第三話(手記2)
【二回目の記録】
これは前回書いた日の翌日だ。
結局、俺は外の世界には出ないことにした。
水や食料については、現地調達しなければならない。
食料は魚を取ることにした。
釣り針は捨てられたものを使う。
餌は虫がある。
結果、まずまず獲ることができた。どんな魚かはわからない。とりあえず、焼いて食べることにした。
捨てられたペットボトルに水を満杯まで入れる。
それをレンズのように見立てて、このノートの紙片に太陽の光を集めさせた。海風が邪魔してこないよう、流木で壁を作ったりした。
日は案外うまくできた。整えた木の枝に釣った魚を刺して表面が多少焦げてでも、焼いた。
釣った魚は骨が多く食べづらかったが、いっそ骨丸ごと食べてしまえばよいと思い切った。
問題は水だ。水の供給が少ない。ろ過させるにも、材料が足りない上に、出てくる水は少ない。
朝の露が生存ラインだ。草木や岩場に張りついてる水を、布に吸わせて集めた。
それでも一日生きるのに必要な量まで辿り着かない。
だから考えた。魚から水を摂ることに来た。
釣った魚を力強く絞り、滴る血液を飲むことにした。もはやなりふり構ってられない。俺はこうなってしまったのだから。
だがこの魚の搾り汁が、案外美味かった。本当に不思議だった。ろくな調味料もないなか、味を感じて体が喜んでるのかもしれない。
いや、この表現は違った。
身体が単に求めていただけかもしれない。血生臭くても、何かを摂取しているという実感が、美味に感じさせたのかもしれない。
これが身体にどのような影響を受けるかはわからない。
腹を下すかもしれないし、それだけじゃ済まないかもしれん。
だが、こうしてできる限り生きていきたい。
【三回目の記録】
前回から二日、三日。
あれから俺は体調を崩した。腹を壊した。下痢も治らない。ちくしょう、馬鹿なことをした。
なんで俺はあんなことをした?いや、そもそもなんで俺はこんな目にあってる?
そうだ。どうして俺がこんな目に遭わなきゃならんのだ。俺は穏やかに生きたいだけだったのに。
皆、話しかけてくる。
東京のうるささがうんざりだったのに、東京の方が人間はそっけなかった。そのほうが良かった。
むかつく
むかつくむかつくむかつくむかつくむかつく
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イラついてしょうがない。頭がおもたくていたい。
頭が痛い。
俺がこんな風になったのは、あいつらのせいだ。社会のせいだ。誰も俺に手を差し伸べなかったくせに!
ダレモ
頭が痛くてなんにも考えられなかった。下痢も嘔吐も止まらなかった。今はなんとか治ったが。
ただ、今は悲しい。
波の音しか聞こえない。このままひとりで苦しんで死ぬのだろうか。
あんなに人が煩わしかったのに。
今は人が恋しい。
でも、ここから出たくない気持ちは変わらない。人と会いたくないし、来た道はどこかわからなくなってしまった。
怖い。
こわい。
コワイ。
【四回目の記録】
今が何月何日かわからない。
奇跡的に俺は生きている。案外、日数はかかってないのかもしれない。
ただ、出すものを出したら幾分か楽になった。
身体は重たいが、大丈夫だ。なんで生きてるのか不思議なくらいだ。
そういえば、祭囃子が聞こえた。幻聴でなければだが、寝ているときに笛と太鼓の音が聞こえてきた。
誰かが、俺のことをこっそり看病してくれたのかな。
そんなわけないか。
だが、波や風以外の音を、もしかしたら初めて聞いたかもしれない。それに、何かの鳴き声も聞いた。
太いけど、高い鳴き声。鯨の鳴き声のような音。
今日はまだ、いや、これを書いてるときに、ちょうど聞こえてきた。
身体をゆっくり動かして、外に出た。だが不思議なのは、その姿を見たことがない。
今度、海辺でゆっくり待ってみよう。どうせ時間はあるのだから。
【五回目の記録】
コワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイココワイ
ミテハイケナイミテハイケナイ!
ミテ ハ
※おそらく怪物を見たあとの記述だと思われるが、筆跡が乱れているため、ここから先は割愛する(種浦)




