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女装で女子校に通ってたらモテすぎてヤバい!  作者: 宮原


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『柚希と二人、だらだらと』

リアクションやブックマークや評価などよければ宜しくお願いします!モチベーションに繋がっています!

先月の更新出来なくてすみません!

評価やリアクション本当に助かっています!

これからものんびり更新していくので、よろしくお願いします!


 今日は珍しく柚希が声を掛けてきたので、一緒に過ごしている。


「変に気を遣わなくていいよ?柚希」


 ほんの少しだけ、いつもと違うような気がしていた。


 嫌なわけじゃない。

 ただ、もし無理をしているのなら、それは少し嫌だと思った。


 もちろん勘違いかもしれないけど。


「ん~?別にいつも通りじゃない?」


「そうかな?」


「そうだよ。考えすぎ考えすぎ。もっと楽にいこーよ?」


「柚希がそう言うなら」


「うんうん」


 感じていた違和感を、ひとまず横に置いて切り替えることにした。


 小さな疑問を一つひとつ考えていたら、きっと生きるのは大変だ。

 そういう人が学者とか研究者になるのかもしれない。


 自分はもっと要領よくというか、楽な方に流れている気がする。

 少し情けない。


「ほら、言ったそばから何か考えてるでしょ? 気分転換でもしよーよ。りらっくすりらっくす」


「別に無理してないよ~?まあ、何かするのには賛成だけど」


「だよね~?なにしよ~?朱里は何かしたいことあったりする?ほんとになんでもいーよ?」


「え~?むず」


「あははは。分かるけどね」


 何でもない会話をしながら笑っている柚希を見ていると、少し落ち着いてきた。

 安心した、という感覚に近い。


 元から不安だったわけじゃない。

 でも、どこか張っていたものが緩んだ気がした。


「お互いひとつずつ出そうよ。それならいいでしょ?柚希」


「んん~……いいけど、私がしたいことで朱里が満足できないかもよ?」


「それはお互い様でしょ。まだ提案の段階だし、本当にしたくないことならパスでいいよ」


「そう言ってくれるなら別にいいけどさ~。せっかく朱里のしたいことを一緒にしたいな~って思ってたのに」


「気を遣いすぎだってば。ほら、考えた?」


「え~? ちょっと待ってよー」


 実はまだ何も思いついていない。

 この隙に考えることにした。


 この生活を始めてから、純粋に娯楽のことを考える機会はあまりなかった気がする。


 今だって本当に素直に考えているかと言われると怪しい立場だけど、それでもいつもよりは自然に考えられている気がした。


 結局いつも、その場に合わせて選んでしまう。

 自分が一番したいことが、なかなか浮かばない。


 そう考えると、出来るだけ自然体でいたいのかもしれない。

 柚希の前では。


 今の自分が自然なのか。

 それとも以前の自分の方が素直だったのか。

 今の自分は偽りなのか。


「また考え込んでるしょ~?難しい顔してるよ?」


「そ、そう?確かにちょっと考え込んでたかも」


「先に私のしたいことしよっか。デザートはやっぱ後からでしょ!」


「私は気分によるかな~」


「そこは乗ってよ~!朱里のいけず」


「へへへ」


 話しているだけで、自然と楽しい気分になる。


「で、私がしたいことはと言うと~!」


 柚希は自慢げに胸を張り、指を天に向けた。


「うん」


「のんびりだらだらしよ!」


「え……?」


 あまりに予想外で、思わず戸惑った。


「いつも通りじゃない?」


「うん。それよりもっとだらだら!さいこーにのんびりしよーよ」


「最高に……?いつも結構だらだらしてるけどなあ」


「いつも通りでいいよ。一緒にのんびりだらだら」


「そんなんでいいの?」


「それが一番いいんだよ。私は一緒にいられたらいいや」


「そう……?それでいいなら、全然いいよ」


「よかった」


 自然な笑顔を見て、ほっと息が抜けた。


 力みのないその姿が、安心感をくれる。


「でも、どうするの? 町でもぶらぶらする?」


「ん~。その方がのんびりできそうだよね~? ここより周りの目も気にしなくていいだろうし」


「まあ、そうかな。学校よりはね」


「のんびり歩いて、その時気になったことしよ。ほんと、お気楽に」


「いいよ。もうなーんにも考えず、その時思ったことしよ」


「いいね。じゃ、れっつごー!」


 そう言って柚希は手を引いた。


 だらだらと、話したり無言になったりを繰り返しながら歩く。


 話したい時に話して、話さない時間もそのままにする。


 視線が合っていなくても気にしない。

 そんな空気が自然と出来ていた。


 傍から見れば、少しよそよそしく見えるかもしれない。

 でも二人にとっては、むしろ心地よい距離だった。


 一緒にいるのに、それぞれ別のゲームをしているみたいな感覚。

 同じ空間にいること自体が大事だった。


「コンビニ寄ろっか」


「いいよ」


 店に入った瞬間、それまで触れていた手が離れる。


 少しだけ、寂しいと思った。


「何か欲しいものある? 私は飲み物あればいいかな」


「食べ物いらないの~? ホットスナックとか美味しいよ!」


「柚希が欲しいなら全然いいよ。普段買わないから候補に入ってなかっただけ」


「ほえ~。普段買わないんだ?」


「そだね」


「どして?」


「なんでだろ。食べ過ぎちゃうからかな」


「あ、分かる~!一度買うとね~」


 柚希はチキンを選び、自分はハッシュドポテトにした。


 こういうものを食べるのは久しぶりだ。

 なんだか少し青春っぽい。


「一口ちょーだい!」


「いいよ」


 交換しながら歩き、町の話をする。


「ここ」


 柚希が立ち止まったのは花屋の前だった。


 特別花が好きなわけでも、詳しいわけでもないらしい。

 でも通るたびに眺めるのが好きだと言う。


 きっとこれから、自分も気にする場所になるんだろう。


「好きな花とかある?」


「ほとんど知らないんだよね。ひまわりくらいしか。でも、なんとなく好きな花はあるかな」


「なになに? 教えてよ~!」


「芍薬って花。見てもピンと来ないかもしれないけど、なんか好きなんだよね」


「めずらしっ! 高そうなイメージあるわ~」


「立てば芍薬座れば牡丹って言葉あるじゃん。それとセットで好きなんだよね。意味ちゃんと覚えてないけど」


「聞いたことはあるかも」


「好きだけど、特別調べようとは思わないんだよね。ずっと憧れのゾーンにある感じ」


「好きなのに気にならないの?」


「気にならないわけじゃないけど……これくらいの距離感で好きっていうか。変かな」


「難しい……でも私も好きだからって調べたりしないし」


「その延長線上だと思う」


「ほえー」


 伝わっていなくても構わない。

 こうして共有している時間に意味がある。


「本屋も寄ってかない?」


「いいよ。欲しい本あるの?」


「いや、なんとなく」


 本は表紙とタイトルで選ぶことが多い。

 興味が持てないと、読むまでに時間がかかる。


 何でも読める人が少し羨ましい。


 店内を歩きながら、いろんな本があるなあと眺めていた。


「いい本あった?」


「うーん、特別これってのはなかったかな。でも満足」


「分かる。回ったことに満足するやつ」


「ね」


 本屋を出て、公園へ向かった。


「ここ景色よくない?」


「えもいよね。なんかほんとにあるんだな~って感じ」


「それはあるでしょ」


「まあそうなんだけど。のどかでいいよね」


「だね」


 ベンチでぐてっとしながら、話したり、黙ったり。


「あ、忘れてた!」


「どうしたの?」


「私のしたいことだけやって、朱里の聞いてなかった!」


「あ、あ~……そうだね」


「覚えてた?!」


「いや、忘れてた。楽しかったし、いいんじゃない?」


「私としたことが……満喫しすぎたな」


「それが一番でしょ」


「ま~ね。じゃ、また今度のんびりしよ。その時教えて」


「考えとくね」


「うん」


 夕日を眺めながら、時間がゆっくり過ぎていった。

「あーあ。もう、こんな時間。つまんないの」


 柚希が空を見上げながら、わざとらしくため息をついた。


「楽しかったじゃん?」


「だからだよ~。もうそろそろお別れの時間じゃん~。かなしい」


「そこまで楽しんでくれて、私も嬉しいよ。別れの時間があるからこそ、遊んだ時って楽しく感じるんだと思う」


「む~、なんか良いこと風な事言ってる」


「まあね」


「ま~、言いたい事は分かるんだけどさ~。分かるんだけど~!それでも寂しいじゃん」


「うん。私も」


 短く答えると、柚希は少しだけ目を細めた。


「ねえ、朱里」


「どうしたの?」


「何か困ったことがあったら、いつでも言ってね」


 その言い方は軽いのに、どこか真剣だった。


「ありがと。私も柚希の相談、いつでものるから」


「すんごい心強いよ。相談する時ってのは困ってる時なんだけどさ」


「困ってなくても、会って話したりしよっか」


「いいの?」


「そりゃもちろん」


「えへへ、嬉しいな~」


 照れたように笑う顔が、少し幼く見えた。


「ねー」


「どうしたの?」


「私は、一緒にいられるだけで幸せ者だよ」


「ありがと」


 その時。


 柚希の表情の奥に、幸せだけじゃない何かが混ざったように見えた。

 言葉にしないまま飲み込んだ感情が、ほんの一瞬だけ浮かんで、すぐ消える。


 気のせい、ではない気がした。


「そろそろ帰るね。これ以上うだうだしてたら、ほんとに帰れなくなりそうだし」


「うん。またね、柚希」


「最後に手、握らせて」


「ん。いいよ」


 差し出した手を、柚希が両手で包み込む。


 思ったよりも強く、でも離れない程度の力で。


「ふー。元気をタンクにいっぱい補充した!じゃ、ばいば~い」


「ばいばい」


 柚希は手を離すと、そのまま歩き出した。


 振り返らない。


 一度も。


 遠ざかっていく背中を見送りながら、少しだけ胸の奥が静かになる。


「あーあ。一人になっちゃった。寮に帰るか」


 さっきまで賑やかだった空気が、ゆっくり薄れていく。


 歩き出すと、夕方の街の音が戻ってきた。


 さっきと同じ道のはずなのに、少しだけ広く感じる。


 寮へ向かって、ゆっくりと足を動かした。

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