待ち遠しかった。
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