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強面虎獣人と甘い恋  作者: Latte


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8

アドルフの「俺に婚約者はいない」という言葉に、アリスの中で張り詰めていた糸がぷつりと切れた。胸を締めつけていた不安や悲しみが、少しずつ溶けていく。


それと同時に、勝手に思い込んで避けるような行動をとってしまったことや、一人で悲劇のヒロインぶってアドルフ様に怒鳴り散らしてしまったことが、申し訳なくて恥ずかしくてたまらなくなる。


優しく抱きしめられている姿勢にも、強烈な恥ずかしさを感じてしまう。


「す、すみません!!噂で聞いて、勝手に勘違いしてしまって。でも直接聞く勇気もなくて……」


慌てて身を離すと、服が胸元まで大きく裂けていることに気づき、あわてて服を手繰り寄せる。アドルフは顔を真っ赤にしながら、自分の上着をアリスにそっとかけた。大きな上着はダボダボで、まるでワンピースのようになる。


その姿を見て、アドルフはガバッと顔を背けた。「すまない、乱暴をするつもりはなかったんだ。でも……他の男と話している姿を見て、理性が効かなくなって。俺がお前を番と認めてしまったから。」


申し訳なさそうに尻尾と耳がしゅんと垂れる。その姿にアリスは思わず微笑む。


「番?」


アリスは首を傾げる。


「知らないのか?」

「はい、田舎育ちで私の村には獣人がいなかったもので……」

「獣人は唯一と認めた人を番とする。心から求める人が現れたら本能的に捕まえ、囲い、死ぬまでその愛を貫く。もはや呪いだな。俺はつがいなんか持つつもりはなかった。俺に番とされるなんてお前も不運としか……」


アリスはその言葉をさえぎり、真剣にアドルフの瞳を見つめる。「それは、私がこの先もアドルフ様のそばにいてもいいということでしょうか?」


アリスの問いに、アドルフは申し訳なさそうな顔をしながらも、しっかりと頷く。「お前がいなければ、俺は狂ってしまう。すまない、もう離せない。」


眉を寄せて苦しそうにするアドルフに、アリスは思わずガバッと抱きつく。「嬉しい……こんな幸せなこと、他にありません。アドルフ様の隣にいてもいいなんて、この想いを捨てなくていいなんて、夢のようです。願うことすら罪だと思っていたのに、貴方の隣にいて願わずにはいられなかったんです。ずっとそばにいたいと……」


涙が次から次へと溢れて止まらない。今度は悲しみではなく、嬉しさの涙だった。


「ほんとう、か?」


疑うようなアドルフの言葉に、アリスはムッとする。「ずっと伝え続けてました!アドルフ様が好きだと!!伝わってなかったんですか?」


眉を釣り上げるアリスに、アドルフは慌てて手を振る。「い、いやそうじゃないが、まだ信じられなくて……醜い俺の思いを受け止めてくれる人がいるなんて。政略的な婚約ですら拒否されていた俺が、愛する人に愛されるなんて……」


“愛する人”――その言葉がアリスの胸に甘く響く。


すりっとアドルフの胸に擦り寄ると、アドルフはゴロゴロと喉を鳴らした。「それはまずい。」


何がまずいのだろうと思っていると、アドルフは再びアリスを押し倒した。「えっ?」


「お前が煽ったんだ。それは求愛行動だぞ。」


アドルフの目がギラギラと光り、スカートの裾から手が入り、太ももに触れる。触れられた場所が熱く、ゾワゾワとした感覚が広がる。手が徐々に上がり、裂かれた服の隙間からも触れられる。


「ちょ、ちょっと待ってください!!あっ、こ、ここで初めてはちょっと!!」


アリスの言葉に、アドルフはピタッと動きを止めた。


彼の手はそっとアリスから離れ、深く息をつく。


「そう、だな。はじめては……ちゃんと巣に連れて帰ってしなくちゃな。」


そう呟くアドルフの瞳は、まだギラギラとした熱を帯びている。そのままアリスをひょいと抱き上げると、迷いなく歩き出した。


「ど、どこに行くんですか!?」


アリスが慌てて問いかけると、アドルフは短く答える。「俺の邸。」


おれの……邸……?


「基本的には寮で生活してるが、近くに小さな邸がある。最低限掃除をするだけの使用人しかいない。それももう帰宅しているだろう。ほとんど使うことはなかったが……こんな時に役立つとはな。これで誰にも邪魔されない。」


今までにないほど饒舌なアドルフに、アリスはますます動揺する。


(わ、私……食べられちゃうの……?)


アリスの心臓はドキドキと高鳴り、顔は真っ赤に染まる。けれど、アドルフの腕の中は不思議と安心できる温かさがあった。


アリスが足を踏み入れた邸は、落ち着いた雰囲気に包まれていた。


高い天井と大きな窓から月明かりが差し込み、白い大理石の床が静かに輝いている。

壁には控えめな装飾のランプが並び、柔らかな光が空間を包む。


アドルフはアリスを抱きかかえたまま、迷いなく邸の一番奥にある部屋へと進んだ。


月明かりに照らされたその部屋には、大きなベッドが一つだけが静かに佇んでいる。アドルフは優しく、けれどどこか急ぐような動作でアリスをベッドの上にそっと降ろした。


「あ、あの……お風呂……」


アリスが戸惑いながら声をかけると、アドルフは苦しげに息をつき、低い声で答える。


「悪い……もう、我慢できそうにない。」


その瞳には理性と本能がせめぎ合う色が浮かび、アリスの手をそっと握る。アリスの胸は高鳴り、不安と期待が入り混じったまま、アドルフを見つめ返した。




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